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朝、井戸水で体を洗う。朝井戸ってやつだ。今日は1日自由時間なので、首都を散策してみよう。コメットのぶらり旅である。
コメットは自分が神から与えられた使命は眺めることだと思っている。それぞれの時代にどのような事が起こるのかを眺める。
不老不死となった自分が唯一出来る事はそれくらいしかないのだ。ただし、ある程度は好き勝手に楽しむつもりである。
家はレンガ造りでオシャレな物が多い。自宅の参考にしよう。煉瓦を焼き、家を造るのは楽しそうだ。
公園もあるし、上流階級の人々が住む街という雰囲気がするね。
朝の市場もあるようだ。ちょっとぶらりと寄ってみる。
「干し肉売ってるぜ!新鮮な干し肉だぞー!」
「干し魚よ!珍しく入荷したわよー!」
「干した布だよ!よく干してあるよー!」
なんで干した物ばかりなんだ!?流行ってるのか!?干した布って普通じゃないか!
ふう、何故か疲れた。そして干したキノコを購入した。ダシが美味しいんじゃないかと期待している。
首都の中央には立派な建物がある。元老院議事堂があるらしい。
冒険者ギルドが見えたので立ち寄ってみる。掲示板には高ランク冒険者向けの依頼が目立つ。やはり首都には高ランク冒険者が集まるのだろうか?
「おい、邪魔だ。退けよ」
有無を言わさず押されそうになったので、退いてあげた。すると押そうとしていた奴は、バランスを崩して床を転がる。
奴の仲間と思われる男達はそれを見てゲラゲラと笑い出した。
これは不味い流れだ。3秒後にきっと顔を真っ赤にした男が掴みかかってくるに違いない。俺は隠遁のローブを装備した。
「このヤロ!……うぇっ?さっきまでここに居た野郎はどこ行った!?」
こんなに近くに居るのに気付かないとは、この装備は凄いな。隠遁のローブを脱ぐ。
「なっ!お前!どうなってやがる!」
隠遁のローブを着る。
「えええええええ!」
何度か繰り返す。気配を消す度に、目を白黒させている。
こいつのリアクションをずっと見ていたい気分もあるけど、時間の無駄だし次に行こう。
首都ロートスの冒険者ギルドに亡霊が出るという噂が広がったがコメットに知る術はなかった。
次は魔術師ギルドに来てみた。首都の魔術師ギルドだけあって大きく、敷地も広い。東京ドーム4分の1くらいか?分かりにくい。
貴族の方々が出入りしている。
聞いていた通り、魔術師になれるのはほとんどが貴族なんだな。
「こんにちはー」
受付に挨拶する。
「こんにちは、冒険者の方ですか?」
「こんな格好ですけど、魔術師ギルド所属のコメットです」
そう言って登録証を見せる。
「申し訳ありません!コメット様」
「いえいえ、こちらこそ紛らわしくてすみません。様づけもやめてください」
魔術師らしい装備も買わなきゃいけないな。
「ご用件は何でしょうか?コメットさん」
困った。特に要件はない。これではただの仕事の邪魔である。
「……魔術師の派遣依頼などはありますか?」
なんとか捻り出した。
「すみません、今は特にありません」
「そうですか!いやー良かっ……残念だなぁー。お仕事の邪魔したら悪いし退散しますね!」
宿屋へ逃げた。そして裁縫スキルのレベル上げ作業を始めるのだった。




