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 翌朝、朝食をとりゆっくりしているとセバスチャンが来た。


「おはようございます。コメット様」


「おはよう、セバスチャン。何か用?」


「はい、この領地の名前を決めていただきたいのです」


 そういえば、全く考えてなかった!


 考えたこともないと言えば嘘になるが、無意識に避けて来たのだろう。


「領地の名前か〜……どうしよう?どういう風に決めるのが一般的なの?」


「地名は、人物名や特産物、景色、事件、気候、方角、歴史などによって決められることが多いようです」


「特産物はコメット印の農作物と品種改良した猪だったね。景色は森林か。事件や歴史は特にないね。方角はシャトラインの北だけど、シャトラインの名前を受け継ぐのは微妙になってきたし」


「人物名でコメット様の名前にちなんだものをつけるのはどうでしょうか?」


「うっ、自分の名前かぁ。個人的には微妙だな。多様性に富む街にしたいという願いをかけてヴァリアスにしようかな」


 本当の読み方はヴェアリアスらしいけど言いにくいし、ヴァリアスにしておく。


「ヴァリアスですか。良い響きですね。後で街全体に連絡を行います」


 無事に名前が決まって良かった。


 今日は冒険者ギルドで指名依頼が貰える予定だから出発することにする。ちなみにパーティの皆にも集合するように使いを出してある。


 冒険者ギルドに着くと既に3人が待っていた。


「こんにち「ワン!」家のほうはどうでした?」


「こんにちは、とても広くて新しくて最高でした!」


「僕一人では使い切れない部屋数です」


「ボクはキノコ部屋作った」


 1人だけ変な感想だったが概ね気に入ったようだ。


「それなら良かったです。じゃあ、冒険者ギルドに入りましょう」


 入ると昨日よりは落ち着いた様子だ。ギルド長も自室に居るようで見当たらない。


 受付に聞いてみる。


「こんにち「ワン!」コメットと申します。俺のパーティに指名依頼があると思うのですが、確認してもらえますか?」


「パーティ名を教えていただけますか?パーティ名で確認出来ますので」


「え?パーティ名なんてあるのですか?」


「もちろんです。登録時に申請したはずです」


「ちょっと待っててくださいね」


 受付を待たせて3人のところに戻る。


「パーティ名を聞かれたんだけど知ってますか?」


 ルネが答える。


「キノコラヴァーズ」


「マジですか?それはちょっとやだな」


 マルク君が答える。


「臆病者と村を追放された僕はコメットさんの力で覚醒する今更村に戻って来いと言われてももう遅いと思えるほど素晴らしいコメットさんのパーティ」


「長すぎますし、ほとんどマルク君の話じゃないですか!」


 最後にアンナが答える。


「コメリです」


「え?」


「コメットさんがリーダーをしているパーティを略してコメリを登録しました」


 前世の記憶が商標権的にマズイんじゃないのかと警鐘を鳴らす。


 商標権とは、商品やサービスについた目印である商標を保護することを目的とする権利である。


 だが、よくよく考えて大丈夫だという考えに至った。


 何故なら商標権は業種が違えば同じ名前を使っても問題ないからである。


 つまり冒険者パーティ名として商標登録されていなければ基本的には大丈夫なはずである!


「まさかコメリだったとは知らなかったです……最初に確認しておくべきでした」


 がっくりとうなだれるコメリ。いや、コメット。


 気を取り直し、受付に行く。


「パーティ名は、コメリです」


「承りました。確認しますので少々お待ちください」


 しばらく待ち、受付が答える。


「指名依頼が確認出来ました。内容はシルバーアンデッド墓地の調査です。報酬はコメット様が1ランク昇級、他の方は2ランク昇級です」


「あ、それならもう終わってます」


「え!?」


「じゃあ報告しますね。まず1階層目は……」


 一通り説明した。


「では、今の報告の証明となる物を何かお持ちでしょうか?」


「これでいいですか?」


 ダメ元で集めておいた討伐証明部位のアゴの骨を見せる。ついでに荷馬車に大量に置いてある。


「少々お待ちください」


 そう言って、受付さんはアゴの骨を持って奥に走っていった。そして走って戻ってくる。そんなに急がなくてもいいのに。


「はぁはぁ、確認して参りました!本物でしたので、調査完了とさせていただきます。コメット様はアダマンタイト級。他の皆様は白金級となります。登録証をこちらに提出してください」


