025
ベッドに寝転がりながら考える。
バルギはまだ研究に没頭している頃だろう。魔法を教えて貰いたいが、断られる可能性が高そうだ。
うーん、どうしようなどと考えながらゴロゴロしているとコンッコンッとノックの音がする。
「どなたですか?」
ドア越しに声をかける。
「ミミです。冒険者ギルドの方がコメットさんに用があるみたいです」
ああ、冒険者ギルドか。
「分かりました。今行きます」
宿屋のロビーまで行くと冒険者風の男が立っていた。
「君がコメットか?」
「名前を聞く時はまず名乗るべきでは?」
「すまない。俺はレイナルド。白金級冒険者をしている」
白金級!たしか、シャトラインの街のほとんどの冒険者が金級以下だったはずだ。
「コメットと申します。銅級冒険者です」
「ああ、君のその冒険者ランクについて、ギルド長から依頼を受けたんだよ」
「冒険者ランクが決まったと伝えに来た、と予想してたのですが違うのですか?」
「ああ、違う。冒険者ランクを決める為に、君には指名依頼を受けて貰いたいんだ」
冒険者ランクを伝えに来たわけじゃないのか。面倒だなぁ。身分証だけで満足なんだけど。
「何故、そのようなことをする必要があるんです?こちらにはメリットがないのですが」
「メリットか。依頼が上手くいけば報酬が出るし、冒険者ランクも飛び級で白金級が与えられる」
「どちらも、俺にはメリットと感じないですね。断ってもいいですか?」
レイナルドは困ったような顔をしている。するとレイナルドの後ろから魔術師風の女性が現れた。
「こんな奴、魔法を一発ぶちかまして素直にさせればいいのよ!」
物騒なことを言い出した。
「待て!早まるなヘレナ!」
レイナルドは詠唱を始めたヘレナを止める。
む!魔術師なのか!魔法を教えて貰えるかもしれない!
「その依頼受けましょう!ただし、報酬として魔法を教えてください!」
「「え?」」
コメットの突然の変わり様に2人とも驚き固まる。
「よし、そうと決まったら準備をして来ます!」
コメットは自室に戻って行った。
レイナルドはヘレナに親指を立てて言う。
「ヘレナ、グッジョブ!」
「えええええええ!」
ヘレナに弟子が出来た。
その後、なんやかんやあって、ギルドからの報酬をヘレナさんに渡すことを条件に、魔法を教えて貰うことになった。
「それで、依頼とは何ですか?」
「俺とヘレナとコメット君でパーティを組んで、ヴァンパイア退治をしに行くのさ」
「ヴァンパイアって、人間の血を吸い日光に弱く聖属性攻撃に弱いアレですか?」
「や、やけに詳しいね。そのヴァンパイアだよ」
「なるほど、場所はどこですか?」
「ここから西南に行った場所に、廃墟になった要塞があるんだが、そこに住み着いたらしくてね」
「移動手段は?まさか、魔法でひとっ飛びですか!?」
キラキラした目でヘレナを見る。
「出来るわけないでしょ!あたしは火魔法が得意で風魔法は苦手なのよ!そもそも複数人で飛ぶ魔法なんて不可能よ!」
残念な人を見る目でヘレナを見る。
「……こいつ燃やしてもいい?」
遊びすぎたので土下座スタイルで謝る。
「ごめんなさい」
「次やったら本当に燃やすわよ!」
そう言いながらヘレナは腕を組み背中を向ける。
まぁ、魔法無効だから燃えないだろうけどね。と思いつつ立ち上がると
「現地の近くまで商人の馬車に乗せてもらうしかないだろうね」
と今更真面目な回答をするレイナルドが居た。
「多分、何事も無ければ馬車で3日間、その後徒歩で1日で着くよ」
俺が走れば40分くらいかな?
今回はのんびり行くことにする。宿屋は、あと1泊あるけどチェックアウトした。
「準備はいいかい?」
「いいですよ」
「いいわよ」
西門から徒歩で出発した。途中で馬車に出会えるよう祈りながら。




