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オラオララッシュな質問攻めでしてよ~!

「するってーと、つまりこいつはパッと相手を見ただけで、どんな感情かわかるってのか?」

「……黄色」


 驚く小中と、そんな小中を見て色を呟く神岡。さすがに能力はなくとも、茶髪の青年の色素が薄い瞳がまん丸になれば、花音にだって気持ちが察せられる。


「そういうことですわね。ただ、この力には相手の顔が見える距離が必要みたいですの。それに……匂いとか音とか、五感に訴えかけてくる様々な情報があって発揮できるものみたいですわね」


 神岡は「あっ」と、小さくうめく。


 花音も昨日、神岡の母親とおぼしき人物について執事の鋼に訊いたからこそ、視覚情報以外も共感覚で「色」化していると知ったのだ。


 小中は頷いた。


「つまり写真や映像じゃわかんねぇんだな。ビデオ会議とかだと使えないってことか。なあ琥珀。うちの会社に来いよ」

「……急に……どうしたの?」


「商品開発部には絶対味覚の持ち主もいるし、実はこの学食の宮本さんもその一人なんだけどさ。結局、美味いかまずいかってのは主観にも左右される。だから化学分析で数値も出すんだ。そうそう、北海道の都市名を関するとあるインスタント麺も、開発者の奥さんが舌で味を決めて大ヒット商品になったっていう経緯があってだな……」


 花音の視線に小中は眉尻を下げる。


「ああ、悪い。いつもの癖だ。お前の力なら老若男女、いろんな人間が感じる『美味い』を見つけられると思うんだよ」

「……そんなこと……できるの?」


「美味けりゃ幸せな色が見えるんだろ。世界取れるぜ!」

「……ええと……困る……」


「まあ、お前にもやりたいことはあるだろうし、気が向いたらいつでも声掛けてくれよな」


 がっはっはとは笑わないが、なんだ面倒見の良い親分感が出ている小中である。


「さすが若様ですわね」

「おいやめろ! その呼び名はマジでやばいから」

「……ピンク」


 恥ずかしがる小中と、そんな小中を見る神岡。


 青年は茶髪をかきむしるようにしてから、咳払いを挟む。


「まあなんかアレだな。色についてだが、白にも二百種類とかあるんだろ?」


 花音も聞いたことがあるネットミームだった。小中は続ける。


「なんか見え方違ったりすんのか?」

「……否定。色は一定……たぶん僕の主観が働いているから」


「どんな色が見えて、色ごとに決まってんのか?」

「……肯定。赤は興奮や怒り。青は冷静と悲しみ。緑は穏やかさ。ピンクは恥ずかしさ。オレンジは楽しい。黄色は注意。白は本心や疑いがない感じ。黒は嘘やごまかし」


 これについては花音も質問したかった。


「なら紫色はありませんの?」

「……わからない」


 はいかいいえ。どちらでも無いときのわからないという返答である。


「まだ見たことがありませんのね」

「……肯定」


 小中が軽く手をあげる。


「じゃじゃじゃじゃじゃあよ! 灰色はどうだ?」

「……わからない。ただ……中間の色や薄い色は、あいまいな感情だったりもすると……思う。あくまで推測」


 神岡にも知らない色があるらしい。


 小中が確認する。


「んで、開かずの扉はなんで探してんだ?」

「……平行世界に通じているから」


「んなもんあるわけないだろ!」

「……白……あと、赤」


「いちいち言わんでいいぞ」

「……ごめん。言わないとそれはその……僕が意図して黙っているのは……隠し事みたいで……」


「気にしすぎだろ。ま、どうしても自分で自分が許せないってんなら、これ以上は言わん!」

「……オレンジ……うん。ありがとう」


 花音が見ていても勝手に仲良くなっていく二人である。


「って、ちょっとお待ちになってくださいまし。金色はどうなのですの!?」

「……わからない。けど……」


 はいかいいえ。では答えられない質問にも、神岡はなんとか言葉を紡いだ。


「……他の人には無い、まぶしい色……だと思う」


 小中が笑う。


「だとよ。やっぱ俺が見込んだだけの女だよな。特別なんだろ花音は」

「は、恥ずかしいこと仰らないでくださいまし」

「さっき若様呼びしたののお返しだっつーの」


 笑いながら先輩は腕組みした。


「んで、本当の理由はなんなんだ?」


 花音は小さくコホンと咳払いを挟む。


「わたくしが伺った限り、平行世界については神岡君は本気……ですわよね?」


 後半の確認は神岡に向けられていた。


「……肯定。僕はもう一人の僕に……会わなくちゃいけない」


 以前よりも目的意識のようなものが強くなってる? と、花音は思った。


「はぁー!? わっかんねぇな。鏡でも見りゃいいじゃねぇか」

「……否定。それじゃあ……ダメだから」


 ぼんやりとした光の無いまなざしだった。小中は少しいらつきながら。


「なら百歩譲ってその異世界だのがあってだな」

「……平行世界」


「もう一人のお前がいて会ったとする。で、なにをするんだ?」

「……ええと……」


「言いたくないんだな」

「……ここまで話したけど……これ以上は……」


 茶髪の青年の視線が花音に向いた。


「おら出番だぞ名探偵」

「は、はいぃ?」

「俺ん時みたいに、こいつの捜し物を見つけてやれよ。バシッとな! 琥珀も花音に当てられたら諦めて話すだろ」


 神岡琥珀は、なぜもう一人の自分に会いたいのか。


 そして、理由を話そうとはしないのか。


 神岡がじっと花音を見つめる。


「……僕の秘密を……当てられるの?」

「あなたが自白してくだされば解決しそうなものですけれど……」


 小中と神岡。二人のまなざしが少女に焦点を合わせた。


「わ、わかりましたわよ! わたくしなりの答えをご用意いたしますわ。ただ、その前に……一人会いたい方がいましてよ」


 花音はパックのミルクティーをちゅちゅーっと一気に飲み干した。

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