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レジェンドオブカーボニア  作者: 天水覚理
第一章
10/48

1-7

 サヴェロは軽く防風林の中を見渡す。視界には、二人の帝国兵に捕らえられているメリダと、それを囲うように自動小銃を持った帝国兵が十人。そして、五メートルほど離れた位置にサヴェロの母ジェリーが立っていた。


「十二人か……まあ、これくらいなら何とかなるだろ」


 状況を把握したサヴェロはポツリと呟くと、何の躊躇もなく銃を突き付ける帝国兵へ歩み寄る。


「クッ、コイツ! 構わん撃て!」


 帝国兵は不用意に近付いて来るサヴェロに向けて発砲する。眩い程のマズルフラッシュが薄暗い防風林を照らし、銃声が鳴り響く。


 十人の一斉射撃。数え切れない弾丸がサヴェロに襲い掛かる。しかし、先程ジェリーにも起こったように放たれた凶弾は、サヴェロに当たる直前で方向が逸れ、周りの木々に着弾する。その現象に、帝国兵は思わず攻撃の手を止めた。


「さっきは家の前だったし、近所迷惑になるから逃げたけど……」


 ここで一旦言葉を区切ると、サヴェロは帝国兵を睨み付ける。


「ここなら気兼ねなく戦える」


 そう言った瞬間だった。サヴェロの回りを覆う水の膜からソフトボール程の水の珠が分離すると、それが高速で放たれた。


 放たれた水の珠はメリダを拘束していた二人の帝国兵の顔面に直撃し、二人は大きく後ろへと吹っ飛ばされた。


 あまりにも唐突に起きた事に、帝国兵は誰一人として反応できず、呆然とするだけだった。


「ゴメン。助けに来るのが遅れた」


「え? あれ?」


 その隙をついていつの間にかメリダの隣に移動したサヴェロ。メリダも帝国兵同様、何が起きたか理解が追い付かないメリダは素っ頓狂な声を出す。だが、サヴェロだという事がわかると、涙を浮かべサヴェロに抱き付いた。


「よかった……サヴェロ生きてた」


「もう大丈夫だ。後は母さんを助けて終わりにしよう。それとメリダ、ちょっとだけアイオスを借りるよ」


 そう言うと、サヴェロはメリダが腰に帯びていたアイオスを手に取った。


「それじゃあ、さっき話した通りだ。ここを切り抜ける為に力を貸してくれアイオス」


『了解しました。サヴェロ様』


 サヴェロはアイオスとのやり取りを終えると、(アイオス)を構えた。


「え? さっき話した通りってどういう事?」


「悪いメリダ。その話は後で説明する。行くぞアイオス」


 サヴェロが前傾姿勢になった次の瞬間、メリダの目の前にいたサヴェロの姿が消えた。と同時に「ガァッ!」という帝国兵のうめき声が上がる。


 メリダはすぐさまその声がする方を向くと、二人の帝国兵が地面に倒れ、その横には今までメリダの隣にいたサヴェロの姿があった。


「時間がないんでな。すぐに終わらせる」


 帝国兵は銃を構えサヴェロに発砲するが、これを跳躍して躱すサヴェロ。帝国兵はそれに反応し銃口を上に向けて追撃を試みるも、サヴェロは木の幹を蹴って移動する。そして、また別の木を蹴る、蹴る、蹴る……これを繰り返しまるでピンボールのように防風林の中を飛び跳ね回る。


 帝国兵は高速で木々の間を移動するサヴェロに照準が合わず、銃口を左右に振る。そうしている間に、死角から帝国兵に襲い掛かり、アイオスで一人二人と戦闘不能にしていく。


「クソッ! 速ェ!」


 帝国兵はサヴェロが飛び回る空中に向け銃を乱射する。しかし、どれも見当はずれな方向に飛んでいき当たらない。仮に当たったとしてもサヴェロが体の周りに展開している水の膜によって方向を変えられてしまっていた。


 サヴェロは主にアイオスを使って攻撃を行うが、離れた場所にいる相手には最初の二人のように水の珠を高速で撃ち出し攻撃していた。水といえども、高速でぶつかればその硬度は金属と変わらない。たった数百グラムの水でもその衝撃は人一人を倒すには十分といえる。


 ついに最後の一人となった帝国兵もアイオスの一振りによって地面に倒れた。


 瞬きも出来ないほどのあっという間に、銃を持った兵士十人を難なく倒したサヴェロはふーっと大きく息を吐き、その後母ジェリーにもとに駆け寄った。


「来るのが遅くなってホントに悪ぃ。大丈夫?」


「大丈夫よ。撃たれる前にアンタが守ってくれたから。ありがとね」


 ジェリーの無事を確認したサヴェロは、ジェリーを連れメリダの所に戻った。


「サヴェロって強いんだね。何あれ? 何であんなに速く動けるの? っていうか、水? みたいなの浮かせてなかった?」


 何も知らない者なら当然、目の前で起きた(起こした)現象を不思議がるのも無理はないだろう。しかし、そんなメリダの質問にサヴェロは首を傾げる。


「あれ? メリダはウィスを使えるんじゃないのか?」


「え? 私、あんな事出来ないよ」


『確かに、メリダ様には特殊な力が備わってはいますが、その力を自在に操れる技術はありません』


 あまり進展しないであろう二人の会話にアイオスが割って入った。


『詳しいお話は後でしましょう。まだ、完全に逃げ切った訳ではありません。急いでここを離れましょう』


「おお、そうだった。とにかくここを離れよう」


 追われている最中である事を忘れていたサヴェロ一行は、帝国兵の乗ってきた車に乗り込む。運転はジェリーが、サヴェロとメリダは後部座席に乗り込んだ。アイオスはナビゲーションをする為に助手席に置くと、エンジンをかけ発進した。


面白いと思われた方、


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