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「ゼェ、ゼェ……も、もう動けない」


 マルクは満身創痍(まんしんそうい)で倒れ込む。


 イザベラも離れた場所で倒れており、心臓に短剣が刺さっていた。


「僕でも勝てた……」


 マルクは嬉しそうに気絶した。



 コメットは廊下を走っていた。


 魔王はきっと一番高い場所に居るはずだ。だって魔王だもの。


 上への階段を探しているうちに迷ったようだ。


 しばらく走り回っているとなんとなく正面玄関のような場所に出た。


 そこには探していた階段があった。


「ふう、計算通りでしたね」


 完全に強がりである。


 階段を登るとまっすぐ伸びる廊下があり、奥に大きな扉がある。


 謁見の間だろうか?扉を開けてみる。


「待っていたぞ!エディア共和国の亡霊よ!」


 太った大男が豪華な服を着て椅子に座っている。ガーマ帝国の皇帝のようだ。


「誰ですか?あなたのような人と待ち合わせの約束なんてしてませんよ」


「ふん、(ちん)はガーマ帝国の皇帝ガーマ5世!お前のような小鼠はさっさと(こうべ)()れるがよい」


「遠慮しておきます。俺の名前はコメットです。魔王はどこに居るんですか?」


「お前に魔王様の場所を教えて何の意味があるのだ?どうせここで死ぬというのに」


「死なないから大丈夫ですよ。あなた程度の実力なら、かすり傷すら付きませんから」


 どうせ戦いになるのだ。戦う前から心理戦は始まっているのである。相手を怒らせたほうが有利になる場合が多い。


「朕を侮辱するとは命知らずな奴だ!す、すぐに処刑してやる!」


「やれるものならね。つべこべ言わずにかかってきなさい」


 コメットがクイクイっと手まねきする。


「ぐぬぬううう!魔王様にいただいたこの力で即殺してやる!」


 元から巨体だった男が更に巨大化し、紫色で毒々しいカエルになった。


「うーん、気持ち悪いし、直接触りたくないな」


「ゲロっゲロっゲロ!もう終わりだ!毒弾!」


 カエルの口から紫色の液体が飛んでくる。


 コメットは本気で避けた。


 毒無効はあるけど、あの液体に触ったら終わりだ。あいつの唾液なんかに絶対触りたくない!


 精神的に大ダメージを受けること間違いなしである。


「なかなかにすばしっこい奴だな。仕方がない。朕の奥義を見せてやろう」


「いえ、見たくないので、やめてください」


 カエルの全身のイボから紫色の毒が染み出した。


 そしてカエルは急回転し毒を周囲に飛ばし始めた。もはやテロである。


「ゲロっゲロっゲロ!どうだ!逃げ場はあるまい!」


「ロックウォール!逃げ場はあるけど?」


 最初は見た目の気持ち悪さで動揺したけど、もうそろそろ慣れた。反撃するとしよう。


「圧縮ファイアボール100連!」


 ファイアボールを圧縮し、更に高熱化している。爆発時の威力も上がっている圧縮ファイアボールを100連続で叩き込む。


「グエエエエエエエエエエエ!」


 ガーマ5世はあっけなく炭となった。

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