087
3時間後、魔法大学から少し離れた位置に着いた。
魔法大学は予想以上に大量の魔物に囲まれていたのだ。
ざっと見て5000匹以上いるようだ。
だが、魔物達は魔法大学の結界によって一定距離から中には入れずにいる。
その結果、魔法大学の周りにはドーナツ状に魔物の大群が蠢いている状況となったようだ。
「アンナとルネとマルク君は3人で右側から魔物を倒して下さい。俺は左側から魔物を倒してグルッと周ります」
「あのー私はどうしたらいいのニャ?」
「ああ、ナビはハティとここに居てください。ハティ、頼んだよ」
「ウォン!」
「よし!じゃあ、作戦開始です!」
「「「はい!」」」
俺は左側に走る。
仕込杖イチを取り出す。
今回は魔法で戦おう。せっかく魔法大学の前で戦うわけだしね。
「ファイアアロー!600連!」
まるでガトリングガンのような連射でデーモン達を灰にしていく。
「次は、中級魔法にしようかな」
20メートルほど上空にジャンプして魔法を放つ。
「ロックウォール!これも100連!」
硬く分厚い石の壁が上空から降り注ぐ。
大きな音と砂煙の後に立っていられる魔物は皆無であった。
「よーし、最後は上級魔法だ!」
「ストーム!」
とてつもない暴風と真空刃が無数に発生した。
広範囲の魔物達があらゆる方向に吹き飛び、粉々になった。
まばらに残った魔物達はストレートパンチという名の風魔法(物理)で倒した。
これで半周分の魔物は倒したようだ。
「3人はまだ倒すのに時間がかかりそうだな〜。残りの敵も倒しちゃおうかな」
残りのデーモン達も魔法やストレートパンチで倒すと、4分の3周分進んだところで3人と合流出来た。
「やっと合流しましたね」
「リーダー倒すの早すぎ」
「コメットさんの殲滅速度はアンナ達3人の3倍!?」
アンナはショックを受けたようで、がっくりとしている。
「コメットさん!僕は囮役をさせられていたんです!ひどくないですか!?」
「マルク君どんまい!さあ、魔法大学に入りましょう!」
魔法大学側は、魔物が殲滅されたことに気付いているようだ。何故なら結界が解除されているからだ。
ハティを呼び戻し、全員で魔法大学の正面門に向かう。
途中で魔法大学の方向から歓声が聞こえた。
「コメット様万歳!」
「我らが魔法大学の希望だ!」
かなり恥ずかしかったが、何の障害もなくたどり着くことが出来た。
門が開き、見知った顔の老人が出てきた。
「コメット君、また助けてもらったようじゃのう」
「お久しぶりです。ザングドア学長」
「立ち話もなんじゃから、中に入って話をしよう」
「分かりました」
ザングドア学長に促されて魔法大学内に入る。
1階の応接室に通され、全員が席に座った。
「コメット君、改めて礼を言う。ありがとう」
「いえいえ、魔法大学は俺にとって大事な場所ですから当然のことをしたまでです」
「そう言ってもらえると助かるのう。あの結界ももう少しで限界じゃった」
「良いタイミングだったんですね」
「そういうことじゃ。ところで、そちらの3人と2匹はコメット君の仲間かのう?」
「ええ、こちらからアンナ、ルネ、マルク君、ハティ、ナビです。皆、仲間です。ナビは帝国までの案内人でさきほど出会ったばかりですが」
「そうか、皆もありがとう。魔法の知識しかない場所じゃが、興味があれば見ていくとよい」
「ありがとうございます」
「それで、今の戦況はどうなっておる?魔法大学は長い間、陸の孤島で何も知らないんじゃ」
「西の帝国と南の獣国から攻め込まれエディア共和国は滅んでしまいました。シャトラインの北の街では生き残った人が集まりヴァリアス王国を建国しました」
「なんということじゃ。そんな事態になっておったとは。では、魔法大学はヴァリアス王国と話し合う必要がありそうだのう」
「ええ、戦況が落ち着いたらその必要はありそうですね。ちなみに国王は俺です」
「どええええええええ!?」
おじいちゃん、どこからそんな大声が出ているんだ。
「すみません、言い忘れていました」
「こ、これは失礼致しました」
ザングドア学長が跪いて謝罪する。
「学長!今まで通りにしてください!形だけの王になっただけですから」
「いや、長い人生で一番驚いたわい……」
「俺が国王なので魔法大学を悪いようにはしませんよ」
「ありがとう。コメット君はこれからどうするんじゃ?」
「とりあえず帝国に行ってみます。何故こんな事をしたのか調べる必要がありますから」
「何か助けてほしいことがあれば言うんじゃぞ」
「分かりました」
特別顧問の特権と今回の活躍の報酬ということで特別にルネに上級魔法の魔道書を見せてもらった。
その日は、魔法大学で1泊させてもらった。と言っても自分の部屋なんだけどね。
翌日、コメット達とザングドア学長は魔法大学の門に居た。
「それでは、また何かあれば連絡してください」
「わかった。コメット君も気をつけるのじゃぞ」
「はい、ありがとうございます」
魔法大学の危機は去ったと判断して、ヴァリアスに戻ることにした。
「ザングドア様、お世話になりました」
「おじいちゃん、また来る」
「ひいっ!あの筋肉質な魔術師が僕のことじっと見てる!」
三者三様の挨拶をして、帰路についた。
デーモン達が他の魔物達を倒したのか、行きも帰りも全く魔物に出会うことはなかった。




