033
翌日、魔術師ギルドに行くとララさんと見知らぬ熊獣人が居た。
「おはようございます。コメットさん」
「おはようございます。ララさん。こちらの方は?」
「初めまして。魔法大学のファルダという者です」
「初めまして。コメットです」
「突然の訪問をどうか許してほしい。私も突然下命を拝したのだ」
「特に気にしていません、どのような下命ですか?」
「それは優秀なギルド職員の勧誘だ。もちろん優秀なギルド職員とは君のことだコメット君」
「勧誘って魔法大学にですか?」
「その通りだ」
「コメット君、魔法大学は魔術師ギルドの本部でもあるの。そこに誘われるなんて滅多にない事だし、名誉なことよ」
ララさんが補足説明をしてくれた。魔法大学が魔術師ギルドの本部だとは知らなかった。
「魔法大学では、何をすればいいんですか?」
「基本的には今までと変わらない。魔法の研究、魔術師の派遣、魔法に関連する遺物の調査をしてくれればいい。色位は赤となり、1日あたり1金貨が支給される。」
1金貨といえば日本円に換算すると1日10万円である。もう遊んで暮らせるんじゃなかろうか。ちなみに色位の赤とは冒険者ランクの白金級と同等である。
「魔法大学に行きます!!」
「そうか!それは良かった!」
「準備があるので3日ほどください」
「分かった。私はそれまでこの街に滞在しているので、何かあれば言ってくれ」
色々と準備がある。冒険者ギルドのギルド長から魔道書2冊を貰ったり、ゴブリン達に指示を出さなければいけない。あと、新しい杖とか作ったりしたい。
まずは冒険者ギルドに行く。
「こんにちはーギルド長いる?」
もはやギルド長への貸しはあっても敬意はない。
応接室に行く。
「コメット殿。な、何か御用でしょうか?」
「ギルド長、約束の魔道書を受け取りに来ましたよ」
「も、もう少し待ってくれ!魔道書なんて希少な品はなかなか手に入らないんだ!」
「じゃあ、代わりの品でもいいですよ」
「何が欲しいんだ?魔道書よりも入手難度が低い物にしてくれよ」
「じゃあ、世界樹の枝」
「無理無理!あれはエルフが独占しているし、滅多に出回らないんだぞ」
適当に世界樹の枝とか言ってみたけど、本当にあるんだなぁ。
「じゃあ、魔道書でもいいですけど、今度魔法大学に行くことになったので魔法大学にはない魔道書をお願いします」
「絶対無理だああああああああああ!それなら世界樹の枝のほうがまだ可能性があるぞ」
「世界樹の枝は2日以内でお願いしますね。魔法大学に行く前に杖を作りたいので」
「無理無理むぐっ……オロロロロ」
あぁ、また吐いてしまうとは情けない。ちょっと可哀相なので許してあげることにする。
「無理難題(面倒事)を押し付けられる者の気持ちが分かりましたか?魔道書の件は、無しで良いですよ」
「おお、神よ!なんと慈悲深い!俺を赦すと仰るか!」
なんか神とか言い始めたけど、それほど追い詰められていたのか……。俺は許すけど、ヘレナさんが許すかは関係ないよ、とはさすがに言えないな。
「心を入れ替えて精進するのだぞ」
神っぽくセリフを言い、退室した。
次は、ゴブリン達に指示を出さなきゃ。というわけで、自宅に来た。
畑は更に拡張され、作物の芽が出ていた。作物は小麦だ。今回は、ノーフォーク農法を取り入れようと思う。
ノーフォーク農法とは、小麦→カブ・ジャガイモ→大麦→クローバーという順番で作物を栽培し、地力を回復させつつ行う農法のことである。
これをゴブリンキングに覚えさせる。カブやジャガイモの一部とクローバーは家畜の餌にするようにも教える。
あと、ゴブリンキングに家畜の味の良し悪しを覚えさせた。品種改良をさせる為だ。
そうだ、出来上がった作物や家畜をシャトラインに売るようにしないと倉庫が溢れてしまう。
急いで冒険者ギルドへ向かう、掲示板の依頼を眺める。
