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 急いで宿に戻った俺達はさっそく話し合いを行うことにした。


「まず、現状を整理してみましょう。第一王子バルトルトはロスキタスを手に入れる為に動いていたようです。しかし、思惑通りにはいかず、彼はまだ諦めていないと思います。次はどんな手を使ってくるのか分かりませんが、何かしらのアクションがあると思っていたほうがいいでしょう。これについてどう思いますか?」


 俺はロスキタスに意見を求める。


「そうだな、恐らくは何らかの嫌がらせや妨害があるだろう。噂では、あの男は軍や警察を掌握しているらしい。それにオリハルコン級冒険者とも何らかの契約をしているようだ。警察、軍、冒険者が追手として差し向けられると思っていたほうがいいだろう」


「はぁ、仕方がないですね。本当はもっと魔法国を観光してからにしたかったんですが、計画を早めることにします」


「計画とは?」


「はい、今からエデンダンジョンに向かおうと思います!」


「明日ではなく、今から?」


「そうです。今は幸いなことに夜なので、闇に紛れて城壁を越えれば多分誰にもバレずに外に出られます。エデンダンジョンへの入場は国王から許可を貰っていますから、今すぐエデンダンジョンに向かえばダンジョンに入ることが出来ます。場所は以前マリアさんから聞いて知っています」


 国王からの許可は既に得ている。ダンジョンに入ってしまっても問題ないだろう。十分にレベルが上がるまでダンジョンに篭もってしまえばいい。さすがに追手が来たとしてもダンジョンの深部までは来られないだろう。


「ふむ、場所は分かるが……エデンダンジョンで何をするのだ?」


「もちろん、レベル上げです!」


 ロスキタスの問いに俺は親指を立てて答える。計画通りじゃないけれど、これでやっとレベル上げが出来る。


「なるほど、たしかに鍛錬は必要だな」


「はい、俺達はまだまだ弱いです。俺だけなら誰にも負ける気はしないですが、周囲を守る為には力が足りません。特にあの黒ローブの男の悪巧みを完封出来るくらいには力が必要です」


 そう、倒すだけなら恐らく今の俺でも出来るだろう。しかし、俺の周囲を守りながら戦ったら被害0とはいかない。俺だけが生き残っても無意味なのだ。


「という訳で準備をして出発しましょう!」


 俺はマリアさんに手紙を出しておくことにした。マリアさんルート君に何かあればエデンダンジョンに報せを出すように頼んでおいたのだ。




「ここがエデンダンジョン入り口ですか」


 既に夜が明けて早朝だ。


 トンネルを抜けてすぐに真っ直ぐに伸びた道の先に塔が見える。俺はその塔を見て一瞬驚いた。


「!?……いや、塔なんて大抵似たデザインですよねぇ……それにめっちゃ斜めですし」


 エデンダンジョンは俺のよく知っているダンジョンに似ていた。正直言って激似である。だが、よくあるデザインだし、ピサの斜塔のように斜めに建っている点も異なる。なんとなく1階部分の造りも異なる。俺の知っているダンジョンとは別物だろう。


「どうかしたか?」


「いえ、知っているダンジョンに似てると思ったんですが、多分似ているだけです。お騒がせしました」


 エデンダンジョンの入口の両脇には警備が4人立っている。


「ここは国王から許可されし者のみ通ることを許されている! 代表者のみ許可証を持ってこい!」


 貴重なダンジョンだ。野盗が襲う事もあるのだろう。かなり警戒されている。


「ロスキタスはここで待っていてください……」


 俺が代表者として進み出た。許可証は既に国王から貰っている。俺が進み出て警備兵に許可証を渡す。


「ふむ……たしかに確認した。通って良し!」


 どうやら無事に確認が済んだようだ。俺達は先に進むことを許可されエデンダンジョンに入ることに成功した。



「やっと来たか……待っておったぞ!」


 ダンジョンに入った直後、声が掛けられた。その声に覚えがあった俺はトラブルの予感がして額に手を当てた。


「なんでここに居るんですか、シャーリンちゃん」


 柱の影から現れたのは予想通りシャーリンちゃんだった。魔法国に入ってから姿を見ていなかったので、また何かコソコソと魔導研究でもしているのかと思っていた。が、何故かエデンダンジョンに居た。


「わたしが誘ったんですよ!」


 シャーリンちゃんと同じく柱の影から出てきたのは宮廷付与術師であり、俺の師匠であるティナだった。


「なんだ、師匠も居るということは魔石集めですか」


「なんだ、とはなんですかー! もっと驚いてよ!」


 付与術には魔石が必要だ。必須と言っても過言ではない。そして質の良い魔石を得る為にエデンダンジョンに行く事もあると以前師匠から聞いた事があった。


「今はそれどころじゃないんですよ。実は……」


 俺はこれまでの経緯を説明した。



「なるほど、そんな事があったのじゃな。そうであれば、さっさとダンジョンに入った方がいいじゃろう」


「え? ここはダンジョンの中ではないんですか?」


 番人の居る入口は通り抜けたはずだ。


「ここはエデンダンジョンの周囲に人工的に作った建物なのよ。ここには武器防具屋や宿屋もあるし、魔石買取屋なんかもあるのよ!」


 ビシッと指を立てて説明をするティナ。


「なるほど、そうだったんですね。じゃあ、シャーリンちゃんの忠告通り早くダンジョンに入りましょう」


 俺が言うと全員が肯いて全員で奥へと進む。


 少し進むと中央に塔が存在し、扉があった。本当のダンジョン入口である扉を開くと――草原が広がっていた。


 俺が一歩踏み出すと


『おかえりなさい』


 声が聞こえたと思った瞬間、別の空間に瞬間移動していたのだった。

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