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ランダム転生でダンジョンマスター!  作者: 犬養泳治
プロローグ
6/14

第2騎士団 ユーナ

↓↓朝日(アサヒ)優菜(ユウナ)↓↓



 私はユウナ。かつて日本という別の世界の国で暮らしていた転生者というものである。気が付いたら薄く光る空間にいて、輪廻を司る神だと名乗る何者かに転生する世界、種族、転生特典のどれか1つだけ希望を言えと言われた。

 生前の記憶はほとんど何も無かったが、ただ寂しいという思いが漠然とあった。私はつい勢いで、私を大切にしてくれる人に出会える世界、と言った。

 その後は流れるように、種族は人間、特典は探知Ⅴだと言われ、最後にレベルは言わないで探知が使えることだけ言ったらいいよ、と言われて転生した。


 気が付いたら私は薄暗い所にいた。

 あとから聞いたことだが、私は雨のなか、街道沿いの木の下にいたらしい。汚れた布に包まれた赤ちゃん、それが私だった。

 後の養父になるローウルに拾われる前にモンスターや動物に食べられなかったのは奇跡としか言いようがない。

 

 私は捨て子として孤児院に入れられそうだったが、ローウルの服を掴んで離さなかったおかげで第2騎士団に育てられることになった。

 騎士団の皆はいい人しかいないけれど、ずっと戦ってばかりだったから赤ちゃんの私の世話はとても大変だったらしい。


 それでも、前世によく似たユーナという名前とたくさんの愛情を注いで育てられた私は、12歳の時に、私が15歳になったら街に働きに出させて一人立ちさせる計画があることを知った。

 皆と離ればなれになりたくなかった私は、その次の日から養父となってくれた、当時副団長だったローウルの執務室に忍び込んで経理の書類に手を出した。

 前世のおかげかすぐに《算術》スキルが現れて、私は第2騎士団内で最も事務仕事がうまくなった。そうして私は騎士団の事務仕事を担当するようになっていった。


 15歳になる前日、私はローウルに《探知》を持っていることとこのまま騎士団に入りたいと思っていることを話した。

 ローウルは《探知》にとても驚き、それがいかに希少で便利なスキルか説明した。その有用性のおかげで私は騎士団に入ることができたのだ。

 この次の日、15歳になって騎士団に入った日から私は、それまで父さんと呼んでいたローウルを副団長、後に団長とも呼ぶようになった。


 それからの毎日はとても忙しく充実していた。

 それまでの事務仕事に加えて、騎乗技術と戦闘技術を鍛えることになった。私はそっちへの適正はかなり低く、なかなかスキルとして発現しなかったし、レベルも上がりずらかった。

 それでも騎士団の皆が助けてくれたし、《探知》を持つためによく任務に連れていってもらえたおかげで、レベルとステータスは上がった。


 そんなある日、伯爵からの依頼で盗賊を討伐することになった。騎士団に入って5年だが、盗賊の討伐依頼は数回しか受けたことがない。基本的に第3騎士団の管轄だからだ。

 討伐はすぐに終わった。今回はデーモンランドへの遠征中だったために、団長までが出向いたのだから。

 問題はそのあとだった。なんとダンジョンを見つけてしまったのだ。

 団長が顔をしかめるのがわかった。私もしかめていただろう。第2騎士団は冒険者上がり。家にいるよりもダンジョンに潜っていたい人間の集まりだ。案の定、ダンジョンに潜りたいと言い出した。

 でもそれは許されない。ダンジョンは基本的にギルドと冒険者の管轄で、騎士団は関与出来ないからだ。

 ダンジョンは無限の資源を生み出す。さまざまな道具に使うエネルギーになったり、加工することで魔法石になったりする魔石と、希少な素材が手に入るのだ。

 ただし定期的にモンスターを倒さないと地上に溢れることがあるため、中に入らない日があってはならない。

 昔のどこかの王様が、雇用を増やすために冒険者とギルドのシステムを発案して以来、ダンジョンは冒険者専用の職場なのだ。




「お疲れ様です、団長」


 王都にある第2騎士団の執務室に、げんなりした顔の団長が入ってきた。団長は帰還してすぐに第1騎士団の団長にしてこの国の軍部のトップであるアリウロス=バードル元帥に報告に行った。そこで面倒事を押し付けられたのだろう。


「アリウロスの奴、ダンジョンを見つけたのは第2だから、ギルドへの連絡はそっちで頼むよ、なんて言いやがったんだ!」


 元帥と団長は古い付き合いだ。冒険者だった頃の団長の相棒として何度もダンジョンに潜ったのが、身分を隠して修行をしていた元帥だったのだ。

 その関係は二人が騎士団に入っても、団長になっても変わっていない。ギルドへの報告を押し付け会うところも変わっていないと、当時を知る人に教えてもらった。


「お二人は本当にアーマリン支部長が苦手ですね」


「あのババアいつまで支部長するんだか……。あと苦手なのはアリウロスだ!」


 アーマリン支部長はギルドの王都支部の支部長だ。団長たちが冒険者だった時から支部長をしていて、ずっとお世話になりっぱなしだったらしい。ババア、なんて口悪く呼ぶのも、アーマリン支部長だけだ。


「それで、アーマリン支部長になんのお酒を持って行くんです? 家にあるのはほとんど持っていったことのある種類ですけど。団長の秘蔵のやつを1つ用意しますよ?」


 どかっ、と二人用のソファーに体を沈めた団長が、今度は頭を抱える。


「酒かぁ、いるよなぁ。ロイとアルバのことも言わないとだしなぁ」


 ロイとアルバは1年ほど前に騎士団に入ってきた。冒険者が騎士団に入るには支部長の推薦がいる。

 彼らが死んでしまったことを告げれば、彼女はしばらく荒れるだろう。ギルドの職員たちのためにも、お酒は必要である。


「さ、団長。今回持っていくお酒を選びました。早くギルドに行ってきて下さい」


「……ユーナも来てくれないか? そしたら俺ババアに付き合わなくてもよくなるんだけど」


 支部長は私が小さいときから可愛がってくれていたので、確かに私が行けば彼女もやけ酒には走らないでしょうが……。


「私は今回の依頼の報告書類を作らなきゃなんですから。ギルド支部の設営のときは手伝いますから、さっさと行ってください」


「はぁ、行ってくる」


 そう言って団長は執務室から出ていった。現王国最強とは思えないほど重い背中だった。

これでプロローグはお仕舞いです。

次から一章が始まりますが、少し長い間ができてしまいそうです。

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