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少女の笑顔

 慰問の一行は、思いのほか大所帯となってしまったが、無事に森を抜け、孤児院へと到着した。


 王城から大きな鍋で持ってきたスープやパン、たくさんのお菓子に、子どもたちは大喜びをした。アンヌ王女もエプロンをつけ、マリーたちといっしょに配膳をしていった。

 

 アルベール王太子は、駆けつけた領主と、孤児院の院長に別室で接待を受けることになり、残念そうに、王女とマリーたちの元を離れていった。


 振舞われた料理でお腹いっぱいになった子共たちは、それぞれ、好きな遊びをねだってきた。

 カイルたち騎士は、男の子たちと身体をつかった遊びをしていた。

 マリーとミリエルは、庭に咲いている小花で花冠を作っていた。

 クレアは、年長の子どもたちに勉強を教えているようだった。


 そんな中、アンヌ王女は、自分は何をしたらよいかわからず、一人手持ち無沙汰にしていた。

マリーがアンヌのその様子に気がつき、いっしょに花冠を作りましょう、と声をかけようとしたそのとき、5歳くらいの少女が王女に近づき、アンヌの裾を掴んで言った。


「ねーねー、いっしょにお絵かきして?」

少女の手には、今回プレゼントとして持ってきたものの一つ、個人用の手持ちの小さな黒板が握られていた。


アンヌ王女は、少女の目線に合わせてしゃがみ込み、「いいわよ。」と少女に微笑んだ。

そして、アンヌが黒板にチョークで小鳥を描くと、少女は大喜びした。


その少女の姿を見て、アンヌは閃いた。

アンヌは、自分がいつも持ち歩いているスケッチブックと鉛筆を取り出した。


そして、「似顔絵を描いてあげるからね。」と言って、少女の顔を鉛筆で紙に描き始めた…。

何をしているんだろう?と、子供たちが次々と集まってきた。


そして、それは、子供たちにしてみれば、魔法のような出来事だった。

いつも見慣れている仲間の少女の笑顔がみるみると紙の上に映しだされていった。


「うわ~!」「すご~い!」「そっくりだよ!」

子供たちから次々と歓声が上がった。


「はい、できましたよ。」そう言って、アンヌがスケッチの紙を切り取り、完成した似顔絵を少女に渡すと、少女はこの日一番の笑顔で「ありがとう!」と言い、アンヌの首に抱きついた。


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