041
あれから、しばらく経ったが何も起こらないので、コメットは魔法の鍛錬に没頭していた。
コメットの自室には鍛冶窯、炭窯がある。鋼鉄のインゴットも大量に作っている。並列魔法で闇魔法や土魔法も常時展開している。
ふー、日課の鍛錬は終わったし、たまには派遣依頼でもこなそうかな?
魔法大学の受付に向かう。
「ベルさん、こんにちは」
「コメット様、こんにちは。何かご用でしょうか?」
「派遣依頼はありますか?」
「はい、1つだけありますが、難易度がとても高い依頼です。いかが致しますか?」
「いいですよ。やります」
「依頼内容はここから西にあるカルトゥス山脈の山頂にある祭壇行っていただき、カルトゥスの宝玉と呼ばれている物を持ってきていただきます」
「分かりました」
「カルトゥスの宝玉はドラゴンが守っているという伝説もありますので、お気をつけてください」
「行ってきます!」
ドラゴンかぁ、ファンタジーと言えばドラゴン。ドラゴンと言えばファンタジーだよな!
これはもう急いで会いに行くしかない。
全力ダッシュでカルトゥス山脈に向かう。雪が積もっているのが見える。かなり寒そうだ。まぁ、氷結無効だから凍るような事はないし、寒さも感じないだろう。
山脈に辿り着いた。そのまま駆け上がる。途中でイエティが居たけど無視だ……え?イエティはちょっと興味あるんですけど!
イエティを観察してみる。
「鑑定」
【イエティ】
LV:40
HP:6000
MP:1500
STR:160
VIT:160
DEX:40
AGI:1
INT:1
LUK:1
スキル:雪崩
全身が毛に覆われ、直立歩行する。イエティは、シェルパ族の言葉で岩を意味する"Yah"と動物を意味する"Teh"が語源である。
脳まで筋肉で出来ていそうなステータスだな。
雪崩は恐いので近寄らないようにしよう。と思っているとイエティに気付かれた!
「ブオオオオオオオオオオ!!」
「こんな雪山でそんな大きな声を出してはいけませんってお婆ちゃんに教わらなかったのか!?脳筋イエティめ!」
ツッコミを入れている最中に雪崩が始まった。
高くジャンプしようとしたが、足が勢いよく雪に突き刺さっただけだった。
「まさかイエティなんかにしてやられるとぅわあああああぁぁぁぁ……」
コメットは麓まで流された。まるで人生ゲームで台風に吹き飛ばされスタートに戻った時のような気持ちになった。
コメットは考えた。ジャンプして山頂に行ってしまえば早くないかと。
山頂目指してジャンプするが、力加減が難しく、山頂を超えてしまった。着地するとそこには……
「イエティさんこんにちは。あっ、その今にも叫びだしそうな口は閉じてもらってもいいですかね?」
「ブオオオオオオオ!!」
コメットは雪崩に流されスタート地点に戻された。
最終的には隠遁のローブを装備してゆっくりと登るのが一番早かった。
「ここが祭壇か」
大きく四角い大理石の台座がある。台座の上には巨大な石がそびえ立っている。巨大な石の中央に宝玉らしきものが埋まっている。
宝玉を見上げて眺めていると、奥の岩だと思っていた物が動き出す。岩で出来たドラゴンだった。それとも岩が表面に付いているだけだろうか。
どちらにしてもロックドラゴンはお怒りのようである。何もしていないのに怒られた。
コメットはイエティに雪崩で何度も流されたことを思い出し、その怒りをロックドラゴンにぶつけることにした。完全にとばっちりである。
「ギャギャアアアアアアン!」
ロックドラゴンは一声叫ぶと首周りの尖った岩を逆立たせた。ロックドラゴンの巨躯がブルっと震えたかと思うと、尖った岩がこちらに射出された。
なんかちょっとカッコイイ技だな。今度機会があれば新技を考えてみようかなどと考えていると。コメットに何度も岩が当たる。
「この程度の岩礫なんて46億年前に経験済みだよ」
物理無効によって全くの無傷だった。
「鑑定」
【ロックドラゴン】
LV:200
HP:35000
MP:14900
STR:400
VIT:1000
DEX:100
AGI:100
INT:200
LUK:30
スキル:土魔法7 岩飛ばし
全長10メートル。岩の装甲に覆われている。岩は土魔法によって生成され、剥がれても復元する。魔法によって強化された岩は数倍の硬さとなる。
へぇ〜土魔法が使えるのか。コメットにベチベチと岩が当たるが気にしない。
倒すのは簡単だけど、テイムしたら自宅の壁の補修とかしてくれそうな気がする。こんな時にセバスチャンが居れば相談するのに。
うーん、と唸っていると岩が飛んで来なくなった。
ロックドラゴンを見ると首周りがキレイに禿げてしまっている。散髪後のプードルかな?
魔力が切れたんだなぁ。オーサを思い出し、可哀想になったのでテイムすることにした。
「仲間にな〜れ!」
ロックドラゴンのアゴをアッパーで叩く。
テイム成功したかな?
「我が主よ、なんなりとご命令を」
しゃべったああああああああああ!
「お前、喋れたのか!?」
「うむ、ここを守護する者として邪魔な自我を消し去っていただけのことだ」
「そんなこと出来るんだ。じゃあ、これからもここを守護するのか?」
「我には新たな主が出来たのだ。新たに命令があればそちらを優先する」
「じゃあ、ここの警備は終了で。自宅はここから北北西の方角にあるからそこに行って欲しい。ヴァンパイアデュークの魔力を見つけたらその場所だから分かると思う」
「分かった。到着後は待機していれば良いのか?」
「ヴァンパイアデュークのセバスチャンから指示を貰って動いてほしい」
「心得た。また会おう」
ロックドラゴンは土に潜って行った。そういう移動手段なんだ。
気を取り直して、なんとかの宝玉を祭壇から取り外す。
「なんとかの宝玉!とったどおおおおおおお!」
よし、誰も居ないからこんな恥ずかしい雄叫びも出来るぜ。と後ろを振り向くと
「ブオオオオオオオ!!」
イエティが目前まで迫っており、投げ飛ばされた。
「こんちくしょう!やり返してやる!」
と起き上がり前方を見ると巨大な雪崩が迫っていた。
コメットのリベンジは叶わなかった。




