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 図書室を去り、急いで自室に戻ってきた。


 しかし、上級魔法を試すのは躊躇っていた。


 何故なら、自室が壊れるかもしれないからだ。


 ウォール系のスキルで囲んでから撃つ方法も考えたりしてみたが、酷い結果になる気がしたのでやめた。


 自分が行動することによって、結果的にどうなるのかを予め考える事は重要である。


 うーん、外に行くのは決定だけど、どこがいいかなぁ。自宅のある広大な土地にするか。全く別の土地にするか。せっかくだから冒険者ギルドの依頼でも受けて、討伐のついでに魔法の検証をしようか。


 よし!冒険者ギルドで依頼を探してみよう!


 善は急げとシャトラインに走った。



「こんにち「ワン!」」


 ハティがコメットの挨拶に合わせて吠える。コメットがハティに一晩かけて仕込んだ芸である。しかし周囲の反応はイマイチであった。


 受付に行き尋ねる。


「何か良い依頼はありませんか?それと冒険者登録証の更新をお願いします」


 初めて冒険者登録した際に、職業を無職にしていたことを未だに気にしていたのだ。


「分かりました。では、まずは登録証の更新から行いますね。登録証をお預かりしますが、よろしいですか?」


「はい、どうぞ」


 受付に登録証を渡す。


「コメット様、更新内容は如何いたしますか?」


「職業を冒険者と魔法大学特別顧問にしてください。あとスキルの欄に火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、闇魔法を追記してください」


「!?……畏まりました。少々お待ちください」


 受付さんはちょっと動揺した後、手続きをしてくれたようだ。


 待っている間、暇そうにしていると後ろから複数人が近づいてくる気配がする。


「おい、そこのお前。嘘はいけないよ。見た目からして貴族でもないお前のような奴が、火水風土おまけに闇の魔法まで使えるだなんて」


「俺たち白金級パーティー【デブラジオドラゴン】の優秀な魔術師であり我らがリーダーでもあるデブ・デブラジオ様でも2属性までしか使えないんだぞ!」


「余計なことを言うなトスーダ!だが、そういうことだ。お前ごときが口にしていい嘘ではない。冒険者ギルドの全員に謝罪しろ!」


 デブラジオ……ププー!なんて面白い名字なんだ。デブラジオ。何度でも言いたくなるね。


 名字のせいでニヤニヤしてしまう。


「デブラジオ様!こいつニヤニヤしてますよ!」


「シャトラインの領主であるホソ・デブラジオの息子である僕になんて無礼な。許せん!不敬罪で殺すべきだ!」


 ここの領主はホソ・デブラジオという名前……プフー!細いのか太いのかどっちなんだろうか!?


 太ったデブ・デブラジオが不敬罪とか言い出した。


 うーん、どうしよう。無抵抗で居ればいいのかな?


 非暴力を唱えたマハトマ・ガンディーは言った「()()()()() は全世界を盲目にしているのだ」


 などと考えていると、冒険者ギルドの奥から虎獣人のギルド長が姿を現した。


「何を騒いでいる!冒険者ギルドの中での争いは禁止しているはずだ!」


 さすがギルド長、たまには良い事を言う。


「デブラジオ様、ギルド長のガルググはまずいですぜ。元ミスリル級で腕は確かです」


「チッ!そこのお前、今日はツイてたな!次はないと思えよ!」


 捨て台詞を吐いて冒険者ギルドを出ていくデブ・デブラジオとその取り巻き達。


「助かりましたよ。ギルド長」


「なーに、あいつらにはいつも困ってたんだ。それにコメット様が相手したら、あいつらはあの世行きだからな」


「コメット様はやめてくださいよ」


 なんて話をしていると受付が登録証を持って来た。ギルド長は部屋へ戻って行った。


「お待たせして申し訳ありませんでした」


「あんな騒動があったんじゃ仕方ないですよ」


 登録証を受け取る。内容を確認する。


 名前:コメット

 職業:冒険者、魔法大学特別顧問

 得意武器/スキル:格闘、剣、短剣、槍、弓、斧、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、闇魔法


 よし、無職ではなくなった!


「確認しました。問題ありません」


「あと、良さそうな依頼についての質問でしたね」


「はい、討伐依頼で出来るだけ広くて人が居ない場所の依頼がいいんですけど」


「な、なるほど。探してみますので少々お待ちください」


 10分経っても戻ってこない。ちょっと条件を付けすぎたかな?と思っていると受付が戻ってきた。


「た、大変お待たせしました。申し訳ありません。全ての依頼を探してみたのですが1件だけしか見つけられませんでした」


「見つけられただけでも凄いですよ」


「そう言っていただけると助かります。ただ1点問題がありまして」


「問題とは何ですか?」


「その討伐依頼の難易度はミスリル級パーティ推奨なんです。コメット様は白金級ですし、パーティを組んでいらっしゃらないので、本来は絶対に紹介するべきではない依頼なんですが……」


 なるほど、それでこんなに申し訳なさそうだったのか。


「大丈夫です。いざとなったら逃げ足は速いですし、心配ならギルド長に実力を聞けば分かります」


「そこまで言うのでしたら、止めません。依頼内容の説明を致します。討伐対象は正体不明の湖の怪物です」


 湖の怪物か、プレシオサウルスと戦ったときの事を思い出す。あの時は巨大サメが大量に寄ってきて大変だったなぁ。


「この依頼は1年前からありまして、3つの冒険者パーティが挑みましたが、帰って来ることはありませんでした」


「なるほど、そんな経緯があったんですね。場所はどこですか?」


「場所はシャトラインの南に6日ほど歩くとポポ村があり、ポポ村から更に南に行くと湖があるそうです。ちなみにポポ村からの依頼ですのでポポ村の村長から話を聞くようにして下さい」


「分かりました。では、準備して向かうことにしますね!」


「お待ちください!まだ報酬の話をしておりません」


 報酬よりも早く魔法の実験をしたい。上級魔法はどんな感じなんだろうなー派手なのがいいなーなどと考えていると受付に声をかけられてハッと我に返る。


「……コメット様!報酬の話をちゃんと聞いていましたか?」


「はい!もちろんです!その報酬で問題ありません!じゃあ、行ってきます!」


 コメットは冒険者ギルドを飛び出し、南に向かうのであった。

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