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レジェンドオブカーボニア  作者: 天水覚理
第一章
16/48

1-11

サヴェロ達が森に囲まれた道を歩く事数十分。その行く手に見えてきたのは、幾重にも張り巡らされた「立ち入り禁止」と書かれたテープであった。その他にも、「危険」や「注意」と書かれた看板がいくつも立てられている。


「もうすぐみたいだな。何が出てきてもいいように準備をしておくか」


サヴェロは腰に帯びていたアイオスを抜くと、右手に持ち、いつでも戦闘を行えるようにした。


『マスター。索敵はお任せください。私のレーダーを使えば不意打ちをされる事はありません』


「助かるよアイオス。メリダは俺から離れないで」


「うん。わかった」


 サヴェロ達は張り巡らされたテープを潜ると、警戒を強め、慎重に歩を進めた。


立ち入り禁止のテープを潜って、数分程歩いた時だった。その先にあったのは、地面を掘り返して出来た大きな穴だった。そして、その奥には人工物の様な物が出土しているのがわかる。


「到着だ。ここが発掘現場の様だな。しっかしまあ、発掘用の機材やらがその辺に散乱してるな。相当慌ててたようだ」


 サヴェロはぐるりと、発掘現場を見渡す。サヴェロの言う通り、発掘に使用する重機や道具、資材が投げ捨てられたように散らばっていて、当時の混乱ぶりが見てとれた。


「ねえ、サヴェロ。あの奥にあるやつが遺跡かな? 何か建物っぽいのが土から出てるけど」


「ああ、そうだな。あれが遺跡だな。……っていうかメリダはこの時代に生きてたんだから大体わかるだろ?」


「あーごめん。私まだ、当時の記憶がごちゃごちゃでよく思い出せないんだよね。カーボニアの街並みがどうだったとかぼやーっとしちゃっててさ」


「それじゃあ仕方がないか。まあ無理する事もないし、ゆっくり思い出していこう」


 メリダは「うん」と返事をすると、再び遺跡の方へ視線を移した。


「でも、遺跡っていうかなんていうか……一部しか見えないけど、さっき見たリーピンの街にあった建物と似たような形? 材質っていうのかな? 同じに見えるね」


『そうですね。カーボニアの科学技術はこの時代よりも進んでいました。それは建築技術も同様です。ですので、今の時代の建築技術がこの時代の技術に追い付き、造りが似通ってきたという方が正しいかもしれません』


 アイオスの解説を聴き「なるほど」と納得するメリダ。一方サヴェロはまだキョロキョロと何かを探すように見渡していた。


「とりあえず、今のところ怪物らしき影は見当たらないな。アイオスのレーダーには何か反応はあった?」


『いえ、私のレーダーにも反応はありません。ここはまだ安全と言っていいでしょう』


「わかった。となると、問題は遺跡の中か……よーし、準備はいいか? メリダ。アイオス」


「もっちろん。いつでもいいよ」


『私も準備万端です』


 二人の返事を聴いたサヴェロは頷き、出土している遺跡の一部を見据えた。


「それじゃあ行くぞ。二人とも」


 サヴェロが先陣を切って、掘削された大穴を降りて行き、その後をメリダがたどたどしい足取りで付いて行った。目視とアイオスのレーダーに反応がなかったとはいえ、警戒は解かずいつでも対応できるようにアイオスの柄を強く握るサヴェロ。そして、慎重に大穴を降った先には遺跡の中へと通じる入り口が開いていた。


「ここが入り口か」


 入り口をのぞき込むサヴェロ。遺跡の中からはひんやりとした冷たい空気が流れてくる。サヴェロとメリダは眼を合わせると、意を決し遺跡の中へと進んで行った。


「うお~結構広いね~」


 緊張感の無いメリダの声が遺跡の中に響き渡る。


 メリダの言う通り、遺跡の内部は広い通路が続いていた。床や壁は岩ではなく、金属のような硬い材質で出来ており、とても大昔に造られたとは思えない建造物であった。


 陽の光が届かないはずの遺跡内部だが、足元には非常灯の様な灯りが等間隔で設置されており、移動する分には特に問題はなかった。


「これは電気が通ってるの?」


 二千年以上昔の遺跡にも拘わらずこのような仕組みがある事に驚きを隠せないサヴェロはアイオスに質問した。


『はい。カーボニア文明にはウィス発電と呼ばれる技術があります。これは地上から発せられるウィスを電気エネルギーに変換するもので、この星が死なない限り半永久的に電源を確保する事が出来ます。これもエターナルウィスシステムの応用です』


