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レジェンドオブカーボニア  作者: 天水覚理
第一章
19/48

1-14

その部屋に入った瞬間、サヴェロは息をのみ、メリダは「おお~」と声を上げた。


 部屋の大きさは先ほどまで戦っていた場所よりずっと小さいが、部屋の中には巨大な一枚のスクリーンパネルがあり、その回りにはパーソナルコンピュータが複数台置かれていた。


『ここが最奥と思われます。恐らく、この施設の指令室でしょう』


 アイオスの説明を受け、二人はキョロキョロと部屋の中を見回しながら中へと入っていった。


おもむろに、サヴェロは近くにあった一台のコンピュータに触れてみる。すると、電源のスイッチに触ったのか、コンピュータが起動した。そして、紙のように薄いスクリーンには見慣れぬ文字がずらりと列び、中空には同じく見慣れぬ文字が羅列しているキーボードが映し出された。


「うおっ! 動き出した! これコンピュータだよな? 最近、こんなのを見かけるようになったけど、こんなに薄くて小さい奴は見た事ないぞ」


 動き出したコンピュータを見てサヴェロはコンピュータと少し距離を置いた。おっかなびっくりしているサヴェロにアイオスが話しかける。


『コンピュータを起動しましたか。ちょうどいいです。マスター、このコンピュータからデータベースにアクセスし、月への移動手段を探してみてください』


「え? 俺が? でーたべーすとかあくせすとか言われても、俺コンピュータなんて触った事ないよ」


『大丈夫です。私が指示を出しますので、マスターはそれに従ってコンピュータを動かしてください』


「あ、ああ、わかった。何とかやってみよう」


 サヴェロは距離を取っていたコンピュータに再び近付くと、慣れない手つきでアイオスの指示通り中空に映し出されたキーボードを打っていく。それに応じて、コンピュータの画面には次々と新たなスクリーンが表示される。


 そして、とあるスクリーンが表示された瞬間、『お待ちください』とアイオスが制止した。


「どうした? 見つかったのか?」


『はい。残念ながらここには月へ行く為の手段は無いようですが、こことは別の場所にその手段があるようです』


「ホントに? それってドコなの?」


 メリダがアイオスに質問すると、アイオスは『少々お待ちください』と断りを入れ、画面に表示された文字を読んでいく。そして、


『わかりました。地図がありますので、今から目の前の大型スクリーンに映し出します。マスター操作をお願いします』


「はいよ」


 サヴェロがキーボードを打ち、コンピュータを操作すると、サヴェロ達の目の前にある大型スクリーンに世界地図が映し出された。そして、更にサヴェロがキーボードを打つと、ある地域が拡大された。


 スクリーンに映し出された地図の一か所が赤く点滅している。地図を見るからに、そこは海であり、近くには一つの島国があった。


「ねぇ、スクリーンの赤く点滅してる所がその場所なの?」


 スクリーンを見ていたメリダが視線をサヴェロに移し、質問する。が、サヴェロはスクリーンをジッと見たまま動かない。


「あの島国は……」


「サヴェロ? どうしたの?」


 メリダは反応がなかったサヴェロの肩を揺らして呼びかける。すると、「あっ、ああごめん」とメリダに向き直った。


「えーっと、恐らくあそこが俺達の探している月への移動手段ある場所……と言う事で良いんだよな? アイオス」


 結局よくわかっていなかったサヴェロはアイオスに訊いた。


『その通りです。地図上では海の上になっているようですが、以前はそこに人工島か何かがあったのでしょう。しかし、今現在ではその人工島は沈んでしまい、海の中にあるようです』


「海の中⁉ どーするの? 潜って探しに行くって事?」


 メリダの言葉にサヴェロとアイオスは黙ってしまう。


「確かに、メリダの言う通り、海に潜って探索というのは無理があるな。けど、場所はわかった。とりあえず、近くまで行ってみるってのはどうだ? 何か発見があるかも……ん?」


 サヴェロがそう言うと、メリダは突然クスクスと笑い出した。


「どうした? 俺、何かおかしなこと言ったか?」


「ご、ごめん。いや、サヴェロってさ、すっごく前向きだな~と思って。この遺跡に来る前もとりあえずやってみようみたいな事言ってたし」


「ああ、そういう事か。うーん何ていうか、こういう考え方は母さんに似たのかな。やる前から無理だと決めつけないで、とりあえずやってみるって精神は。別に失敗したからと言って命を取られたり、大損こいたりするんじゃなければ、何でもやってみた方が良いって。意外と何とかなるもんだよ」


 サヴェロの持論を聴いたアイオスは『素晴らしい考え方だと思います』と賛同した。


「うん。そうだね、やる前から何でも無理って決めつけちゃったら何にもできないもんね。よーし、それじゃあ次はこの海の近くに行ってみよう……って言ってみたものの、ここってドコなの?」


