表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/254

027

 翌朝、南に向かって歩き3時間程経った。


 草原が広がっている。4キロメートルほど先にハイエナのような魔物の群れがこちらに向かって来ているのが見える。


 群れは50匹以上居るようだ。


「50匹以上の魔物が南からこちらに向かって来ています」


 レイナルドとヘレナに伝える。


「たしかに、数までは分からなかったが群れが見えるね」


「目がいいわね」


「コメット君ならこんな時どうする?」


 レイナルドから試すような視線を感じる。


 ならば、智略に富んだ戦略を立案してあげようじゃないか。


 コメットは深く考えるポーズをした後、顔を上げて告げる。


「右ストレートパンチでぶっ飛ばす」


「「……」」


 この空気は以前味わったことがある。ギャグがスベった時のあの感じだ。


「いやいや、冗談ですよ!いやだなぁ!アハハハハ!」


 そんなことを言いながらおもむろにネックレスを外す。


「あ、あれは何ですか!?」


 明後日の方向を指差して2人の視線をそちらに向けさせる。


 神速で魔物の群れに到達し、右ストレートパンチをお見舞いする。群れは跡形も無く消えた。


 そして神速で戻ってくると何事も無かったかのように振る舞う。


「あ、気のせいでした。そういえば、群れはどこかに行ったようですね、せっかく作戦を立てたのに残念だなーハハハ」


 2人は疑わしい者を見る目をしているが、本当に群れは消えたので不思議そうにしている。


「コメット君、戦略はもっと真面目に考えた方がいいよ」


「ですよねー」


 そのまま廃墟の要塞に向かって歩き続けた。



「ここが廃墟になった要塞ですか」


 分厚い壁に囲まれた建物が見える。


 門は壊されてボロボロになっている。


 門を通ると、土の中からゾンビやグールが這い出てくる。


 だが今は昼間で直射日光に晒されるゾンビ達。


 めっちゃ弱ってる。


「コメット君、ヘレナ!今がチャンスだ!」


 レイナルドが剣で斬りつける。ゾンビ達は弱ってるが生半可な物理攻撃では倒れない。


「火の力よ 敵を貫け ファイアアロー!」


 ゾンビはヘレナの魔法により全身火だるまになって倒れた。火に弱いらしい。


 そして魔法感知8になったコメットにはヘレナの魔力の動きが全て見えていた。


 最初、魔力が手のひらに集まる。詠唱を始めると手のひらに集まった魔力の中心に穴が開き、穴を中心にして赤い魔力が広がっていったように見えた。そして、火の矢へと変わったのだ。


 あの穴は何だろうか?赤い色は火属性を表しているのだろうか?


「もしかして魔法とは洞窟に映ったイデアの影かもしれない……」


 突然何を言ってるんだこいつという目で見てくるヘレナ。


 ハッ、そろそろ手伝わないとファイアアローの矛先がこちらに向く気がする!


 コメットは石を拾い集める。振りかぶって投げる。敵の頭に当たる。一投一殺である。


 あっという間に敵は全滅した。


「ふう、ゾンビは臭いますね」


「レイナルド、あなた少し臭うわよ」


「おーい!その距離感は傷つくぞ!」


 臭うレイナルドが追いかけてくる。


「ゾンビより怖い!」


「ひいいいい」


 建物の入り口に辿り着いた。扉を開けると、中は薄暗い。


「相手はヴァンパイアだ。慎重に進むぞ!」


 まだ少し臭うレイナルドが言う。


 慎重に進む。ゾンビやグールが襲ってくるが、コメットの石投げでヘッドショットされる。


 うーん、ちょっと石が足りなくなってきたかも。


 何度となくゾンビとグールに襲われ石が尽きてしまった頃、ようやくボス部屋に辿り着いたようだ。


「ようこそ、我が城へ」


 マントとタキシードとオールバックの血色の悪い男が居た。絵に描いたようなヴァンパイアである。


 鑑定してみる。


【ヴァンパイア】

 LV:40

 HP:6600

 MP:3500

 STR:110

 VIT:50

 DEX:50

 AGI:10

 INT:100

 LUK:30

 スキル:闇魔法5

 生命の根源である血を吸い、栄養源とする不死の存在。光、聖属性攻撃に弱い。


「歓迎してくれているみたいですね」


「パーティーでも始まるのかもな」


「あたしの火魔法で飾ってあげるわ」


 ヴァンパイアは余裕の表情のまま言う。


「では、始めるとしようか!狂乱の宴を!」


 ヴァンパイアの周りの地面に魔法陣が浮かび上がり、何かが召喚される。


「悪魔召喚だと!?」


 へぇ、あれが悪魔なんだ。頭は山羊っぽくて羽が生えてて全身が緑だ。


 全部で6体ほど出てきた。


「くっ!数が多いな」


 既に戦い始めたレイナルドが苦戦している。


「じゃあ、倒しますねー……あ!」


 とは言ってみたが、もう石がない事を思い出した。


「あ!って何よ!何かあるなら早くやって!」


 仕方がない、こうなったら魔法を使うしかない!一度も試してないけどなんとかなるっしょ!


 手のひらに魔力を集める。


「火の力よ 敵を貫け ファイアアロー!」


 INT999の火の矢である。矢というより槍のサイズで超高熱を発している。それが撃ち出されヴァンパイアを貫いた。


 《スキル:火魔法1を取得しました》


「ギャアアアアアアアア」


 ヴァンパイアは灰と魔石になった。


 悪魔達は召喚主が死んだ為、消滅した。


「コメット君やるじゃないか!」


「やったわね!」


 レイナルドはその灰を集める。討伐証明になるらしい。


 ヘレナは宝箱を探している。が、見つからなかったようだ。


 宝箱は無かったが、価値のありそうな調度品などを回収していくヘレナ。


 ゾンビとグールの討伐証明はアゴの骨だ。


 死体は焼いてアゴだけ集める。こちらはレイナルド。


 自分はどうしようかと思いながら歩いていると本棚を見つけた。


 魔道書でも見つからないかなっと探していると分厚い本を見つけた。背表紙は古ぼけて読めない。


 取ろうとして引っ張るとガコッと音がして本棚が横にスライドする。裏には隠し通路があった。


 隠し通路を進むと武器庫があった。鉄の剣や槍、弓などずらっと並んでいる。


 奥の方には檻で囲まれた怪しい魔力を帯びた剣や槍が保管された場所があった。


 うーん、こんな武器が発見されても争いしか生まないだろうなぁ。


 よし!見なかったことにしよう!


 一般人であれば魔法剣を欲しがるところだが、コメットの興味は魔法を撃つことに集中しているのだ。


 急いで戻りつつ石工スキルで通路を封鎖する。本棚を戻して、何食わぬ顔で合流する。


「ここは何もない場所ですね!」


「ヴァンパイアがお宝を貯め込んでいれば大儲けだったんだけどね」


「一応価値のありそうな物は集め終わったわ!弟子よ、持ちなさい」


「了解であります!」


 大量の荷物を持って帰ることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
洞窟とか、影とか、イディアとか、饗宴とかって、あなたはプラトンですか?。あ、そういえば、パピプラトンさんでしたね。失礼しました。それとなく、内容が深くて、びっくりしました。今後も、ご活躍、楽しみにして…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