056
ポポ村は本当に小さな村だった、多くても人口百人程度だろう。
家は木造だが、素人が少しマシになった程度の出来栄えだった。
村には活気がなく、壊れたまま放置された何かの道具などが放置されていて貧しさが伺える。
村には特に見張りも居ないようだ。勝手に村の中に入らせてもらうことにする。
「村長さん居ませんかー?」
外に人は見えないが、複数の家の中に人の気配がする。その中の1つの家から老人が出てきた。
「村長は1ヶ月前に村を出ていったよ。ここは捨てられた村なのさ」
「あなたは村長の代理の方ですか?」
「代理だなんて大層なもんじゃない。ただのまとめ役だよ」
「冒険者ギルドの依頼を受けて来たんです。詳細を知ってたら教えて下さい」
「村の南に湖があってね、そこで魚を獲って生活の糧にしていたんだが、1年程前から怪物が出ると噂になってね」
「なるほど」
「皆怖がって漁が出来なくなったんだ。何度か冒険者達が来てくれたけど、駄目だったみたいだね。それで村の若い奴らは村を捨てて出て行っちまったってわけだよ」
「分かりました。怪物を討伐してくるので、後で確認をお願いします!」
コメットは急いで南の湖に向かった。
名も無き湖に到着した。特に異変は見当たらない。
「どうしようか、ハティ?」
「クゥーン……」
「そうか、腹が減ったのか。昼食にしよう!」
湖の周辺にはウサギくらいしか居なかった。大きめのウサギ5匹を取ってきた。
内蔵を取り出し、毛皮を剥いで常備している塩を振る。焚き火を起こし、肉を焼く。ハティに4つ、自分に1つとウサギ肉を分配し食べる。
食べ終わる頃、湖の水面が突然盛り上がった。
「キュアアアアアアアン!」
聞いたことのない雄叫びを上げて、湖の怪物が姿を現した。ネッシーかな?
「鑑定」
【ポッシー】
LV:80
HP:11000
MP:5000
STR:200
VIT:130
DEX:130
AGI:100
INT:50
LUK:130
スキル:水魔法5 水ブレス
全長6メートル。淡水に生息する首長竜の魔物。縄張り意識が高く、凶暴。
惜しい!ポポ村のポッシーだったか!
たしかにこの強さだったら冒険者には厳しいかもしれない。
「右よし!左よし!前方よし!誰も居ないな!」
よーし、上級魔法を撃ってみよう。
「冴ゆる氷雪の力よ フリーズ!」
ポッシーは見事に凍りついた。それだけに留まらず、湖が全て凍りついた。
そしてコメットの立っている場所の近くまで凍りついて止まった。
これは凄い威力だな。広範囲すぎて使い道に困るね。
氷の上を歩いてポッシーの近くまで行く。ポッシーは水面から顔と首を出した状態で凍りついている。
首の根本を少し蹴ると砕けて首から上のオブジェが出来上がった。
これを持って帰って見せれば依頼達成になるだろう。
ポッシーの首を元のサイズに戻ったハティの背中に乗せる。
凍ったままの湖はさすがにマズいよな。そうだ!ちょうどいいからもう1つの上級魔法も試そう!
「凄烈なる暴風の力よ ストーム!ファイア!」
広範囲の竜巻が巻き起こり、そこにファイアを混ぜた。巨大な火柱が立ち昇る。
物凄い光と熱気だ。アースドラゴンの防具が焦げてきたので、魔力を流して再生させる。ちなみに、ハティは遠くで隠れてもらっているから問題ない。
混ぜるな危険ではあるが、湖の氷は溶かすことが出来たようだ。
2つの上級魔法も試せて満足したので、ポポ村に戻った。
「ポポ村のまとめ役さんー!ただ今戻りましたよ!」
「早すぎじゃないかい!?ひいっ!」
そう言って飛び出してきたまとめ役はポッシーの首を見て腰を抜かした。
「ちゃんと討伐してきましたよ。依頼完了の確認をお願いします」
「あ、ああ、確認したよ」
「じゃあ、このポッシーの首は邪魔なので置いていきます。素材を剥いで村のお金にでもして下さい」
「え?今何と仰ったので?」
小さくなったハティを肩に乗せると、コメットは返事をせずにシャトラインに走り出すのであった。




