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水晶玉トライアル

「それから、部屋には私が先ほど結界を張ったから、話は外に聞こえないから安心してほしい。」

神官長は説明を続けた。

「さて、5年前に私が神官長になってから、この水晶玉の研究も引き継いでやってきたのだが、祭壇に置く以外に、聖なる癒しの力を溜めることができないかということが、私がまず取り組んだ研究テーマだった。


 いろいろ試した結果、祈りの言霊を水晶玉へ向け唱えること、祈りながら水晶玉へ手をかざすことでも、聖なる力が溜まることがわかった。

 5年かけて、複数の神官たちにより、1つの水晶玉に集中して力を溜めるようにしてできたのが、こちらの強く輝いているものだ。溜めているうちに、次第に輝くようになった。そして、半年前から輝きのレベルに変化がないので、おそらく飽和状態となったと考えている。

もう一つの水晶玉は、まだ力を溜め始めたばかりのものだ。」


 「それでは、5年で一つの水晶玉に力を溜めることができるということですね?

そのように貴重なものを私に見せるために、神殿から持ち出されてよろしかったのですか?」

マリーは、もしそうなら申し訳ないことだと思い、尋ねた。


「いや、今日は久しぶりに王に水晶玉をお見せする都合もあった。気にしないように。

それで、聖なる力を溜めるためには、人によって得意な方法が違うということもわかってきている。

おそらく、君は、より強く言霊の力を水晶玉に与えることができるのではないかと、私は予測している。」


「私の言霊の力ですか?」

マリーには自信がなかった。何せ過去世では〝落ちこぼれちゃん〟などと言われ、直接的に

民を癒すことはほとんどできなかった順列最下位の聖女だったからだ。


「そうだ。とにかく、まずはやってみてくれないか?」


神官長は、白い霧状のものが薄く中に入っている水晶玉をマリーの前に移動させた。


「そうだね、神官たちは〝神の祝福が世に満ちますように〟といった言葉を言うことが多いのだけれど、君の場合は、君自身が祈りをのせやすい言葉を言ったほうがよいだろう。

さあ、何でもいいから祈りをのせて、言霊を紡いでごらん?」


マリーは目の前の水晶におずおずと両手をあて、いつも具合の悪い人や怪我人に声をかけるように言った。

『お大切になさってください。』『大丈夫ですよ。』

すると、水晶玉が一瞬光り、すぐに収まった。そして、水晶玉の中を見てみると、白い霧状のものが少し濃くなったように見えた。


「思った通りだ。水晶玉の今の反応からすると、おそらく神官の5倍から10倍の力が込められた印象がある。すばらしい…。」


「そんな…。」

マリーは今目の前で起きたことが信じられないような気がしていた。


「では、次に手をかざして、力を出す方法でやってみよう。誘導するから、ついてきて…。

ただ、無理はしないように…。」


「まず、左手を水晶の上に軽く置く。そして、ゆっくりと呼吸しながら、頭の先から天の気を、足の先から地の気を取り込んでいるように想像して…。そしてそれらの気が、あなたの神への祈りと共に、体を通って左手から水晶玉に出ていくように、強くイメージして…。」


マリーは神官長の誘導の通りにイメージをし、左手に力を込めた。先ほどと同様、水晶玉が一瞬光った。しかし、マリーは強いめまいを覚え、その体がぐらりと斜め前に倒れた瞬間……

 いつの間にか座っているマリーの後ろまで来ていたカイルが、マリーの体を支えた。

 幸い、めまいはすぐに収まり、マリーはカイルにお礼を言った。

「カイル様、ありがとうございます。」

カイルの、柑橘系と森の香りが混ざったコロンの香りがふわりと香った。


「神官長…」

マリーの両肩を後ろから支えながら、カイルは神官長のことを睨んだ。


「すまない、マリー嬢… 大丈夫かい?」

神官長はマリーに言った。

ただし、世俗から離れている神職らしく、あまりすまなさそうではなく、心配そうでもなかった。


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