【緊急!ヴァンパイアロードの討伐】
パルム教皇国の聖地パルへレムがヴァンパイアロードに襲われている。達成条件:ヴァンパイアロードの討伐。報酬:白金貨50枚。条件:白金級以上の冒険者。
依頼の紙を受付に渡す。
「これ受けます!すぐに行くので受理してください!」
勢いでゴリ押し作戦である。
「は、はい!少々お待ちください!」
受付は急いで手続きをしてくれた。
急がないと間に合わないので、教会に行き解呪の御札を購入する。1枚50金貨もするけど10枚買っておく。
早速1枚使ってサンプソンの指輪(呪いの指輪)を外す。あとは弱化のネックレスも外す。
街から出て、誰にも見られない場所で木を切って丸太にする。パルへレムの方角へ投げ、ジャンプしてその丸太に乗る。
一度やってみたかったのだ。しかし、実際にそんな事は不可能である。丸太は軽く、どんどん失速していく。
そこで風魔法によって強制的に飛ばす。意地でもこのスタイルを維持するのだ。
パルへレ厶に着いた。街はあちこちで火の手が上がっており、人の気配はもうなくなっている。
街の真ん中に城がある。きっとあそこに居るんだろう。分かりやすくて助かる。
空中を飛んで、城の頂上の窓から入る。ヴァンパイアロードが見える。鑑定してみる。
【ヴァンパイアロード】
LV:100
HP:16000
MP:15500
STR:160
VIT:50
DEX:100
AGI:250
INT:300
LUK:50
スキル:闇魔法6
生命の根源である血を吸い、栄養源とする不死の存在。ヴァンパイアの進化した種族。光、聖属性攻撃に弱い。
「こんにちはー」
「誰だ!?お、お前は何だ……?化け物め!」
勝手に驚いて勝手にビビり始めたヴァンパイアロード。
あ、弱化のネックレスするの忘れてた。
「ヴァンパイアロードに化け物って言われると、さすがに傷付くんですけど……」
「ま、待て!近づくな!」
無視して近づいていく。目の前まで行き
「仲間にな〜れ!」
ヴァンパイアロードのこめかみを右フックで叩く。
するとヴァンパイアロードは白目をむいて倒れてしまった。
あとはヴァンパイアロードが生み出した魔物を一掃して完了だ。
ヴァンパイアロードを担いで行きで使った丸太を投げ、郊外の自宅に帰った。
ヴァンパイアロードを置いて、シャトラインの冒険者ギルドに行く。
冒険者ギルドでは、討伐が早過ぎて物理的に不可能とか言われたけど、ギルド長に丁寧にお願いをすると認められた。討伐はしてないけど街は救ったし、OKでしょう。
自宅に戻り、ヴァンパイアロードを起こす。
「御主人様、何なりとお申し付け下さい」
素晴らしい執事となった。
「御主人様は微妙だから、コメットでいいよ。ところで名前を聞いてなかったね」
「私の名前は人間に広く知れ渡っております。私が名乗ることでコメット様にご迷惑をおかけする事になります。恐縮ですが名付けをお願いしたく存じます」
「じゃあ、セバスチャンで」
「ありがとうございます!命を懸けて尽くします!」
「それでセバスチャンにお願いしたいのは、ここで作った作物や家畜をシャトラインに売って欲しいんだ。どこの商人と取引するかは任せるし、価格設定も安めでいいよ」
「承知しました。個人的な質問で恐縮ですが、一つだけ質問しても宜しいでしょうか?」
「いいよ」
「私は血を吸わないと弱体化していくのですが、何か良い方法はないでしょうか?」
これは難しい問題だ。この時代、血が欲しいなんて言えない。
「人以外の血でもいい?」
「出来れば人が良いですが、どうしても無理な場合は動物でも大丈夫です」
「じゃあ、人以外の血を吸うなら自由にしていいよ」
「承知しました」
「必要な物があればこのお金で買ってくれ。俺はしばらく魔法大学に行くから、後は頼むよ」
10白金貨を渡す。
あとは杖の作成だ!




