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レジェンドオブカーボニア  作者: 天水覚理
第一章
25/48

1-20

『ところでメリダ様。先程、怪物に噛まれたように見えたのですが、その右腕は大事ないのですか?』


そう質問され、メリダは「ああ、これね」と言って、噛まれた右腕をブンブンと軽く振る。


「大丈夫だよ。これはこの頭の上に浮いてる球体のもう一つの効果でね。この球体が私の頭上を浮いている間はコレから細かな粒子が放出されて、その粒子が私の身体を守ってくれるの」


『そうだったのですか。しかし、よくそんな兵器を見つけ出し、その上先の戦闘で見事なまでに使いこなしていましたね』


「うーん、何て言うか……正直どんな武器が良いかなんて全然わからなかったから、いっぱい持っていけないかななんて思ってたら、色々な武器を収納して持ち運べるこれがあったんだよね」


『よく武器の性能等を把握されていらしてましたね』


「それなんだけど、この先にある武器庫はね、保管してある武器の性能なんかをすぐに閲覧出来るようになってるの。お陰で、この球体の性能や使い方なんかを知る事ができた」


メリダはそう言うが、『虚球』を選んだもう一つの理由が「サヴェロの使う『六露宝珠』と似ているから」だった。しかし、その事はアイオスには言わずに黙っているのであった。


 メリダとアイオスが喋りながら移動していると例の武器庫に到着した。もう武器に用はないメリダは武器庫を素通りすると、サヴェロを置いてきた脱出挺に急いで向かった。


「早くここから出よう。またアイツ等が来るかもわからないし」


『そうですね。急ぎましょう』


 メリダはサヴェロを先に乗せている脱出挺に乗り込むと、脱出の準備を始めた。


「ねえ、アイオス。これどうやって動かすの?」


『はい。まず操作パネルをタッチして頂き、表示された中央の赤い丸をもう一度タッチして頂ければ作動します。非常用脱出挺なので難しい操作は必要ありません……どうしたのですか? メリダ様』


 アイオスが説明をしている最中、メリダは何故かニヤニヤと笑っていた。その事を怪訝に思ったアイオスがメリダに問いかける。


「いやなに、やっぱり私達にはアイオスが必要なんだなって思っただけだよ」


『……ありがとうございます』


 その謝辞は皮肉であったのか、本心であったのか、自分にとってどちらでもよかったメリダはニコッと笑うと、アイオスに言われた通りに、脱出挺の操作パネルをタッチし、脱出挺を起動させた。すると、脱出挺の固定具が外れ、脱出挺が地下水脈へと落下し、着水する。


「うわっ!」


『メリダ様。マスターをしっかり押さえておいてください』


「了解!」


 地下水脈に落ちた脱出艇はその流れに乗り先へと進んで行く。脱出挺は自動制御になっているので、メリダ達が何もしなくても、うまく流れに乗り、壁にもぶつからず航行していた。


「あっ! ねえ、見てアイオス! 光が見えてきたよ!」


 薄暗い洞窟内を流れる地下水脈を進んで行くと、その先には一筋の光が射し込んできた。だが、それを見たアイオスは、


『メリダ様。マスターをしっかり押さえつつ、ご自身もどこかに掴まっていてください』


 と警告する。


「え? 何で?」


 と、質問するメリダに対してアイオスは、


『この先は滝です』


 といつも通り、冷静な口調で回答した。


 その答えを聴いて、サーっと血の気が引いていくメリダ。顔を真っ青にしながらも、メリダは気を失っているサヴェロに覆い被さり、手すりを全力で握り締める。


「アイオスもコッチ!」


 そして、アイオスを空いた片方の手で掴むと、自分とサヴェロの間に挟んだ。次の瞬間、薄暗かった洞窟から脱出艇が空中へと飛び出した。


「うわわあぁぁぁーーーー!」


 絶叫しながらサヴェロ、アイオス、脱出艇と共に空を飛ぶ……否、落下するメリダ。地下水脈が流れ出る滝の高さは優に三十メートルを超えている。一瞬の無重力状態を体感するメリダ。しかし、それを楽しむ余裕もなく、脱出艇は水面に叩きつけられようとしていた。その衝撃に備え、メリダはギュッと体を丸める。そして、脱出艇が着水するその瞬間、アイオスが残っていたウィスを振り絞り、発生させた衝撃波で着水の衝撃を相殺した。


