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 ――数日後。歓迎パーティー当日。


「特にやることもなく当日になってしまった……夕暮れが眩しいな」


 いや、やれることは全てやった。それが予想以上に早く済んでしまい、以降は付与術師であるティナの手伝いをさせられたり、その結果割と大金を手に入れたり、魔法大学で見た魔法を試していたらあっという間に当日だった。ちなみに魔法大学では急ピッチで光の塔建設が続けられているらしい。


 今は夕方だ。


「コメット様、ロスキタス様、お迎えに参りました」


 王宮の執事が一礼し、宿の入口に止まっている魔道馬車へ促すような動作をする。


「お迎えありがとうございます」


 俺はそう応えると馬車に乗り込む。この魔道馬車はフライの魔法が付与されているらしい。馬車が走り出すが振動は皆無だ。当たり前といえば当たり前だが、ちょっと感動してしまう。窓からの流れる景色を楽しみながらゆっくりしよう。



「到着致しました」


 ぼんやりと外を眺めていたら、いつの間にか宮廷に到着していた。周囲には他の参加者だろうか、貴族らしき人々が馬車から降りて歩いていたりする。


「コメット様、ロスキタス様は今回の主賓ですのでこちらです」


 参加者とは別の入口へ案内された。


 あまり目立ちたくはないんだけど、ここでモメても仕方がないか。大人しくついていく事にする。


 案内された部屋で待機していると名前を呼ばれてまた移動だ。次はパーティー会場らしい。


 会場の裏を通って、何やら演説しているような声の方に近づいていく。


「ここで立って待機していて下さい」


 そして舞台裏の魔法陣がある場所に立たされた。魔法陣は魔法大学で見た転移用魔法陣に似ている。


 演説が聞こえてくる。


「……そこで颯爽と現れた英雄達によって第三王子ルート・ベネディクトゥス・アウグストゥス・フォン・ロディニア様が救い出されたのです!」


 会場には歓声が上がり、拍手も聞こえてきた。


 この空気の中に入っていくのか。しんどい。


「では、早速登場していただきましょう! 英雄コメットと従者ロスキタスです!」


 そう聞こえた瞬間、執事が魔力を込めたのか魔法陣が発動し俺とロスキタスは転移した。


「うお、まぶしっ」


 突然目の前が真っ白になる。明かりで照らされているらしい。


「……」


 目が慣れてくると自分が置かれた状況が見えてくる。とても広いパーティー会場には多くのテーブルが並び豪華な料理が盛られている。眼前には貴族風の人々が居り、こちらに注目している。


「あ、どうも。コメットと申します」


 何かを言わないといけないのかと思い適当な挨拶をしてしまう。そんな挨拶でいいのか分からないが、一瞬の沈黙の後に拍手と歓声が上がった。反応からすると本来はここで英雄譚でも語るのが通例なのかもしれないが、それを俺に期待されても困ってしまう。


「では、パーティーをお楽しみ下さい!」


 司会の合図で全員が自由に行動し始める。そして、多くの人々が俺とロスキタスのほうに挨拶をしに来た。


「ごきげんよう。私は東部魔術要塞都市ルイルタを統治しております。ハンス・フライフォーゲルと申します。以後お見知りおきを」


「我輩はイオニアス・ドレヴェスと申す者だ。貴殿の武勇伝を聞かせてもらいたい!」


「あらまぁ、英雄様は若くて強くて良い男ですことね。わたくしには今年15になる娘がおりまして……」


「国王からエデンダンジョンの許可を得られたとは羨ましい限りですな。何と言ってもあそこは良質な魔石が得られる……」


「帝国はどうやら魔石を求めて戦争を仕掛けてきているらしいですぞ……」


「是非お話を……」


「ご助力を……」


 俺とロスキタスは多くの人に囲まれて、ちょっとしたパニック状態となってしまった。もはや全ての話を真面目にする気にもなれず、ほとんどの話を聞き流してなんとか挨拶を捌き切った。ロスキタスのほうを見ると何故か慣れた対応をしている。さすが元傭兵王だ。こういった場での対応にも慣れているのだろう。


「はぁ〜、やっと挨拶から解放されました……」


「お疲れさまでした。コメット様」


 一通り挨拶が終わり、パーティー会場は落ち着きを取り戻した。ロスキタスが労いの言葉をかけてくる。俺はやっと周りを見る余裕が生まれて、周囲を見渡すと


「ん?」


 俺に殺気を放っている集団が居る事に気がついた。


「あれはたしか……」

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