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レジェンドオブカーボニア  作者: 天水覚理
第二章
31/48

2-3

「どこまで行くの?」


 一方、男達に付いて行った少女は人気の無い裏路地で、前を歩く二人組にそう問いかける。


「ああ。そうだな。この辺で良いか」


 問いかけられた二人組はそんな事を呟くと、後ろの少女の方に振り返る。そして、振り返った男達の手にはナイフが握られていた。


「……何のつもり?」


 だが、少女はナイフを突きつけられているにもかかわらず、特に動揺することなく質問を続ける。


「密航の手段を教えてくれるんじゃなかったの?」


「おいおい、嬢ちゃん。どこまで鈍いんだ? そんなの嘘に決まってんだろ。大人しくその宝石を寄こしな」


「僕を騙していた訳か」


「よぉーやく気が付いたか? わかったら早くしろ。ついでに嬢ちゃんは中々の上物だからな、俺はガキに興味はねえが、この辺に住んでる変態共には高く売れそうだぜ」


 ナイフを構えヘラヘラと笑う二人組に、少女は「ハァ」と大きく溜め息を吐く。


「残念」


「あぁ? ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと出せや!」


 痺れを切らした一人が少女に掴みかかる。誰が見ても腕力では少女に勝ち目はない。この男もそう考える一人だ。だから迂闊に少女の間合いに飛び込んでしまった。


 シュッという風を切り裂くような音が聞こえた次の瞬間、少女に掴みかかった男は突然その場に崩れ落ちた。


「え?」


 目の前で見ていたはずのもう一人の男は何が起こったのか理解できず間の抜けた声を出す。一方、少女は落ち着いた雰囲気を崩さず、スッと拳を構えた。ボクシングの様に左拳をやや前に右拳を顎の前に置き、男を見据える。


「やろうってのか? このクソガキ! 死にやがれ!」


 ナイフを持つ自分に対して、素手で挑んでくるという無謀な行為に、ナメられていると感じた男は逆上し、少女を殺すつもりでナイフを付き出すが、少女は軽やかな足さばきでナイフを躱す。そして、その勢いのまま男の側面に移動すると同時に右拳を男の鳩尾に叩き込んだ。


「ぐはぁ!」


 華奢な身体から放たれたとは思えない、少女の重く鋭いボディブローに、男の身体はくの字に折れ曲がり、胃の中のものを吐き出した。


「うわっ汚い」


 両膝を着いて苦しむ男を、少女は汚物を見るかのような眼で見下す。


「お、俺達が悪かった。すまねえ、この通りだ。だ、だから頼む許してくれ」


 息も絶え絶えに男は許しを請う。しかし、少女は、


「人を騙し、殺そうとしておいてタダで済むと思っています?」


 そう言うと笑顔で再び拳を構える。膝を着いている男の頭はちょうど少女が構える拳の前にある。


「ひ、ひぃ!」


 男が情けない悲鳴を上げると同時に少女は拳を繰り出した。


 パァンという弾ける音が裏路地に響き渡る。


「何のつもりですか?」


 だが、少女の拳は男の顔に届いてはいなかった。その寸前でサヴェロの右手に止められていたからだ。


「誰? アナタ。この人達のお仲間?」


「こんなゴロツキと一緒にしないでくれ」


 少女はサヴェロの手を振り払う。


「もう勝負は着いた。こいつ等はどうしようにもないクズ野郎だが、君の手を汚してまで殺す価値は無い」


 サヴェロは少女を宥める。拳を構えたままの少女であったが、サヴェロの真っ直ぐな眼を見てその拳を解いた。それを見て一安心したサヴェロは自分の後ろで怯えている男に視線を移す。


「おいお前。そこでノびてる仲間を連れてとっとと失せろ。さもないと俺がお前を殺すぞ」


 そうサヴェロに凄まれた男は「はい!」と返事をすると、急いで倒れている仲間を担ぎ上げ走って去って行った。それを見送ったサヴェロは再び少女に視線を移す。


「君も密航の手段を探してるんだってな」


「君も?」


「ああ、俺達も密航を企んでいる。どうだ? 同じことを考えている者同士、ちょっと話さないか?」


 そう提案し右手を差し出すサヴェロ。これに対し、少女はジッとサヴェロを見ているだけで近付こうとはしない。


「まあ、今さっき騙されたんだ。警戒するのも無理はないよな」


 そう言ってサヴェロは右手を引っ込める。すると、後ろに隠れていたメリダが顔を出した。


「私達全然怪しくないよ。ああそうだ、私メリダ。こっちはサヴェロっていうの。よろしく」


 ニコッと屈託のない笑顔を見せるメリダ、そんなメリダの表情を見て、少女は少し警戒を緩めた。


「怪しくないって、普通自分から言わないだろ。逆にめちゃくちゃ怪しいぞ」


「えぇ、じゃあ何て言えばいいの? サヴェロだっていきなり握手しにいって断られてるじゃん。下心ミエミエだって」


「はぁ? んなモンあるか! 俺は俺なりにフレンドリーな雰囲気を出しにいったんだよ」


「どうかなぁ~」


 メリダは目を細めてサヴェロを訝しむ。そんなメリダとサヴェロは言い合いになり、少女そっちのけで他愛のないケンカが始まった。まるでコントの様なケンカに、最初は呆気に取られていた少女であったが、


「プッ、ふふふ……」


 と堪え切れず笑いだした。急に笑い出した少女に、サヴェロとメリダはケンカを止め、視線を移した。


「ふふ、面白い人達ですね。密航しようとしてるくせに自分たちを怪しい者じゃないって」


 そう言われたメリダは「ああ、確かに」と思わず納得してしまった。


「でも悪い人達じゃなさそう。いいですよ。少しお話しましょう」


 そう言って、少女はサヴェロとメリダの間を抜けて歩き出した。


 いきなり話し出したのもあるが、それ以上に先程までの少女とは違う印象を受けたサヴェロとメリダは二人そろって呆けていた。そんな二人に少女は振り向くと、


「あっ、そうそう、自己紹介がまだでした。僕はビアンカ。よろしく」


 と言って、また歩き出す。


 ハッと我に返った二人は慌ててビアンカの後を追った。

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