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 外から鳥の鳴き声が聞こえる。この宿屋はミスリルで覆われている為に窓がない。


「ふう、もう朝ですか」


 時計を確認するともう7時だった。昨夜は付与術をし続けたおかげで、スキルレベルは付与術4まで上がった。それ以外にも身体強化も習得し、並列で鍛錬した。


 俺は作成した使い捨てカイロ(銀の魔道具)をアイテムボックスに仕舞った。この使い捨てカイロは合計1000個程作った。後で魔道具屋に売るつもりだ。


 俺は部屋を出て食堂に行くと既にロスキタスが待っていた。


「おはようございます。ロスキタス」


「おはよう御座いますコメット様。もう身体強化を習得されたのですか?」


 身体強化は常に使用しておく事にした。


「ええ、付与術も無事に習得しましたよ」


「さすがはコメット様、今日の予定は?」


「まずは魔道具屋に行きます。その後、またティナの手伝いに行きます。昨日約束をしてしまったので」


「御意に。護衛はお任せを」


「うん、お願いします」


 俺は朝食を済ませるとロスキタスを連れて魔道具屋に向かった。



「お客様、いらっしゃいませ。本日はどのような魔道具をお探しで?」


 割と品揃えの良さそうな魔道具屋に入ると店員に話しかけられた。


「あ、いえ、どちらかと言えば売りたいのですが」


「ほう、商人でしたか。商人ギルドの証書はお持ちで?」


 しまった。物を売るには商人ギルドに入る必要があるのか。


「いや、商人ではありません。品物はあるのですが商人ギルドに入っていません。すみません、出直します」


「はぁ、そうですか」


 俺は店員から呆れたような目を向けられて逃げるように店を去った。


「何も考えずに行動しすぎましたね」


「コメット様でも失敗することがあるのだな」


「まぁ、ティナさんの手伝いに向かいますか。魔道具を売る方法についても何か聞けるかもしれませんし」


「御意」



 王宮の近くにある宮廷付与術師の建物に行くと笑顔のティナに出迎えられた。そこで、魔道具を売ろうとして失敗した出来事についてティナに話した。


「なるほどね。市民権もなく商人ギルドにも所属していない旅人が魔道具を売るのは不可能よ」


「なんとなくそんな気がしていましたが、やっぱりそうですか」


「魔道具はこの魔法国の特産だし、兵器に転用されたりするのを防ぐ為に厳密に管理されているのよ」


「じゃあ、捨てるしかないですかね……」


「ところで、何を作ったの? さぁ、早くここに出しなさい!」


 ティナはテンション高めに迫ってくる。


「こ、これです」


 俺は作業台の上に使い捨てカイロを出す。いや、使い捨てじゃないから魔道カイロでいいか。


「これは魔道カイロです。魔力を込めると10時間程暖かくなります」


 どんなに魔力を込めても必要以上に温度が上がらないように制御するのが割と大変だった。


「部屋を温める魔道具はあるけど、ここまで小型で精密な魔法陣は凄いわね。昨日まで付与術を知らなかった人間の作った物とは今でも信じられないくらいよ」


「そうですか? 魔道カイロは割と簡単な部類だと思うんですけどね。それで、これは素材に戻したり出来ないですかね? それともやっぱり捨てるしかないですか?」


「それを捨てるなんてとんでもないわ! 大丈夫! この研究所では作った魔道具の販路も確立しているからね。良い値段で売ってあげる!」


「あ、ありがとうございます」


「その代わり、師匠の付与術をちゃんと手伝ってよね! 国からの依頼が山のように溜まってるんだから!」


「やっぱりそうなりますか……」


 俺はため息をついて今日一日師匠の手伝いをする覚悟を決めた。

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