「なるほどね。ホントに何でもできるんだな」


 半ば呆れるような感じでサヴェロは感嘆の声をもらした。


 長い通路をひたすらに歩く二人。歩く事数分、二人は開けた場所に出た。そこはドーム状の広い空間になっており、今まで通って来た通路同様、何も無い場所であった。そして、二人が進んできた道もここで終わっている。


「……行き止まりか」


 サヴェロはドーム内を軽く見渡し呟く。後から入って来たメリダは口を開けて天井を仰いでいた。


「なーんも無いね。ここが最深部とは思えないけど、途中に分岐点は無かったし」


『お二人とも、前の壁をご覧ください』


 サヴェロとメリダが辺りお見回していると、アイオスが二人に話しかけた。


「前の壁? あっ、この辺だけ何か違う」


 メリダはアイオスが言った壁に近付くと、その部分だけ周りの壁と違う事に気が付いた。


『メリダ様。その壁の中央を触れてみてください』


「壁の中央? わかった」


 メリダはアイオスに言われた通り、その壁を掌で触れた。その途端、壁の真ん中を縦に光が走ると、その筋から壁が開いていった。


「わわわ、壁が開いた」


『これはカーボニア人のウィスに反応して作動する自動ドアです。もっと正確に言えば、カーボニアの王族のウィス。つまりメリダ様に反応したわけです。』


 アイオスが壁の仕掛けの説明をすると、メリダは「へぇ」と感心する。一方、サヴェロはその仕掛けに驚き、少しの間放心していた。


「す、すげぇ。これがカーボニアの技術力。なるほど、これじゃあ俺達現代人が調べても古代文明の情報が得られない訳だ」


『そうです。こうして各地に点在しているカーボニア文明の施設は厳重なセキュリティがかけられています。メリダ様無しには探索は出来ないでしょう』


 開いた壁の先には地下へと続く階段が見えた。サヴェロは早速出現した階段を下って行く。メリダも「待ってよ」と後に続いた。


 相変わらず無機質な階段を下へ下へと降りて行く二人と一振り。さすがのメリダも気を引き締め口をつむぎ、彼らの間に会話は無く、コツンコツンと二人分の足音だけが反響していた。


 階段を下り終えると、また長い一本道が現れた。先程から代わり映えしない風景に「いつまで続くんだ」とメリダは少しうんざりしていた。


『このまま進むと、大きく開けた場所に出ます。恐らく倉庫のような所だと思われますが、そこに複数の生命反応を感知しました。野生動物や人間ではありません。恐らく現地住民の方々が言っていた化け物の可能性があります』


 「化け物」――アイオスがそう告げた途端、二人の間に緊張が走った。うんざりとしていたメリダの表情も引き締まる。


『遭遇は必至です。マスター如何されますか?』


「こう一本道じゃあ回り道も出来ないし、行くしかないだろ。という訳で、アイオスはメリダが持ってて」


「え? 何で?」


 突然アイオスを手渡され困惑するメリダ。


「多分これから戦闘になると思う。そうなれば俺一人でメリダを守りながら複数を相手するのは難しい。だから、俺が守り切れない所はアイオスにフォローしてもらうんだ」


『ご安心ください。私を所持していればメリダ様の周囲に衝撃波のバリアを張る事が出来ます。このバリアは対物兵器でもなければ貫通することはできません』


「で、でも、サヴェロは? アイオス無しで大丈夫なの?」


 メリダは心配そうな顔でサヴェロに訊くが、サヴェロはニッと笑って答える。


「俺は大丈夫だよ。アイオスがいなくても戦う術はある」


 サヴェロは視線を正面に移すと、表情を引き締めた。


「だから心配しないでくれ。メリダには傷一つ付けさせないから」


『お二人とももうすぐ通路を抜け、化け物が居ると思われる場所に出ます。ご準備を』


 アイオスは再度注意を促す。二人は気を引き締めると危険が潜む未知のエリアに足を踏み入れた。

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