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レジェンドオブカーボニア  作者: 天水覚理
第一章
15/48

1-10

「おーい! 二人とも起きろ。そろそろ着くぞ」


 東の空が明るみ始めた頃、ジロは毛布にくるまり甲板で寝るサヴェロとメリダを起こした。しかし、よく見てみると、毛布にくるまっているのはメリダだけで、毛布をはぎ取られてしまったサヴェロはブルブルと体を震わせ、目を覚ました。


「あーおはようジロさん。……おい、メリダ。そろそろ着くから起きろ」


 サヴェロは「んー」と伸びをすると、毛布にくるまって幸せそうに眠るメリダを揺すって起こす。気持ちよく寝ていたところを起こされ不機嫌な表情のメリダだったが、東の空を見てその表情は一変する。


「わぁ、綺麗な朝日。私、こうやって朝日を見るの初めてかも」


「だろうな。メリダってめちゃくちゃ寝起き悪そうだもん」


 サヴェロが突っ込みを入れると、メリダは毛布を丸めてサヴェロの顔面に投げつけた。


「ハッハッハ! 元気がいいな二人とも。だが、さっきも言った通りそろそろリーピンに着くから船を降りる準備をしてくれ」


 ジロに言われた通り、サヴェロとメリダは毛布を片付けると、下船する為に各自荷物をチェックする。そうしている間に、西の方角に陸地が見え始めた。


「あれがリーピンか。隣の国だからある程度は知ってるけど、こうして訪れるのは初めてだな」


 サヴェロ達を乗せた船は港に入り、ジロの操舵で接岸した。先にサヴェロが上陸し、続いてメリダがサヴェロに手を引かれる形で上陸した。


「悪いが、俺が面倒見られるのはここまでだ」


 ジロは船の上からサヴェロ達に言う。


「十分だよ。ありがとうジロさん」


「本当にありがとうございます」


『私からもお礼を言わせてください。ありがとうございます』


 サヴェロ達から感謝の言葉を聴いたジロは照れくさそうに頭をかく。


「いいってことよ。それよりも、お前達気を付けろよ。ここは帝国の影響力が弱いと言っても、追手が来ない訳じゃねぇ。十分に注意しとけ」


 ジロの忠告を聴き、サヴェロは「わかった」と返事をする。


「よし。それじゃあ俺は引き上げるとするぞ。じゃあなお前達! 元気でな!」


 ジロは船のエンジンをかけて離岸する。少しずつ離れていくジロの船にサヴェロ達は大手を振って見送った。


サヴェロ一行は、ジロと別れた後、港から街中へと移動した。早朝にも関わらず、多くの人達が街を行き来し、道路は人でごった返していた。


「いやぁ、すげえ人だな」


 サヴェロは人々が行き交う街中をキョロキョロと見渡す。そうしていると、メリダがサヴェロの服を引っ張った。


「ねえ、サヴェロ。これからどうするの?」


「そうだな。とりあえず、腹ごしらえをしながら情報収集といこうか」


 サヴェロ達は通りに並んで出店している屋台に向かった。リーピンでは朝食を屋台で済ませるという習慣があるため、多くの屋台があり、仕事に行く前の人達がそこで朝食を取っていた。


 サヴェロ達はその中の比較的空いている屋台で朝食を食べる事にした。サヴェロは蒸しパンと鶏肉や数種類の野菜やキノコの入ったスープを注文する。質素だが、路銀を節約する為、贅沢は出来なかった。


