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返品は不可ですか…?

「あの、私も王女様付きをしております、クレア・バレルと申します。父は子爵です。

よろしくお願いいたします…。」

冷笑を浮かべるミリエルの斜め後ろに立っていた薄茶色の髪でモスグリーンのデイドレスを身に着けた女性が口を開いた。


「クレアさん、この人は多分あっという間にいなくなるから、構わなくてもよろしいわよ。

さあ、休憩いたしましょう。」

マリーが挨拶を返す間もなく、ミリエルはクレアを促して、部屋の奥へ行ってしまった。


「あの、マリー様…」遠慮がちにキリルが声をかけてきた。


「キリル、心配しないで。明日からのお仕事をがんばるしかないから。

案内を続けてもらっていいかしら?庭園はぜひ詳しくお願いね。」

マリーはそれほど落ち込んだ様子はなく、自分だったら〝終わっている〟なんて言われたら真っ青になってしまうのに…とキリルは思った。


「本当に私なんかの案内でよろしいのでしょうか?」というキリルの言葉をマリーが10回程聞いたころ、キリルなりの一通りの王城内の案内は終わったようだった。

「それでは、マリー様のお部屋にご案内いたしますね。ご実家からのお荷物はもうお部屋の方に届いていると思います。」


マリーの部屋は王女が生活している西棟の一角にあった。

「こちらのお部屋です。居間と寝室の2間続きになっています。」

キリルが扉を開けてくれた。


一間目の居間に入ると、部屋の中は花の香りであふれていた。

見れば窓際のサイドテーブルの上に、白、赤、ピンク、黄色と色とりどりのバラの花をメインに、百合、スイトピーなど様々な花々と、その周りを囲むようにたくさんのかすみ草が花瓶に飾られていた。


 「素敵…」マリーは思わず花瓶に近づき、花々の香りを吸い込んだ。

「ご家族様からの着任のお祝いのお花ですか?マリー様」

とキリルが聞いた。


「ええ、お兄様からかもしれないわ…お兄様はとってもやさしくて気が利く方なの…。それにしても豪華ね…。」


そう言いながら、マリーはふとサイドテーブルの上にあるメッセージカードに気がついた。

 

どんな花でもお似合いになる貴女へ

お身体を大切に

貴女にたくさんの祝福が降り注ぎますように…


〝あれ?お兄様からじゃない?

こんな恋しい人におくるような言葉は…??〟


「そうか、キリル、これは間違いで私の部屋に届けられたのではないかしら?

メッセージカードに名前が書いていないのだけど、文面がお兄様ではなさそうなの…。

私にはこんなメッセージを送ってくれる人は、私には心当たりは全くないのよね!」

花の送り主が聞いたら、がっくりと肩を落としそうなマリーの言葉であった。


「え!? 誤配送ということですか?」


「ええ、キリル、きっとそうよ。

どうしましょう!?今からでも返品できるかしら?」

マリーが少し焦った様子で言った。


「いえ、それはできないと思いますよ。

王城に出入りしている花屋はたくさんありますからね。送り主もわからないのですし、一軒一軒確かめているうちにお花が枯れてしまいますよ。」

キリルが冷静に返した。


「キリル!なんて現実的な意見なの!素晴らしいわ。

私、あなたとご縁があって本当にうれしいわ!」とマリーは言った。


〝変なところで褒めてくれる、変わったお嬢様だなあ〟とキリルは思った。

変わっているけれど、キリルをなんだか温かい気持ちくれるこの方が、あっという間にここからいなくなりませんように…と、キリルはその晩眠る前に祈らずにはいられなかった。


読んでいただき、ありがとうございます。

なかなかマリーの本格的な侍女業が始まりませんが、もう少しです。

次回は聖女時代のエピソードです。


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