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「あれはたしか……冒険者ギルドで俺とロスキタスに絡んできたオリハルコン級冒険者パーティー、とルート君の兄でしたっけ。名前は長すぎて忘れましたけど」


「第一王子のバルトルトだな」


「あ〜、ルート君を助けたのに文句を言ってきた感じ悪い人ですか。よく覚えてますねロスキタスは」


 その集団からは強烈な殺気が漏れ出ている。俺に対して恨みでもあるのだろうか。それで第一王子に何か良からぬ相談事でもしているのかもしれない。


「んー、なんか1人だけ違和感がありますね」


「うむ、あの黒ローブはかなり、()()


 俺が違和感を感じた黒ローブの人物はロスキタスも同意見だったようだ。全く殺気が感じられない。そこで試しに魔力感知を行ってみる。


「!?」


 黒ローブの人物からは驚くほどの魔力を感じる。そして微かに嫌な感覚も覚える。今までの経験からくる強敵の予感のようなものを。


「これは多分、勝てませんね」


「コメット様でも敵わないと?」


「いや、勝利条件次第です。単純な対決による勝負であれば負けません。ですが、街の人間を盾にされて1人の犠牲者も出さない事が勝利条件だとしたら、確実に負けます」


 俺がレベル最大だった頃ならどんな状況でも力技で切り抜けることが出来た。だが、今はどうしても限界がある。


「これは本格的にレベルアップを検討しないといけないですね」


 俺とロスキタスがそんな会話をしていると、よく知った顔の2人がこちらに近づいてくるのが見えた。


「コメットさんだ!」


「コメット様、パーティーを楽しまれていますか?」


 マリアさんとルート君だ。


「こんばんは。マリアさん、ルート君。う〜ん、皆さん怒涛のような挨拶で楽しいよりも疲れました。着慣れない衣装も原因の一つかもしれませんが」


 少し正直すぎるかなと思いながらも今の俺の率直な感想を伝えた。


「私も慣れない内は大変でした」


「僕はもう平気だよ! もうパーティーなんてたくさん出たことあるからね!」


 ルート君は自慢げだ。


「さすがは王族のルート君ですね。あ、ルート様と呼んだほうがいいですかね?」


「今まで通りにしてよ!」


「あはは、じゃあ今まで通りにします」


 そんな他愛もない事を話しているといつの間にかすぐ近くまで来ていた人物が話しかけてきた。


「コメットとやら、何故第一王子である俺のところに挨拶に来ず、第三王子であるルートに挨拶をしているのだ!」


 それはバルトルトだった。そして、その隣には例の黒ローブの男が立っていた。


 しまったな、油断した。俺がマリアさんとルート君に気を取られている間に近づいたのだろう。


「えぇーっと……」


 ここで答えを間違えると不敬だとかイチャモンをつけられて投獄されたりするんだろうか。


 俺が返答に悩んでいるとルート君が口を開く。


「兄様、僕がコメットさんの所に挨拶しに来たんです! コメットさんは何も悪くありません」


「お前は黙っていろ! 俺は次期国王だぞ! おい、ブルーノ!」


 ブルーノと呼ばれた黒ローブはボソボソと何かを呟くと杖を振った。


 するとルート君の口が石化し、開けられなくなる。


「んー! んーー!!」


 マリアさんがルート君を後ろに隠す。さすがにこれ以上は見逃せない。俺が解決するしかない。


「申し訳ありませんでした。ご存知の通り、私は旅人ですのでこの国の礼儀作法には疎いのです」


「ふん、知らなかったでは済まないのだ。どう責任を取るつもりだ?」


「責任、ですか。金銭をお支払いすれば許してもらえますか?」


「俺が金ごときを欲しがっているとでも思うのか?」


「では、何を要求されるのでしょうか?」


「俺は今戦力を集めている。帝国との戦争に勝つための戦力だ。何が言いたいか分かるよな?」


「いやぁ、私は弱いので役に立ちませんよ」


 俺は王族に対して弱いという印象を与えてある。実力を見破られない限り大丈夫だろう。


「誰がお前の事だと言った? お前の従者を俺に寄越せと言っているのだ」


 元傭兵王ロスキタスが目的だったか。ロスキタスの事をバルトルトに教えたのは先程のオリハルコン級冒険者達かもしれないな。ロスキタスは何かと頼れる奴だし、こんな訳のわからない理由で渡す訳にはいかない。


 しかし、バルトルトの性格的に半端な条件では納得しなさそうだ。さて、どう乗り切るべきか。俺は考えを巡らせる。


 従者ロスキタスを渡すのは損失が大きい。だが、ここで反抗し問題となれば、最悪関係者全員が処刑か追放されてしまうだろう。


 なんかもう面倒だ、ここで暴れて全てを投げ捨てて国を出るって手も……いや、さすがにないな。


 いや待てよ。暴れなくても有耶無耶に出来る方法が無くはない。こんな横暴を許す訳にはいかない。


 こんなパーティーは滅茶苦茶にしてやろうか。

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