「悪いな。豪華な食事とはいかなくって」


「ううん。私、気にしないから大丈夫だよ。食べられるだけでもありがたいし」


「そう言ってもらうと助かるよ。じゃあ、冷める前にいただきます」


 メリダもサヴェロに続いて「いただきます」と言うと、パクパクと食べ始めた。勢い良く食べるメリダを尻目に、サヴェロは二口程食べたところで、屋台の主人に話しかけた。


「ねえ、おっちゃん。俺達、世界中の遺跡を巡りながら旅をしてるんだけどさ、この辺りに大きな遺跡とかない?」


「遺跡? ああ、そういえば最近大きな遺跡群が見つかったってニュースになってたな」


「本当⁉ その話、もう少し詳しく教えてくれない?」


「こっから西に五十キロメートルくらい行った所で出土したって話だ。今リーピンの学者さん達が発掘作業をしてるらしいぞ」


 屋台の主人の話を聴いて、サヴェロとメリダは互いに顔を見合わせる。早速、遺跡の情報が入り自然とにやける二人。しかし、そこで店の主人は「あっ」と声を上げる。


「そうだそうだ、ちょうど今朝、その遺跡に関してのニュースがやってたんだった」


「ニュース? どんな?」


「昨日の夕方ごろにその遺跡の中から突然化け物が現れたらしい」


サヴェロは眉をひそめ「化け物?」と聞き返した。


「そうだ。その日の作業を終えて切り上げようとしていた作業員達がその化け物に襲われて大怪我をしたらしい。死人も出たって話だ」


 屋台の主人の話を聞き終えて、再び顔を見合わせるサヴェロとメリダ。



「だから今は遺跡は封鎖中だってよ。近くまでは行けると思うが、中に入れるかはわからんぞ」


幸先の良いスタートをきれそうだったところに入ってきた化け物という不安要素。これに二人の間には重苦しい空気が漂う……だが、


「化け物って何だろう? 私そういうの見た事ないんだけど」


「俺だってないよ。遺跡から化け物が出てくるなんて初めて聞いた。でも、早速手に入った情報だし、確めるだけ確めてみよう」


 と、サヴェロが提案した。


「危なくなっても、メリダは俺が守るから」


 ニッと笑い、そう言い切るサヴェロ。するとそこに『私もいます』とアイオスが入ってきた。


「悪い悪い。アイオスもな」


 サヴェロは「ははは」と明るく笑うが、メリダの表情は明るくなかった。


「どうした? メリダ。具合でも悪いのか?」


 サヴェロはメリダの顔を覗きこみ、そう訊ねると、


「え? ううん。そんな事ないよ」


 メリダはハッと顔を上げ、無理矢理笑顔を作って答えた。


「そうか? ならいいんだけど」


『……』


 いきなり有力な情報を手に入れたサヴェロ達は食事を済ませると、早速例の遺跡へと向かうのであった。しかし……


「あ? 西の遺跡? 悪いが他をあたってくれ。あんなトコまで行くのは勘弁だぜ」


 サヴェロはヒッチハイクをして、西の遺跡へ行こうとするのだが、誰もが西の遺跡という言葉を聴いた途端、走り去ってしまう。


「これで八人目かぁ……だーれも相手にしてくれないね」


「うーん。さすがに死人まで出てる危険な所だからな。そもそも、そこまで連れて行ってってのもムシが良すぎるか」


 サヴェロはこれらの経験から、西の遺跡という言葉は使わずに、西の街外れまで連れて行ってもらえるよう道を行き交うドライバーを止めて交渉を続ける。


 すると、古いトラックに乗った恰幅のいい中年の女性が街外れまでならいいと、サヴェロ達を車(荷台)に乗せてくれた。


 車に揺られること一時間。サヴェロ達は街外れの山中で下車した。


「ここまで連れてきた手前、こんな事言うのも何だけど、本当にいいのかい? こんな所で降ろしちゃって」


「はい。大丈夫です。助かりました」


「ありがとうございました」


 サヴェロとメリダは自分達をここまで運んできてくれた女性に深々とお辞儀をする。


「そうかい? ならいいんだけど。でも、気を付けなよ。ここらの近くにある遺跡から化け物が出てくるって話だからねえ」


 今からそこに行くんですよとは言えないサヴェロは「そうなんですか? 気を付けます」と知らないふりをし、続けて質問をした。


「ちなみに、その遺跡ってどっちにあるんですか? あっ、いや、場所がわかっていれば近付かなくて済むと思って」


「ああ、遺跡ならこの道を真っ直ぐ行った所にあるわよ」


 女性が指差した道は幅は広いが、舗装はされておらず、辺りを森に囲まれた不気味な所だった。これにはサヴェロも化け物が出てきても不思議じゃないなと心の中で思った。


 女性は一通りサヴェロの質問に答えると、車のエンジンをかけた。


「それじゃあ、おばちゃんは先を急ぐから。あんた達気を付けるんだよ」


 女性はそう言うと、手をひらひらと振って走り去っていった。サヴェロは車が見えなくなった事を確認すると、女性が言っていた道を振り返った。


「雰囲気たっぷりの所だな」


「さすがにちょっと緊張してきたかも」


「何だ? ビビってんのか?」


「なっ! そんな事ないし! とっとと行こう!」


 サヴェロに煽られ、ムキになったメリダは一人遺跡へと続く道を進んで行く。サヴェロも慌ててメリダの後を追い、遺跡への道を進んで行くのであった。



サヴェロ達が遺跡への道を進み始めたのと同時刻。先程までサヴェロ達がいた街には、年中蒸し暑いリーピンでも黒いロングコートを着込み、長い髪で顔の半分を隠した長身痩躯の男デールの姿があった。


デールはカフェのテラス席に座り、コーヒーを飲みながら読書をしている。するとそこへ、


「デール様。新たな情報が入りました」


 部下である帝国兵の一人がデールのもとへとやってきた。帝国兵は軍服を脱ぎ私服に身を包んでいる。


「つい一時間程前、ターゲット達は近くの屋台で食事をしていたそうです」


「……それで?」


デールは、部下には目もくれず、読書を続けながら部下の話を聞く。


「はい。その屋台の主人の話によると、何やら遺跡について知りたがっていたので、最近発見された遺跡の事を話してやったそうです」


「遺跡……」


 デールはそう呟くと、本を閉じ立ち上がった。


「今すぐその遺跡の場所を調べろ。そして、車の用意だ」


「え? その遺跡に行かれるのですか? まだターゲット達がそこに向かったと決まった訳では……」


「少しばかり心当たりがある。場所がわかり次第すぐに向かうから急げ」


デールが命令を下すと、部下は「了解しました」と返事をし、車を手配した。そして、数分後遺跡の場所を確認したデール達はサヴェロ達が向かった遺跡へと車を発進させる。


「デール様。補足情報ですが、ターゲット達はその遺跡に行けないかと街を行き交うドライバーにヒッチハイクをしていたようです。その後、トラックに乗るターゲットの姿も確認されています」


「決まりだな。急げ、ターゲットに逃げられる前に追いつくぞ」


 デールの乗る車のドライバーはその命令を聴くと、アクセルを踏み込み車を加速させた。

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[気になる点] 屋台の主人の話を聴いて、サヴェロとメリダは互いに顔を見合わせる。早速、遺跡の情報が入り自然とにやける二人。しかし、そこで店の主人は「あっ」と声を上げる。 【若気る】(にやける) 男性…
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