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「……」
アイオスを置き去りにし、サヴェロを背負って脱出口に向かうメリダの表情は呆然としていた。
さっきまで止めどなく流れていた涙は止まり、噛んだ下唇から滴り落ちていた血も固まり始めている。放心状態のメリダは足だけが勝手に動いていた。
通路を少し進むと広い部屋へと辿り着いた。この部屋には、メリダ達が落ちてきた試射場で試し撃ちする為の兵器がずらりと並んでいる。
だが、メリダはそれらに目もくれずただひたすらに出口を求め歩み続ける。そして、部屋の奥にあった非常ドアを開けると、そこには勢い良く流れる地下水脈と非常脱出用ボートが備え付けられていた。
事故が起きた際、地下からでも速やかに避難出来るように地下水脈を利用して作られた天然の脱出口。メリダは備え付けられていたボートに近寄ると、背負っていたサヴェロをボートの座席に座らせた。
「……っ」
今まで背負っていたせいで、ちゃんとサヴェロの顔を見ていなかったが、よく見てみると顔だけでなく体中がボロボロになっていた。そんなサヴェロの姿を見た途端、メリダの目からは再び涙が溢れ出した。
「どうして……こんなにボロボロになってまで私を守るの? どうして……命を……張ってまで、私を守ろうとするの?」
サヴェロの顔を覗き込むような姿勢で、メリダはそう問いかける。しかし、それは他の誰でもない、自分自身への問いかけであった。
メリダの目から溢れ出る涙がサヴェロの顔にポタポタと零れる。
「私が……守られるのは、私が王女だから? ……違う、私が守られてるのは、私が弱いからだ。私に力が無いからだ」
自らの不甲斐なさを嘆き、嗚咽を漏らす。メリダの脳裏にはかつてカーボニアが崩壊する直前、無理矢理脱銀色の卵の様な形をした宇宙船に乗せられた時の記憶がフラッシュバックする。
あの時も、今と同じように泣いていた。自分を守るために誰かが犠牲になっていく。二千年経った今でも変わらない。
「私は……無力だ」
両の拳を握り締め、己の無力さを呪うメリダ。そんな時、ある言葉が頭を過った。
「メリダ。お前にはとてつもない力がある」
ハッとし、伏せていた顔を上げるメリダ。
その言葉はメリダが幼い頃実の父、今は亡きカーボニア王に言われた言葉だった。
「お前の持つ力は強大なものだ。それこそ世界を変えてしまえる程のな。使い方によっては多くの命を奪えるし、多くの命を救う事も出来る。だから、メリダ。その力はお前が正しいと思ったことに使いなさい」
その時、メリダは父に「そんなの正しいかどうかなんてわからない」と言った。それに対し、父はハハハと笑い、
「大丈夫だ。お前は心の優しい子だ。お前が正しいと思った事は間違ってなんかいない。私はお前を信じているぞ」
そう言ってくれた。
「お父さん」
メリダはポケットに手を入れるとあるものを取り出した。それは先程コンピュータルームで見つけた銀色のブレスレット。アイオスはそれをウィスディスペンサーと言っていた。
メリダはそれを握り締めると立ち上がり、今来た道を駆け戻った。扉を開け放つと、そこにはズラリと無数の武器が揃えられている。小型の拳銃から小銃、大きなものはバズーカ砲の様な武器、更には用途のわからない形をしたものもあった。
メリダはこれらの武器を一通り見渡した。さっきサヴェロを運んで来た時は無視していたこれらの兵器群を、今度は眼を見開いて品定めをしていた。
「私に、力があるって言うのなら――」
メリダはウィスディスペンサーを握る手に力を入れる。
「今ここで使わないでいつ使うって言うんだ」
メリダは覚悟を決めると、自らの腕にウィスディスペンサーを装着した。
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