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 歩き続けているが、商人の馬車が通ったら便乗させてもらう作戦だ。


 半日歩くと日が暮れてきた。今日はここで野宿をするらしい。


 何もない草原で野宿か、食事はどうするのだろう?


「食事はどうするんですか?」


「街で準備した干し肉とかを食べるよ。もしかして準備してないのかい?」


「あたしの肉は渡さないわよ!」


 コメットは基本的に何も食べなくても問題はない。腹は減るが、餓死することはない。それに必要なら現地調達出来る。


 故に保存食を買うという発想は無かったのである。


「準備はしてないですが、今から用意は出来ますよ」


 そう言って、とある場所に向かって走る。レイナルドからすると一瞬でコメットが消えたようにも見えただろう。


 数秒後、片手に猪を持ったコメットが姿を現す。


「「は?」」


 見事にハモるレイナルドとヘレナの声だった。


 猪を短剣でさっと捌き串に挿す、焚き火で焼き上げる。あとは塩で味を整えて、これは絶対美味いぞ。


 ハッとして周りを見ると、すぐ近くまでレイナルドとヘレナが近寄っている。


「もしかして欲しいんですか?」


 ゴクリ


「欲しいんでぇすぅかぁ〜?」


 目の前で串をゆらゆらと動かす。


 ハッ、と気付くと空中にファイアボールが浮かんでいる。


 ヘレナの目がマジだ。


 コメットはスライディング土下座をしつつ肉を献上する。


「この肉串をどうぞお納めください!」


 悪鬼のようなヘレナさんは菩薩となり肉を食べ始める。


「ふう、レイナルドさんも好きなだけどうぞ」


 猪は美味しかった。夜は交代で見張りをした。



 次の日、日が昇ると出発した。しばらく歩くと運良く馬車が通りかかった。


 交渉の結果、乗せて貰えた。猪の毛皮は商人にプレゼントした。


 順調に進んで行き、昼を過ぎて3時間経った頃、馬車が急停車する。


 前と後ろに5人ずつ薄汚れた男達がいる。それぞれ質の悪い武器を持っている。


 レイナルドが指示を出す。


「俺が前方をなんとかする。後方はコメット君とヘレナでなんとかしてくれ」


「了解!」


「分かったわ!」


 盗賊達は弱そうだから、なんとでもなるな。むしろレイナルドとヘレナのお手並み拝見といこうかな。


 とりあえず、戦うフリをしつつ様子を見る。


 レイナルドは一対多の戦いに慣れているようだ。危なげなく相手を倒していく。器用に殺さずに戦闘不能にしている。


 ヘレナは距離を取りながらファイアアローで盗賊達の脚を正確に撃ち抜いている。


 俺は盗賊のヘイトを稼ぎつつ、のらりくらりと避け続ける。ヘレナ待ち状態である。


「遊んでないで真面目に戦いなさいよ!」


 怒られてしまった。仕方がないので倒すことにする。


 念願の「後ろに瞬間移動しての首トン」をやってみた結果、首を飛ばさずに上手くいった!


 ステータス100分の1なら大丈夫なようだ。


「終わりましたね、ヘレナさん」


「なんか今物凄い動きしなかった?」


「いいえ、気のせいですよ」


 レイナルドも終わってこちらに走って来る。


「大丈夫だったか?」


「何も問題ありません。ヘレナさんの魔法で一掃出来ました。さすがですね」


「煽てても何も出ないわよ」


 盗賊達の処分はどうするんだろう?と思っていると、商人の馬車で引き摺って行って犯罪者として引き渡すらしい。


 また馬車に乗せてもらい、日が沈む前に野営となった。


「コメット君……」


 チラッ


「コメット、あたしの弟子になったのよね?」


 チラッ


 2人が何かを期待する目でこちらを見てくる。


「あーもう分かりましたよ」


 40秒でオークを獲って来た、オークは美味しいらしい。


「おお!オークか!」


 レイナルドはオークが好きなようだ。


「解体をお願いします」


「ああ、任せてくれ」


 焚き火の準備をしていると、商人と護衛も寄って来た。


「あのー、私共にも」


「いいですよ」


「神!」


 ヘレナは簡単に譲ることにブツブツ言っていたが気にしないことにする。


 馬車にも乗せてもらったし、オークは大きくて3人では食べ切れないから丁度いいのだ。


 翌日、出発してから7時間程度経った頃、馬車から降りた。ここからは徒歩だ。


 少し歩くと日が暮れた。野営の準備も終わったのでヘレナに質問してみる。


「ヘレナさん、魔力操作ってどうやるんですか?」


「報酬がまだだけど、いいわ。教えてあげる。魔術の才能がある人の体内には魔法の行使に十分な魔力が存在しているの」


「ふむふむ」


「その魔力を操作して適切な量を体外に出して維持し、呪文によって属性や性質を付与することで魔法になると言われているわ」


「そんな仕組みだったんですね」


「魔力を操作する方法は、まず認識することが大事。次に動かす練習ね」


「認識する方法はどうするんですか?」


「手を出して」


 右手を出す。ヘレナは右手を掴むと集中している。


 なんとなく温かい膜のような物が右手から腕に広がってきた。


「温かい何かが腕のほうまで覆われているような……?」


「正解よ。それが魔力。今度は自分の腕に集中してみて。本来は魔力を操作して体外に出すのだけど、コメットはもう体外に魔力が出ているようね」


 無意識に魔力を纏っているので認識出来なかったが、今はヘレナの魔力との境界付近に自分の魔力を感じる事が出来る。


 自分の魔力を認識出来ると、全身に魔力が巡っていることも分かった。


 《スキル:魔力感知1を取得しました》


「自分の魔力を認識出来ました」


「それじゃあ、次は操作ね。魔力を認識しながら動かすイメージを強く念じてみて」


 自分の身体に纏っている魔力を体内に留めるイメージを念じてみる。


 すると魔力は体内に留まり、体内の魔力は濃さを増したように感じる。


 《スキル:魔力操作1を取得しました》


「上手くいったようね」


「念願の魔法に一歩近づくことが出来ました!ありがとうございます!師匠!」


「そんなことくらいでおおげさね」


「ただの残念な人じゃなかったんですね!」


 ピキッと音がしたような気がする。


「ついでに、実戦も経験してみましょ。火の力よ 敵を貫け ファイアアロー!」


「ぎゃあああああ」


 プスン。コメットの体に当たって消えるファイアアロー。


「えええ!どうなってるのよ!」


 魔法無効が働いたっぽい。誤魔化さなきゃ不味い気がする。


「このマントは耐火性能が高いんですよ!」


 マントを広げて見せると、穴が開いている。


「……あ、そうだ夕食を狩って来ますね!」


 素早く走り去るコメット。


「こら!待ちなさい!」


 その後、不思議な力で防いだという謎のゴリ押しで言い訳して、呆れた目で見られたコメットであった。


 コメットは夜の見張りを買って出た。何故なら魔力操作の練習をしたいから。


 コメットは過酷な環境を経験した為、睡眠なしでも問題はない。ちょっと眠気を感じる程度だ。


 高いMPとINTによって、精密な魔力操作をし続けることが出来る。そして操作した魔力を感知することで魔力感知のスキルも上がる。


 新しく何かが出来るようになると楽しくなってしまうものである。


 コメットは夢中で一晩中魔力操作を行った結果


 《スキル:魔力感知8を取得しました》


 《スキル:魔力操作8を取得しました》


 コメットは起きている間は魔力操作をし続ける事にした。


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