「ぐえっ」


が、完全に衝撃を殺しきれなかったのか、メリダはガクンと大きく頭を揺さぶられ、ひっくり返った。


「いてて……あーひどい目に遭った」


 上手く着水し、滝の下の緩い川の流れに乗った事を、メリダは顔を出して確認すると、「はぁ~」と大きなため息をついた。


「アイオス、もう大丈夫だよね?」


『はい。もう危機は過ぎ去りました。お疲れ様ですメリダ様』


 アイオスの言葉を聴いて、ズルズルと崩れるように座り込むメリダ。


「うわっ、今更手が震えてきたよ。ははは、ずいぶん気張ってたんだなぁ」


 緊張から解放されたのか、手だけでなくメリダの全身が小刻みに震え出した。と、そんな時だった。


「うぅ、ああ、あれ? 俺は……」


「サヴェロッ!」


 気を失っていたサヴェロが目を覚ました。サヴェロは軽く瞬きをして、首を動かし辺りの状況を確かめる。


「確か俺、帝国兵と戦ってて……ああ、そうか、俺負けたのか」


 意識が途切れる寸前の事を思い出し、サヴェロは再び目を閉じる。


「それで、俺の代わりにアイオスが戦ってくれたんだろ? 気を失っていたはずなのに、俺が戦ってる記憶がぼんやりとある。そん時にアイオスの意識が俺の中に流れ込んでくるのを感じた」


『はい。大変勝手ながら、マスターの身体をお借りしていました。申し訳ありません』


「俺の事……いや、メリダの事助けてくれたんだからアイオスが謝る事じゃないよ。それに、謝るのは俺の方だ」


 そう言うと、サヴェロは「よっこいしょっと」と掛け声と共に体を起こした。


「まだ無理しちゃだめだよ。もう少し横になってた方が……」


「悪いメリダ。守ってあげられなくて」


 体を起こしたサヴェロはメリダに頭を下げる。


「サヴェロ、ねぇ……」


「あんだけ大口叩いておいて結果この様だ。俺がもっと強ければ」


「サヴェロ聴いて」


「もう、こんな事にはならないから、今度こそメリダを守るから、だから……」


「聴いてサヴェロッ!」


 突然、大声を張り上げたメリダに驚いたサヴェロはギョッとした表情でメリダの顔を見る。そこには真剣な眼差しで、サヴェロの眼を見るメリダがいた。


「お願い聴いて。さっきアイオスにも言ったんだけど、これからは私も一緒にサヴェロ達と戦うから」


「戦うって、そんな事……」


「もう守られるだけじゃ嫌なの。私にだって守りたい大切なものがある。あなた達二人は私の大切な仲間だから」


 メリダは真っ直ぐな眼で、サヴェロにそう言った。己の想いを包み隠さず言い放った。


「でも、やっぱり、メリダを敵の前には立たせたくない。危険な目には遭わせたくない」


 それでも、退かないサヴェロにメリダは「わかった」と言うと続けて、


「それじゃあサヴェロは今後も私の前に立って私を守って。私は後ろからサヴェロの背中を守るから」


 ニカッと笑いそう答えた。


「メリダ……ああ、わかった。俺はこれからもメリダを全力で守るよ。だけど、俺がピンチの時は、その時は俺の事助けてくれ」


「イエッサー! 了解ですリーダー殿!」


 メリダが敬礼をしながら返答をすると、サヴェロは「何だよそれ」と遺跡を出てから初めて笑った。メリダもつられて「ふふふ」と笑い、嬉々とした雰囲気の脱出艇は川の流れに乗ってゆったりと下流へ流れていくのであった。


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