三人寄れば悪役トリオみたいですわね~!
白川わたげ『おはこんわたわた~! 星宮先生! 取材は絶好調でしょうか? そろそろ新作の構想もできているかもしれないですよね! リハビリの短編でもプロットでも、発表できる長さじゃないかな? って思うくらいのものでも良いので読ませてほしいです!』
星宮きらら『おはこんきらきらです。最近ちょっとそちらの方が忙しくて、なかなか執筆の時間がとれなくなってしまって……。一段落つくまでもう少しだけお待ちくださ』
白川わたげ『いつまでもお待ちしております~! そうそう! 本や文章から遠ざかっているとアレなのでおすすめの本とかおしえっこしませんか? 前にもやったみたいに!』
星川きらら『そういえばありましたね。以前におすすめされた作品は全部読ませていただきました。でしたら、わたしからは――』
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昔のアニメには三悪というヴィランがいる。
女首領に部下二人。一人は頭脳。もう一人は腕力担当とのことだ。
花音は視聴したことはないけれど――
行く先々で謎を解き明かす三人組というのは噂が立つほど目立っていた。
部室棟、コンピューター部の部室内は暗い。室温18℃設定の冷風が吹き荒れる。
ずらりと並んだゲーミングPCがうなりを爆熱を吐き出し、七色のきらびやかなLEDによって夜の歓楽街のようだ。
部員の一人――
砧庄司はタヌキのような腹を抱えるようにして呟く。
「う わ で た」
花音は縦巻きロール髪に指を絡めながら、ふふんと笑った。
「ついに尻尾を出しましたわね。学校のPCと電力をフル稼働させて、あなた……マイニングしていますわよね?」
タヌキ男はぷるぷるとほっぺたを左右に振る。
「んがが!? ないないナイジェリア!」
花音の隣でぼさっと髪の少年――琥珀がぽつり。
「……黒」
これはやってますわね。と、花音は確信した。砧は動揺しすぎである。少女の指先がスッと丸い男の顔を指さした。
「学園の機材及び電気の不正利用は横領や窃盗に当たりましてよ」
「そ、そんなの嘘っぱちんご!」
「あら? 電気についてはモノではありませんけれど、特別に財物とみなす規定があるそうですわね」
花音はスマホで法律事務所の解説ページを表示して、タヌキ男に突きつけた。
「た、た、たまたまボクチンがいる時に、マシンが動いてたからって、しょ、証拠になんかならないんごね!」
最後尾に控えていた巨躯が動く。
両手をズボンのポケットに突っ込んだ茶髪の青年――小中大福だ。
大福がつかつかと砧に歩みより、上からグッと視線で圧を掛けた。
「現行犯だ。観念しろ。マイニングにゃ口座開設だのが必要なんだろ。動いてるPCを調べりゃ一発で名義かわかるんだぜ。同じコンピューター部のやつに協力してもらうか?」
大福にスゴまれて砧は尻餅をついた。
「ひえっ! ど、どうかお許しくだされぇ!」
正座になると手を組んで男は目を閉じ頭を垂れる。
やったことも問題だが、なぜ犯行に及んだのかも花音には気になるところだった。
「どうしてこのようなことをなさいましたの?」
「そ、それは……せっかくのハイスペックなPCなのに、部活が無い日に使わないのはもったいないっていうか……性能を発揮させたかったんごよ!」
タヌキ男の言葉に琥珀はついに言葉すら発さず、小さく首を左右に振った。
「嘘ですわね。性能ならゲームのベンチマークでも走らせれば良いことでしてよ。お金が目的ですわね?」
「んがああ! そ、そうです。実は……病気の妹の入院費を稼ぐために……し、仕方なく」
花音は「あら、それはその……大変ですわね」と、案じてしまった。
すぐに琥珀が「……黒」と看破する。
「わたくしお見舞いしたいと思いますので、病院名を……なんでしたら良い病院を紹介いたしましょうかしら」
最近のお嬢様は実際に使わずとも、犯人を落とすのに権力を振るフリまでするようになっていた。
タヌキが「ぷぎゃ!」と声を上げる。
