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第3話 記憶喪失の少女
「逃げて。生きて。って、そう言われたから。私は……」
記憶を探して
失われた絆を求めて
希望を消さないように
必死にあがく
「だって、頑張れば報われるってお母様達が言っていたから」
夜に夢見る悪い思い出は
朝になったら消えてしまう
ほっとした思いもあるけれど
残念に思う気持ちもあって
のばした手の先から
かすかな手がかりがするりと
逃げて行ってしまう
「もし、このまま記憶が戻らなかったら?」
辺り一面に怖い出来事はたくさんで
それでいて世界は広くて 悪い人もいて
だけど歩いて行けるのは
「私を助けてくれた人達との絆があるから」
「ストーリー」
記憶喪失の彼女が歩いていけるのは、そんな彼女を助けてくれた者達がいるからだ。
しかし彼女は知らない。
記憶を失う原因を作った、その人間が身近にいるという事を。
物語のキーとなるはずの少女は、絶えずかやの外で、何の核心にも触れられない。
だから、その結末が訪れる最後まで、彼女は成長する事がなかった。