「はい、どうぞ」


 皆の分の登録証を集めて受付に渡す。しばらく待つと新しい登録証が出来上がったようだ。


「お待たせしました。こちらが新しい登録証です」


 おお、アダマンタイトで出来ている登録証だ。どうしても素材として見ている自分がいる。


「アンナが白金級になれるなんて!頬をつねっても痛い!夢じゃないんだ!」


「僕が白金級……グスン!諦めなくて良かったウワアアン」


 マルク君は号泣している。


 ルネは、一生懸命プレートに何か彫っている。ああ、キノコの絵を描いているのか……。


「えっと、他に依頼はないですか?やる気に満ち溢れていたんですけど」


「しょ、少々お待ちください」


 奥に行った受付が少しして戻ってきた。


「ギルド長が相談したいそうです。応接室へどうぞ」


 皆と応接室に向かう。


 応接室に入ると既にギルド長が待っていた。


「コメット様、わざわざ来てもらって悪いな」


「ギルド長がコメットさんを様付けしている!?」


 アンナが飛び上がって驚いている。


「これには色々と訳があって話すと長いからその話は今度にしましょう」


「あ、分かりました」


 正気に戻ったアンナは恥ずかしそうに了承した。


「ギルド長、相談とは指名依頼についてでしょうか?」


「そうだ。今日お願いした指名依頼は長年誰も達成出来なかった依頼だったんだ。それでギルド本部から達成報酬としてランクアップが許可されていたという経緯がある」


「なるほど、経緯は分かりました」


「今コメット様は既に現状最高位のアダマンタイト級なのだが」


「え?最高位はオリハルコン級だったはずでは?」


「ああ。そうなんだが、前例がないのだ。冒険者ギルドを創設したイボ・エチャブしか居ないと言われている」


 ちょっと面白い名前だな。オリハルコン級は創設者の特権というわけか。


「なるほど、仮にオリハルコン級に上がる為にはどれほどの偉業が必要なのでしょうか?」


「国の危機を救う程度の偉業は必要だと個人的には思う。コメット様は以前、パルム教皇国を救ったので資格は十分にあると俺は思うんだがな」


「では、ギルド本部に条件を問い合わせて貰ってもいいですか?」


「ああ、構わない。条件が分かったら連絡しよう」


「ありがとうございます」


 ギルド長に借りを作ってしまった。今度何かお返しをしよう。


 やる事が無くなってしまったので3人には引き続きレベル上げをしてもらうことにした。


 ただし、コメット抜きでどこまで戦えるか試してもらう。


 最高品質のポーションを大量に持たせて保険としてハティにもついて行ってもらうことにした。


 コメットは早急にしなければならない事がある。


 それはこの街ヴァリアスへの有能な人材の誘致だ。


 まだ先の事だと思うが怒ったデブラジオまたは元老院の手先が攻め込んでくる可能性もある。


 現状最高位のアダマンタイト級になったのなら、アダマンタイト級冒険者の居る街として宣伝出来るような気がする。


 ついでに魔法大学の特別顧問の居る街としても宣伝すれば有能な魔術師が集まるかもしれない。


 集まる冒険者や魔術師は何を求めて来るだろうか?知恵か技術か、武器防具、富や名声か。


 知恵や技術なら学校を作るべきだろうか。


 武器防具ならここには優秀な職人が集まっている。


 富や名声は難しいが、その目標となる人物が街に存在すれば集まってくる可能性が高くなる。


 なんとなく思考の整理が出来た気がするが、他にも警察や消防署、病院など街に必要なものを考え出したらキリがない。


 ここはもうあの方法を取るしかないだろう。


 せーのっ


「セバスチャーン!」


「お呼びでしょうか?」


「相変わらず早いね。街が栄える為に必要な施策を頼みたいんだ」


「承知しました。行った施策についてはコメット様のお時間がある時に報告するように致します」


「ありがとう。あ、ついでに街の皆に従魔のゴブリンやオーク、ドラゴンについても周知しておいて欲しい。テイム済みだから安全だということも含めてね」


「畏まりました」


 ふう、便利だなセバスチャン。


 安心して部屋に戻る。


 コメットには試したい事があるのだ。

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