063
次の日、コメットはシャトラインの冒険者ギルドに来ていた。
理由はパーティを探す為である。
何故今更パーティに入るのか。それは単純に新しい武器を自慢したいからだ。
コメットは朝から冒険者ギルド内で「パーティ募集」と書かれた大きめの羊皮紙をぶら下げて、右手を伸ばして親指を立てている。
それはまるでヒッチハイカーのような出で立ちである。
もう3時間は経つが、誰も声をかけて来ない。ハティは地面で寝てしまった。
もう今日は誰も声をかけて来ないだろう。諦めかけたその時、横から声をかけられた。
「パーティ募集って本当ですか?」
見ると銅級冒険者の女の子が立っていた。
「はい、本当です」
「小さくランク問わずって書いてありますけど、それも?」
「それも本当です」
「アンナをパーティに入れてくれませんか!?お願いします!」
「えーっと、アンナって貴方の名前ですよね。俺はコメットです。パーティを募集しているのであってパーティメンバーは募集してないんですよ」
「そうなんですか?でも、アンナが参加すればパーティになりますよ!」
うーん、一時的なパーティを募集してたんだけどなー。後で解散しにくくなりそう。
どうしようかなーと悩んでいると、女の子は居なくなっている。
見渡すと受付に居た。こっちを手招きしてくる。
「何ですか?」
「パーティの申請です!早くここにサインをしてください!」
「は、はい」
勢いに気圧されてサインしてしまった。
「これからよろしくお願いします!パーティリーダー!」
「うーーーん、まぁ、いいかぁ。よろしくお願いします」
なんだか必死だったし、何か抱えているのかもしれない。
「さっそく依頼を受けましょう!」
「待って、なんでそんなに急ぐんですか?」
「それは……」
「言えないような理由なんですか?」
「お金……お金が必要なんです」
「どうしてですか?」
「……お母さんが病気で苦しんでいて、治すのにお金が必要なんです」
「お父さんは?」
「お父さんは居ません。数年前に出ていったっきり帰って来ませんでした」
「そっか、とりあえずお母さんを診てみようか。治せるかもしれないし」
「本当ですか?!じゃあ、案内しますからついてきてください」
ついていくとシャトラインの町外れにあるちょっとボロボロの家に着いた。
「ここですか?」
「はい、こんな家で恥ずかしいですけど、入ってください」
「洞窟での暮らしに比べたら天国ですよ、失礼します」
家に入って、アンナのお母さんが居る寝室へと案内される。
お母さんはとても苦しそうにしている。
医者じゃないから、原因は分からないな。とりあえず一通り回復魔法をしてみるかな。
「ヒール!ハイヒール!キュア!ディスペル!」
全部かけてみた。パァッとアンナのお母さんの全身が光った。
魔法自体は成功したようだ。
苦しんでいた事が嘘のように今は安らかに眠っているように見える。
「多分、治ったみたいですね」
「ありがとうございます!」
後は安静にして様子見だな。
「今日はこのまま様子を見てあげてください。何かあれば冒険者ギルドに居るので、来てください」
「分かりました。本当にありがとうございます!」
涙目で感謝を言うアンナに手を振って家を出る。
良い事をするのは気持ちが良いものだなぁ。あれ?俺は何をしたかったんだっけ?
パーティ募集しようとしたらパーティを結成してしまったんだった。
パーティ募集じゃなくてパーティメンバー募集にするかなぁ。
冒険者ギルドに戻ってきたコメットは羊皮紙にパーティメンバー募集と書き込むのだった。
今、ヒッチハイカースタイルでパーティメンバー募集中。
無言で立ち尽くしているのが悪いのだろうか?
「らっしゃいらっしゃい!今なら先着3名に干しキノコをプレゼント!」
物で釣る作戦である。
「本当?」
お、来たか!
「ええ、本当です。首都ロートスでよく売られている物ですよ」
「じゃあ、パーティに入る」
よく見ると、小柄な魔術師風の女の子だった。
本当に干しキノコでメンバーが増えるとは。
「俺はコメットです。よろしくお願いします」
「ボクはルネ。よろしく」
「干しキノコどうぞ」
「ありがと」
「じゃあ、パーティ登録してきてください」
ルネもまた銅級冒険者のようだ。
少し残念だ。何故なら経験豊富な冒険者のほうがきっと魔法剣プロテウスの良さに気づいてくれるから。
あと最低でも1人はパーティメンバーが欲しい。出来れば熟練の冒険者。
「干しキノコはいらんかえ〜パーティメンバーになれば貰えますよ〜 あっ!」
ルネが残りのキノコも強奪して逃げ去った。
なんてことだ。これでは勧誘が続けられない。
こうなったら最終手段しかない!
俺はやってやるぞ!




