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その後は冒険者ギルドに行って、依頼を眺めたり、ドラゴンの鱗を納品したりして過ごした。
そんなある日、元老院の使者が再び訪れた。
準備して謁見の間で待機していると扉が開き、使者達が入ってきた。
「この度のシャトラインとの戦い、見事であった」
「は?」
てっきり前回の事を謝りに来たのかと思ったが、謝る気はないらしい。
「聞こえなかったか?この度のシャトラインとの戦い、見事であったと言ったのだ」
こいつは他人をイライラさせる天才なのだろうか?
こんな奴使者にして大丈夫か?
「ふーん、それで?」
使者の後ろに控えていた奴、仮に使者Bが何故か怒り出す。
「こちらは元老院の決定を伝えに来ているのだぞ!無礼であろう!」
「静かにしろ!コメット殿騒がしくして申し訳ない」
別の使者Cが黙らせる。
質の悪いコントを見せられているのだろうか。
「それで?」
「元老院はコメット殿をこの荘園の領主であると認める。デブラジオの爵位は剥奪、コメット殿へ伯爵位を与える。また、シャトラインについても同様に領主とする」
「シャトラインも?」
「そうだ、荘園同士の戦いでは負けたら領地を失うことが法で決まっている」
「ここはまだ荘園として認められていなかったけど?」
「ええい、そんな小さな事は問題ではないのだ!元老院が決めたことなのだぞ!」
「まぁ、いいや。シャトラインの代官は前領主のデブラジオとする。あと、この街の名前はヴァリアスだ。ちゃんと覚えて帰ってくれ」
「いいだろう。では失礼する!」
使者達は怒ったまま帰って行った。
「ふう……」
面倒くさい相手だったな。自尊心が強く。相手を見下すタイプの人間だった。
何か嫌な予感がするが、今は何もすることは出来ない。
「セバスチャン、何か美味しい紅茶とクッキーを頼む」
「畏まりました。用意させますので、少々お待ちください」
「ああ、俺は自室に戻っているよ」
疲れたときは、紅茶とお菓子に限るね。
自室で待っているとセバスチャンが紅茶とクッキーを持ってやって来た。
「お待たせしました」
「ありがとう」
「コメット様、デブラジオの調教が完了しました」
「調教!?厚生じゃなかったっけ?」
「問題はありません。コメット様に命を捧げる覚悟でシャトラインを統治するとのことです」
全く別人になってしまったようだ。
セバスチャンに任せたのは間違いだったか?ま、いっか。デブラジオだし。
「そっか、デブラジオはどこに?」
「既に兵と共にシャトラインに戻らせました」
「そうか、じゃあとりあえずは一件落着かな」
紅茶でほっと一息入れながら、その日は精神的に疲れてしまったので、魔法の鍛練をして寝ようと思う。
ただ、なんとなく何かが起こる予感めいた物が邪魔をして寝付きが悪かった。