 右手を突き上げて、意気揚々と宣言するメリダであったが、目的地の場所を把握しておらず、目的地の詳細をサヴェロに質問した。


「この赤い点がある場所はミルーアの近海だな」


「ミルーア? ってこの近くにある島国の事?」


 メリダはスクリーンの地図にある島国を指さしながらサヴェロに訊いた。


「そうだよ。今俺達がいるリーピンから北東にある島国だ」


「へぇ、そうなんだ。でも、ずいぶん詳しいね」


「ああ、よく知ってる国だ。だって、俺の父さんが生まれた国だからな」


「え? そうなの?」


 そう訊かれると、サヴェロはスクリーンに視線を移した。スクリーンに映し出された島国に。


「父さんは元々ミルーアの生まれなんだ。でも、若い時にナウィートに移り住んできたんだって。その事を知ってから、俺ミルーアに興味を持って、いろいろ調べるようになったんだ」


「行ったことはあるの?」


「いいやないよ。いつかは言ってみたいと思ってた所だ」


 それを聴いてメリダはニコッと微笑んだ。


「それじゃあ、やっと行けるね。決定! 次の目的地はミルーア!」


「おいおい、メリダがリーダーになってんぞ」


メリダは首を傾げて「あら? 意見があるのかしら?」と意地悪そうにサヴェロに問う。


「ある訳ないだろ。もちろん賛成だ。行こう、ミルーアへ」


 次の目的地が決まったサヴェロ一行は、他に詳しい情報がないか、コンピュータを使って調べるが特にめぼしいものは見つからなかった。


 調べ物をするついでに、アイオスは何やらサヴェロに指示を出してコンピュータを操作していた。サヴェロは言われるがままコンピュータを操作するが、何をしているのかまではよくわかってはいなかった。

 そんな二人をよそに、特にすることがないメリダは部屋の中をうろうろと動き回っていた。すると、


「ん? なんだこれ?」


 メリダは部屋の奥で割れたガラスケースに入れられた銀色のブレスレットのような物を見つけた。十センチメートルくらいの筒状のブレスレットをメリダは割れたガラスの隙間から手を入れ、取り出す。


「おおっ、手に取ってみると結構重いなぁ。装飾品としては微妙かも」


 メリダは見つけたそれをもって調べ物を続けるサヴェロとアイオスの所へ戻った。


「ねぇ、サヴェロ。奥でこんなの見つけた」


 メリダは持っていたブレスレットをサヴェロに見せる。


「ブレスレットか? に、しちゃあデカいし重そうだな……って、本当に重いな」


 サヴェロはメリダからブレスレットを手渡され、まじまじと見ていると、アイオスがサヴェロに話しかけた。


『それはウィスディスペンサーですね』


「ウィスディスペンサー? って、何?」


『はい。ウィスディスペンサーとはカーボニア軍がエターナルウィスシステムを基に造った兵装です。ウィスは戦闘に用いれば強力な武器になりますが、ウィスの操作を習得するまでには多大な時間を要します。そこで、そのウィスの制御を機械で行おうと考案されたのが、そのウィスディスペンサーです。個人差はありますが、ウィスは誰もが持っています。そのウィスのエネルギーをウィスディスペンサーで取り出し、兵器のエネルギーとして使用します』


「なるほど。機械がやってくれればウィスを使える兵士の育成が短期間で済むわけか」


『その通りです。しかし、そのウィスディスペンサーはかなりのコストがかかってしまう為、大量生産が難しく、これの導入は廃案になってしまいました。恐らくメリダ様が見つけてきたこのウィスディスペンサーは試作品として造られ、使うことなく保管されていたのでしょう』


「へぇ~そうなんだ」


 メリダはサヴェロからウィスディスペンサーを返してもらうと、おもむろに自分の右腕に装着してみた。


「おっ! ピッタシじゃん。ねぇ、これがあれば私もウィスを使えるんだよね? そしたら、さっきの怪物とかもやっつけられる?」


『残念ですが、それだけでは戦う事は出来ません。それは体内のウィスを引き出すだけであって、その他に引き出したウィスエネルギーを利用する武器が必要となります』


「ええ~そうなんだ」


 それを聴いて、シュンと項垂れるメリダ。しかし、メリダはウィスディスペンサーを戻さずに、自分のポケットへとしまいこんだ。


 その後、ここで調べた情報は、この部屋の中で見つけた携帯する事が出来る小型の端末にデータを移し持ち帰る事となった。


 あらかた調べ終えたサヴェロ達は月へ行く方法があるとされる場所の位置情報の入った小型端末をポケットにしまうと、遺跡から出る為、来た道を戻る事にした。

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