久しぶりに見ました
「残念ですわね。また後日いらっしゃってください。
噂に名高い〝癒しのみ使い〟様と大臣閣下のご令嬢なら、きっとまた熱烈な歓迎を受けますわ。」
カリナは挑戦的な薄い笑いを浮かべて言った。
〝ふ~ん、この人、やっかんでいるのね…〟とミリエルは思った。
「カリナさん、あなた、こんな態度をとって、病院長からお叱りを受けないのかしら?」
と、ミリエルは静かに反撃を開始した。
「本当に鍵がないのだから、しょうがないわ!
それに、おじさまは優しいから、大丈夫よっ!」
そっぽを向き、カリナは返した。
「あら、そう?ところで失礼だけど、あなた年はおいくつ?」
「は? 22歳ですけど、それが何か?」
「まあ、22歳なの…」〝完全にお嫁に行き遅れるのが怖くなってきている時期ね?〟とミリエルは思った。
「そうそう、こんど我がレーヴェ侯爵家で、未婚の男性と女性を集めてガーデンパーティーを開きますの。私のお母様は、若者の仲立ちをするのが趣味なので。身分は幅広く、子爵家や男爵家の方々にも声をかける予定だそうですわ…。きっと素敵な会になるでしょうねぇ?」
ミリエルが、ツイっと顎を上げ、自慢げに言った。
〝久しぶりに見たわ!ミリエルの顎上げ!!〟
マリーは一人心の中で興奮した。
「あなたが私のお友達になってくれたら、そのパーティーにご招待させていただきますのにねぇ?」
ミリエルが、カリナに流し目を送った…。
〝なんだかすごいわ、ミリエル!これが侯爵令嬢の貫禄なのかしら?〟
マリーは引き続き興奮を抑えることができなかった。
「……、大変失礼をいたしました、ミリエル様。
鍵が…こんなところに…ありましたわっ。」
カリナが、わざとらしく言った。
ミリエルの、完全なる勝利であった。
古書が保管されてある部屋へ入ることができ、マリーはミリエルに言った。
「ありがとう、ミリエル。すごかったわぁ、あの攻防戦!
レーヴェ家には、そんな大がかりなお見合いガーデンパーティーがあるのね~」
と感心してマリーが言うと、
「そんなもの、あるわけないじゃない。
これから用意すればいいだけよ。両親におねだりしてね。
嘘はいけませんものね。」
と言って、ミリエルはマリーにウインクしてみせた。
剛毅なご令嬢だなぁ、とマリーは思った。
でも、やっぱり憎めない、マリーにとって大事な友達になったミリエルだった。