「もしイマジナリー病気の妹さんでしたら、覚悟の準備はよろしいですわね?」
この金持花音。容赦いたしませんわよ。と、にらみつければ――
「嘘ですごめんなさい! 今度発売されるピンキーリリィの限定フィギュア二十四万九千八百円(税別)の軍資金にするためなんですぅ! 英彩学園はバイト禁止してないっしょ!? 投資とかで稼ぐのむしろ推奨みたいな!? 仮想通貨だっていいじゃんかよぉ!」
砧の絶叫を引き出して、大福がおもむろにポケットからスマホを取り出した。
「全部録音させてもらったぞ。金儲けはかまわんが学校の機材と電気代で稼ぐんじゃねぇよ」
「んがああああああああ!?」
花音が琥珀に視線で確認する。エアリーヘアーの少年はうなずきながら「……白」と応えた。
「決まり……ですわね」
少女はそっと小さく息を吐く。
自白を引き出し、花音は学園の噂――コンピューター部の高すぎる電気代の謎を解明した。
あとの処分は生徒会任せだ。
スマホで黒森に連絡すると、すぐに生徒会役員が派遣された。
三人も揃ってコンピューター部の部室を出る。
学校というのは社会の縮図のようで違う。
未成年だから……と、落としどころを見つけて砧は停学処分。マイニングについては社会学だの経済学の実践授業の一環。ということとなり、慈善団体に全額寄付して終わり。
仮にタヌキ男が退学になったとしても、動機が動機である。
大福が首をコキコキ鳴らした。
「生徒の嘘を暴いて学校辞めさせるってなると、あんま気分がいいもんじゃねぇな」
琥珀が首をかしげる。
「……どうして?」
「だってよぉ琥珀。あいつだってこれが犯罪だってわかってなかったかもしれねぇだろ」
「……たぶん……知ってたと思うよ」
「はぁ!? 自覚ありってか」
「……うん」
「そ、そうかよ。まあこれをきっかけに、真面目になりゃいいんだけどな。よっし! 前菜はこれくらいにしてメインの活動だぞ二人とも! 放課後の『食べ歩き同好会』だ!」
花音が小さく咳払いで返す。
「大福先輩。今日はもう遅いですから、新幹線で大阪のたこ焼きを食べに行くみたいなのは無しでお願いしますわね」
「……日帰りは……つらい」
「ったく気合いが足りないな後輩どもは。大阪のたこ焼きはコスパ最強だろうに」
交通費という概念があることくらい、世間知らずなお嬢様でも理解できている。
そんなこともあって、駅ビルの中にあるチェーン店の揚げたこ焼きで本日は手打ちとなった。
香ばしいたこ焼きは中がとろりと熱々で、やけどするかと思うほどだった。
たこ焼きを頬張る花音を琥珀がじっと見つめる。
「ふぁ! ふぁずかふぃふぃれすわ!」
「……あっ……ごめん……ええと……花音さん」
首をかしげる少女に琥珀が口を開こうとした瞬間――
「ほらお前も食えって! 鉄は熱いうちに打て! たこ焼きも同じだぞ!」
大福が竹串に刺さったたこ焼きを琥珀の開いた口につっこんだ。
「……はふ! はぐ……美味しい……」
「だろ? いいか琥珀。まずタコについてだが日本は世界的にみても輸入量が……」
始まる大福の食べ物うんちくに、少年はうなずきながらたこ焼きと一緒に言葉も飲み込んでしまった。
パックのレモンティーをチューッと飲む少年の姿に、花音は思う。
出会ってからずっと、琥珀は同じメーカーのパックのレモンティーを常飲していた。
特別美味しいわけでもありませんのに、他に選べるものがあっても琥珀君はレモンティーですわね。
と、思ったところで――
大福がため息をついた。
「つーか琥珀よ。お前たこ焼きにもレモンティーなのか? いっつも同じメーカーだし、そんなに好きかよ?」
「……肯定。特別な味……だから」
「好みにゃ文句は言わねぇが、あんま同じもんばっか食ったり飲んだりしてると、そこの名探偵に調査されちまうぞ?」
茶髪の青年がニカっと笑う。花音の顔を指鉄砲でパンと弾いてみせた。
「……えっ? どう……しよう……」
「しませんわよ!」
真顔の琥珀に即ツッコミで返すお嬢様なのだった。




