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1日かけて北上した。あとは、1日かけて西に向かう予定だ。
そろそろ夕陽が沈む為、野営の準備をし始めた頃、突然そいつはやって来た。
「俺は魔王軍四天王、魔炎のマッキーだ!邪魔なお前達を消し去りに来てやったぞ」
猿顔の男がマッキーと名乗った。名前が絶妙に似合っている。
「え、魔王軍?ガーマ帝国の皇帝って魔王だったの?」
「無礼だぞ!魔王様があんな下等な人間な訳がなかろう!」
「帝国は魔王に屈したのか?」
「そうではない、奴等は下等な種族であることを自覚し、自ら魔王様の配下となったのだ」
情報を簡単に教えてくれた。良い魔族なようだ。もしくはただの馬鹿なのかもしれない。
「魔王様は首都ゲーロに居るんですか?」
「む……そんなこと言う訳がないだろう!」
「チッ」
「お前、今舌打ちしたか!?」
「えっと魔王軍四天王の中でもサイジャックさんだっけ?もう出てくる情報もないみたいだね。じゃあ、さようなら」
コメットが別れの挨拶を告げると、後ろで待機していたアンナが飛び出す。
「不意打ちとは卑怯な!」
アンナを迎え撃とうとするマッキーにマルク君が鉄球を5つ連続で投擲する。
「うおっ!危ないな!しかし、そんな攻撃当たらなければどうということはアイタッ!」
アンナが隙をついて剣で斬りつける。
「痛いじゃないか!」
マッキーは顔が真っ赤になって怒っている。
「地獄の炎を味わうがいい!」
マッキーのスキルなのか両手を炎が包み込んでいる。
その拳でアンナを殴りつける。
「うっ!」
アンナはバックステップで威力を殺しつつ盾で防いだが、熱のダメージを少し受けたようだ。
追撃を加えようとマッキーが追ってくる。
「ブラストカッター!」
「ウガッ!」
ルネの中級魔法が直撃した。
「アンナ!これを使ってください!」
コメットがリヴァイアサンの牙を投げる。
受け取ったアンナは片手剣にリヴァイアサンの牙を装着する。
アンナは魔法で怯んでいるマッキーに再度攻撃を仕掛ける。
「させるか!アガッ!」
アンナより先に迎え撃とうとするマッキーの後ろに気配を消したマルク君が現れ、両脚を斬りつける。
「しまったーー!」
アンナは水を纏った刀身で敵を一刀両断した。
魔王軍四天王はあっけなく倒された。
「ハイヒール!お疲れ様でした。3人とも良い戦いでした」
「ありがとうございます」
「フフン」
「勝てて良かった〜膝がまだ震えてる!」
「帝国にお仕置きに来たはずが、魔王が関わっていたとは……ところで魔王って何ですか?」
よくあるゲームの魔王は知っているが、この世界の魔王はよく知らないのだ。
「えええ!知らないんですか!?」
「はい、教えてくれませんか?」
「人間を滅ぼすことを目的とした魔の軍団の王です。勇者が魔王と戦って倒すんですよ。まぁ、実はアンナもおとぎ話でしか聞いたことがないんですけどね」
「なるほど、おとぎ話になるくらいだから、あまり頻繁に出てくるわけじゃなさそうですね」
「私も帝国の皇帝が魔王の配下だったなんて知らなかったニャ!」
「あの四天王がペラペラと喋ってくれたおかげで助かりました。さて、野営の準備の続きをしましょう。今日の見張りは俺がしますね」
また、四天王に襲われたら面倒だからね。
夜通し見張りを行ったが、特に異常はなかった。




