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続・それぞれの道が続きます

 大切な親友たちの道が開けていく様子を見て、〝本当によかったなぁ…〟とマリーは幸せな気分に浸っていた。


「それで、マリーの希望は変わっていないのか?」

アルベール王太子が、不意にマリーに聞いてきた。

「第一希望はやはり政務官なのか?」


〝そう言われてみれば、どうなのだろう?〟と、マリーは考えこんでしまった。

〝確かに、学園にいたときは、自分の力で華麗に活躍したい!と思っていた。

王宮で働き始めたときも、第一志望は政務官だった…けれど…〟


「マリーは政務官というイメージではないのよね…。」

アンヌ王女が小さくつぶやいた…。


珍しく黙り込んでしまったマリーに、アルベールが笑みを浮かべて言った。

「では、こうしよう!マリーは、私が女官見習いに推薦しよう。」


「は!?」

マリーは慌てて声を潜めて、アルベールに聞いた。

「…王太子様っ!約束が違うのでは!?…」


しかし、アルベールは、普通の調子で言いつのる。

「アンヌも、マリーには政務官は合わないのではないかと言っているぞ?

政務官は、書類を相手にすることも多く、地味にコツコツと積み上げていかなくてはならない仕事が多いからな…。

それがずっと続くとなると、マリーには辛くなるかもしれないな…。」


「合わないって…、それはまあそうですけど…。」


「その点、女官はいろいろな意味で自由がきく…。王族の補佐が主な仕事だから、その仕事も多岐にわたって、バラエティー豊かだしな。それに、もし、アンヌが公務を担うことになったら、それを支えてあげることができるぞ。」

アルベールの言葉を聞いて、アンヌの顔が一瞬で明るく輝いた。


「まあ!マリーと一緒にお仕事ができるようになるの?

もちろんマリーの希望が一番大切だけれど…、もしそうなったら、うれしいわ…?」

アンヌがそう言いながら、小首を傾げ、マリーを澄んだ碧い瞳で見つめた。


〝天然だ…、天然のタラシちゃんだ…。〟

マリーは軽くめまいを感じ、

「ワカリマシタ…。オオセノママニ…。」と答えるしかなかった。



お茶会は和やかな雰囲気のまま、お開きとなり、王妃は、残ったケーキやお菓子や軽食を、すべてマリーたちに持たせてくれた。マリーたちが、よく下女たちへお菓子のお土産を持っていったり、分け合ったりしていることを、王妃は知っていたからだった。


お茶会の日の夜、マリーの部屋で、担当の世話係の下女キリルとマリーは話をしていた。


「マリー様、いつも美味しいお菓子を、ありがとうございます。」

「こちらこそ、キリルにはいつもお世話になっているわ。ありがとう。」

二人は、リラックスした笑顔で微笑みあった。


そして、マリーは、アンヌ王女が学園へ入学したら、女官見習いとして新たに勤務し始めることを、キリルに話した。

「まあ、マリー様は女官になられるのですね? ご出世ではないですか?」

「いやいや、まずは〝見習い〟です。」とマリーは答えた。


「ところで、キリルは、このまま私の世話係でいてくれるのかしら?

あっ、でも女官は基本的に昼間の勤務しかないから、王宮の中に部屋はいただけないのかしら?」

女官について、そのあたりのことはまだ全く詳しくないマリーだった。


「マリー様、私はマリー様が侍女をお辞めになるのと同時に、王宮の下女を辞めようと思っています。」

「えっ?そうなの?」

マリーはキリルの突然の話に驚いた。


「実は、ミリエル様のお屋敷へ、侍女見習いとしてお世話になることになりました。」


「え?そうなの?」

「実は、王宮でミリエル様の装いのお世話をしていた侍女の方が、自分の元で勉強しないか、と言ってくださったのです。」


「ああ、あのヘアスタイルを整えるのがとても上手な方ね。」


「はい、実は、ミリエル様のお許しもいただいて、マリー様が薬草園に行っている間、ときどきミリエル様のお支度を見学していたのです。見学しているうちに、私もぜひ、貴婦人の髪の毛を整えたり、メイクをさせていただきたい、と強く思うようになりまして…。

お屋敷に侍女見習いとして入るにあたり、ミリエル様が推薦をしてくださるというので、このような話が叶いました。」


「まあ、すばらしいわ。今度はキリルと私は〝見習い仲間〟になるのね…?

ミリエルには、私からも御礼を言っておくわ。」


「マリー様、ありがとうございます。」

そう言ってキリルは目を涙で滲ませた。


 マリーは、キリルがしっかりと自分のやりたいことを見出したことも、それをミリエルが応援してくれたことも、とても誇らしく嬉しかった。

侍女になるには、技術だけではなく、装いのしきたりやルール、ドレスや宝飾品の素材やデザインなど、習得しなければならない知識は山のようにありそうだった。けれども、がんばり屋のキリルなら、きっと大丈夫だろうと、マリーは思った。


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