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099 閑話 レイナルドとヘレナの冒険2 後編

 3人は首都ロートスを出発した。


 首都ロートスから南に行けば魔法大学があり、東に進むとシルリア王国がある。


 東に向かう馬車の中でヘロンが話しかける。


「レイナルドさんとヘレナさんはやはりお強いのですね」


「まぁ、ミスリル級冒険者だからね。ハイデーモンだって倒した事あるんだよ」


「ハイデーモン!以前、素材を扱ったことがありましたが、もしかしてレイナルドさん達が?」


「多分そうだろうね。先日倒して持って帰ってきたから。博士はどんな物を開発したんだ?」


「秘密保持の契約をしていますから話せる物だけですが、主に魔力からエネルギーに変換する研究をしています。例えば魔石から動力に変換するにはどうするのが一番効率が良いのか等です」


「なんだか、難しそうね。1個も理解出来ないわ」


「やってみせたほうが早いと思います。この装置に魔力を注いでみてください」


 箱型の装置の上から金属の棒が出ており、小さな人形がついている。人形はどことなくヘロン博士に似ている。


 ヘレナが箱型の装置に魔力を注ぐと人形がくるくると回った。


「へぇ〜なかなか面白いわね!」


 ヘレナが注ぐ魔力を増やすとスピードアップした。


「ヘレナ、面白いからって魔力切れを起こしたりするなよ?」


「そんなことするわけないでしょ!」


「今はこれが限界ですが、もっと変換効率が良くなれば様々な物に応用出来るはずなんです」


「なるほど、博士は何があっても守らなきゃいけないな」


 レイナルドは博士の重要性を理解し、気を引き締めるのだった。



 東に進み続けて4日間、今の所は何事もなく進んでいる。襲ってくるのは野生のゴブリンやオーク程度だ。


 あと1日ほどで、シルリア王国との国境に着くはずだ。


「ヘレナ!戦闘準備だ!」


 馬車で見張りをしていたレイナルドが叫ぶ。


 ヘレナがレイナルドが指差す方角を見ると、ワイバーンに乗ったデーモンが20騎ほど後方から追いかけてくるのが見える。


「火の力よ 敵を貫け ファイアアロー!」


 こちらに向かって飛んでいたワイバーンは緊急回避するが間に合わず燃え上がる。バルログの杖によって増幅された威力はワイバーンも倒せるようだ。


「火の力よ 敵を貫け ファイアアロー!」


「火の力よ 敵を貫け ファイアアロー!」


 1匹ずつワイバーンが減るが、こちらから攻撃が当たるということは相手からも攻撃が当たるということである。


「グオオオオオオオオ!」


 複数のウィンドカッターが飛んでくる。


「はっ!」


 レイナルドがウィンドカッターのいくつかを剣で迎撃する。


 しかし、全てを迎撃することは出来ず、馬車の一部が切り裂かれていく。


「お返しよ!火の力よ 敵を貫け ファイアアロー!」


 またワイバーンとデーモンの1騎が燃え落ちていく。


「ヘレナ!マズいぞ!敵の援軍だ!」


 更に50騎ほどのワイバーン騎兵が増えた。


「さすがにこの数は厳しいわよ!」


「とにかく敵を減らしながら逃げるしかない!はっ!」


 ウィンドカッターを迎撃しながらレイナルドが答える。


「何も解決にならないじゃないのよ!火の力よ 敵を貫け ファイアアロー!」


 ・

 ・

 ・


 2時間後、戦いはまだ続いていた。


「さすがにもう疲れたんだけど……」


「俺も疲れた……」


 馬車はもうボロボロで隠れる場所もないほどだ。


 疲れた顔のレイナルドが後ろを確認すると、まだ10騎以上のワイバーン騎兵が居た。


 その更に後ろを見たレイナルドは見た。見てしまった。


「う、嘘だろ……」


 空を覆うほどのワイバーン騎兵が遠くから追ってきている。1000騎は居るだろうか。


「こうなったら、ヤケよ!」


 ヘレナの魔力が高まっていく。


「火の力よ 爆散せよ ファイアボール!」


 巨大な火の玉を10騎の真ん中に放つ。ワイバーン騎兵は散り散りに逃げようとしたが、爆発に巻き込まれて粉々になった。


 1000騎の大群は段々と馬車に近づいて来ている。


「もう後先考えない!次の一撃に全魔力を込めるわ!」


 全魔力をバルログの杖に込めていく。


「炎の力よ」


 杖の宝玉が紅く光り輝く。


「爆散せよ」


 ヘレナが杖を高く掲げる。


「フレイムボーーーール!!」


 直径10メートルの火の玉が高速で飛んでいく。狙う箇所はワイバーン騎兵の群れの真ん中だ。


「よし!」


 群れに着弾し、巨大な爆発が起こる。これだけの爆発であれば、もしかすると全滅させられるかもしれない。


「やったか!?」


 レイナルドが叫ぶ。


「ちょっと!そのセリフは言わないでって以前言ったわよね!」


 フレイムボールによる黒煙が晴れると、ワイバーン騎兵が半分程に減っていた。


「レイナルドのしで倒しきれなかったじゃないのよ!」


「俺のせいなのかよ!」


 ワイバーン騎兵約500騎が段々と近づいてくる。


「もう魔力は空っぽよ……」


「これまでか……」


 諦めかけたその時、頭上を多数の魔法や矢が通り過ぎワイバーン騎兵に降り注ぐ。


 前方を見るとシルリア王国の兵士や冒険者達が迎えに来てくれていた。


 次々と飛んでいく魔法を見上げながらレイナルド達は助かった事を実感したのだった。



 シルリア王国王都にて


「シルリア王国までの護衛、ありがとうございました」


 ヘロン博士が頭を下げる。


「いや、まだ俺たちの護衛任務は終わっていない。帝国がヘロン博士を狙っているかもしれない。しばらくここに滞在することにするよ」


「レイナルドさんありがとうございます。宜しくお願いします!」


「ヘレナもシルリア王国王都は初めてでしばらくここでショッピングをしたいらしいからな。こちらこそよろしく」


 こうしてレイナルドとヘレナは無事に任務を達成することが出来たのであった。

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