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 約束の日、魔術師ギルドに行くと魔法大学のファルダさんが居た。相変わらず熊獣人は大きな体格をしている。


「おはようございます。ファルダさん、ララさん」


「「おはようございます」」


「なんとか準備が整いました」


 コメットの持っている杖を見たファルダさんが驚く。


「その杖は凄まじい魔力を秘めているな。3日前には持ってなかった物だね」


「はい、俺が作りました。なかなかに苦労しましたよ」


「君が作ったのか!?これほどの杖が作れるとなると、君の評価を改める必要があるな」


「いえ、評価はそのままで十分です。それよりも新しい魔法を覚えたいですね」


「名誉や地位よりも知識を求めるか。コメット君は研究が向いているな」


「研究!良いですねぇ、新しい魔法を開発したいです」


「十分な環境を用意すると約束するよ。では馬車に乗ろう」


 魔術師ギルドの前に停車した馬車に乗り込む。豪華な造りだ。椅子もふかふかなクッションがついている。


「魔法大学にはどのくらいで着くんですか?」


「シャトラインから東に6日間ほど進むと首都ロートスに着く、ロートスで1日休憩を取り、それから南に6日間ほど進むと魔法大学に着く予定だ」


「分かりました」


 馬車の中は暇だ。何をしようかな。そうだ、裁縫スキルがいいな。


 昼食で馬車が止まっている間に一旦自宅に戻り針と糸と革を取ってくる。


 昼食が終わり、馬車で裁縫をし続ける。


「コメット君、それは何をしているのかな?」


 ファルダさんが質問してくる。


「裁縫スキルの取得とレベル上げです」


「そんなことをする魔術師を初めて見たよ」


 《スキル:裁縫1を取得しました》

 《スキル:裁縫2にアップしました》

 《スキル:裁縫3にアップしました》


 今日はここまでかな。野営の準備をしてから美味しい夕食を取って、就寝した。見張りは護衛の冒険者がしてくれた。


 翌日も同じような1日だった。裁縫スキル上げ→飯→寝るだった。そんな毎日が続き若干飽きて首都まであと1日といった所で問題が発生した。


 盗賊20人が現れた。こちらの護衛は5人しかいない。


「俺達は降参する。抵抗はしない!だから、どうか全員の命を保証してくれ!」


 護衛のリーダーが勝ち目が無いと判断し交渉を始めたようだ。でも、俺は全く逆の考えだった。


 何故なら、盗賊を囮にして草の影に気配を消して潜む存在に気づいていたからだ。


 こいつらの目的は盗賊行為じゃなく暗殺なのだろう。という事は、俺かファルダさんもしくは両方が狙われている。降参しても許されないだろう。


 と思案していると


「何をするぎゃああああああああ」


 護衛リーダーが斬られてしまった。飛び出すタイミングを間違えた!


 馬車の上に立ち仕込杖イチを掲げる。


「火の力よ ファイア」


「水の力よ ウォーター」


 ファイアを広範囲の地面に向けて放ち、ウォーターで自分達の周囲に向けて放つ。盗賊達の地面だけが燃え上がる。


「あちゃちゃちゃ!あっちゃーーーーーーー!」


 コミカルな面白い動きだけど、声だけ聞くとブルース・リ○みたいでカッコイイ。


 火魔法は程々にして止めた。盗賊達はグッタリしている。草影に潜む奴はまだ様子見している。それならこちらから先制攻撃だ。


 仕込杖イチの刀を抜く。刀身が薄っすらと青く光る。魔力を込め刀を振る。草影に隠れる敵に向かって斬撃が飛んでいく。


「ぐっ……!」


 草影からドサッという音が聞こえる。現場を確かめると、人が倒れていた。傷は一つもついていない。鑑定してみるとMPが0となっていた。MPが切れるとこんなことになるのか。


 そして仕込杖イチの便利さに感動した。手加減しなくても相手を気絶させることが出来るのだ。


 と、そんなことはどうでもいい。護衛リーダーの怪我の具合を見に行くと護衛のメンバーが使ったポーションで回復済みだった。


「魔術師様のおかげで助かった。ありがとう」


「いえいえ、怪我が治って良かったですね」


「そうだな。早速だが盗賊を縛ってしまおう」


 護衛達が作業に取り掛かったので馬車に戻る。


「コメット君のおかげで助かったよ。ありがとう」


 ファルダさんが声をかけてくる。


「魔術師ならこの程度誰でも出来ますよ」


「ハハハ、そうだといいんだがな。私はあちらの男を尋問してくる。待っていてくれ」


 ファルダさんが草影の男を尋問した結果、魔法大学の誰かに依頼されたようだ。


 もう既に面倒事の匂いしかしない。まだ着いてないけど、もう帰りたい。


 そうだ、魔法大学に着いたら癒やしのペットをテイムしよう。最近はゴブリンキングやヴァンパイアロードなどの実用面ばかり重視してきた。癒やしが欲しい。


 そんなことを考えていると、いつの間にか出発していた馬車は首都ロートスに着いた。


 盗賊達は衛兵に引き渡した。


 高そうな宿屋の部屋をファルダさんが取ってくれた。もちろん個室である。到着が遅かったので、もう夜だ。夕食を食べてからは各自の部屋に戻った。


 今からどうしようかな?裁縫をするか、一旦シャトライン郊外の自宅に行って様子を見るか、もう寝てしまうか。


 悩んだ挙げ句、寝た。明日は首都ロートスを見て回ろう。

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