066
そんな日々を過ごしていたある日、コメットの部屋の扉がノックされる。
「どうぞー」
セバスチャンが部屋に入ってくる。
「コメット様、今お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「いいよ」
「この国の使者を名乗る者が来ております」
「用件は?」
「直接伝えたいことがあるそうです」
「仕方がない、会おう」
「案内致します。こちらです」
セバスチャンの後ろを付いて行くと、以前地図で見つけた謁見の間に来てしまった。
やっぱり謁見の間にある王の椅子っぽいものには俺が座ることになってしまった。
しばらく待っていると、国の使者らしき者達がぞろぞろと歩いてくる。
「お前がここの領主か?」
使者の不遜な物言いにセバスチャンの殺気が膨れ上がる。
「ひいっ!」
殺気に気付いた使者が顔を青くする。
「セバスチャン、やめるんだ。これじゃ話が出来ないぞ」
使者はコメットが話し合いを望んでいる事を知り、少し落ち着きを取り戻した。
「コメットとやら、喜ぶが良い。元老院はここを荘園として認めることを決定した。そして、この土地はお前が代官として管理するのだ」
荘園とは、公的支配を受けない一定規模以上の私的所有・経営の土地である。
「代官として?では、領主は誰なんです?」
「ここの領主はシャトラインの領主ホソ・デブラジオが兼任する」
以前聞いたことある名前だと思ったら以前冒険者ギルドで絡んできた奴の親父だった。
多分、その親父が裏で動いてここの利権が手に入るように画策したのだろう。
「じゃあ、その話は断る。荘園として認めてくれなくてもいいし、俺はここの領主のままでいいよ」
「な、なんだと!?元老院の決定に逆らうのか!」
「さあ、お前達に話す事はもうない。お帰りいただこう」
「そうはいくか!」
使者の中から騎士風の男が2人、魔術師風の男が2人、前に出てくる。
「俺たちは、ホソ・デブラジオ様に仕えている者だ。はっきりと言おう。俺たちはここに居る誰よりも強い!血を見たくなければ従え!」
うわー分かりやすい奴が出てきた。でも、少し遊んであげようかな?
「いいよ、遊んであげよう。俺は一歩も動かないから、かかっておいで」
「馬鹿な奴だ。切ったお前の首を持って帰り、デブラジオ様へ献上してやる!」
そう言って、2人の騎士が剣を振り上げて走ってくる。が、もの凄く遅い。
鎧が重いんだろうなー。後ろの魔術師はボソボソと何かを詠唱している。
良い事を思いついた。
「ダーク」
「ダーク」
「ダーク」
「ダーク」
4人の頭に闇がまとわりつく。
魔法大学のカールが以前、目が見えない状態ではどうやっても魔法が当てられないという実験結果を発表していたのだ。ナイス、カール。
騎士2人は全く別方向に進み転ぶ。魔術師はオロオロしている。
仕込杖イチの刀を抜き、吸魔の斬撃を飛ばす。
4人は魔力切れで気絶した。
倒れた4人を見るとダークの魔法でアフロのようになっている。色んな意味で恐ろしい魔法だ。
「俺に刃を向けたということはシャトラインが敵対したということだね。そいつ等を連れ帰って元老院にそう報告しろ」
ダメ押しにセバスチャンが威圧する。威圧を受けて何も喋れなくなった使者達は悔しそうな表情で帰って行った。
「欲に目が眩んだシャトラインの領主がこちらに喧嘩を売ってきた。セバスチャン、早急に対策を講じてほしい」
「畏まりました。でしたら、こういうのはどうでしょう……」
セバスチャンと作戦を立てた後、俺はすぐにシャトラインの冒険者ギルドに来ていた。
受付に行く。
「ギルド長は居ますか?すぐに応接室に呼んでください。コメットが呼んでいると言えばすぐに来てくれると思います」
受付嬢は慌てて奥に走って行った。
俺は応接室に勝手に入らせてもらう。
少し待っているとギルド長が応接室に入ってきた。
「コメット様、どうかしたのか?」
元ミスリル級冒険者で大柄な虎獣人のギルド長だが、色々あってコメットの事を神として崇めている。
「シャトラインの領主が俺に喧嘩を売ってきたんだ。北にある俺の領地を寄越せとね。その報復をしようとここに来たんだよ」
「ここに?説明してもらっても?」
「結論から言うと、冒険者ギルドを俺の街に移転させてほしい」
「そ、それはギルド長の権限を超えているんだが」
「表向きは新しい街に冒険者ギルドを作りたいとでも言えばいい。実際に高額な魔物素材を納品するしね。なんならドラゴンの鱗も提供する」
「ドラゴンの鱗!?それならば簡単に許可が降りそうだ」
「そして、ここの職員ほとんどを新しいギルドに移籍させてほしい」
「ふむ、コメット様がそう言うのならそうしたほうがいい何かがきっとあるのだろう」
「ああ、頼むよ。職員全員分の住居も用意させるから安心してくれ。優秀な冒険者も拠点を移すよう説得してくれると助かる」
「任せてくれ」
冒険者ギルドを出た俺は、次に魔術師ギルドに向かう。




