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「てめぇ、帝国のスパイかよ?」


 赤髪の冒険者らしき女性がこちらを睨みつけながら近づいてくる。彼女の後方には仲間と思われる人達も見えるが、彼女を止めるつもりもないようだ。


 冒険者プレートらしきものがチラリと見えたがオリハルコン製のように見えるし、装備もかなり高級そうに見える。もし冒険者ランクが1000年前と同じであれば、最上位のランクのはずだ。


「いや、スパイだなんてとんでもないです! 俺はただの旅人で……」


「止まれ」


 俺と女冒険者の間にロスキタスが割り込んだ。いいぞ! GJ(グッジョブ)ロスキタス!


「なんだい? このアタイ、猛火剣のカミラとやろうってのかい!? そのイケメンの顔に傷をつけたくなければ……って、その顔はどっかで見覚えがあったような……?」


 ん? ロスキタスの顔を知っているっぽいな。ここは本人に聞いたほうが早いだろう。


「ロスキタス、知り合いですか?」


「いや、知り合いではない。だが以前、国にオリハルコン級冒険者を招いた事はある」


 なるほど、ロスキタスが国王だった時代に会った事があるかもしれないのか。


「ロスキタス、ロスキタス……ってトラリア連邦の傭兵王ロスキタス!?」


 うるさい。カミラとかいう女冒険者が大声で驚くせいで部屋中から注目を集めてしまった。


「その男は死んだ。今はただの男、いや、コメット様の従者ロスキタスだ。そこをどけ。退かぬなら無理やりにでも押し通るぞ」


 ロスキタスの殺気が膨れ上がる。その殺気に押されたようにカミラは道を開けた。


「じゃあ、そういう事なので、もう嫌な絡み方しないで下さいね」


 俺はそう言いながら受付カウンターまで進む。


「すみません、冒険者登録をしたいのですが」


 俺が受付嬢に要件を伝えると、受付嬢は慌ててガタガタと魔道具らしき水晶付きの黒い板を手に取った。


「あ、あわわわ。は、はい! それではこの水晶に手を触れてください! あっ!」


 黒い板は受付嬢の手から滑り落ち俺の目の前を落ちていく。このまま地面にぶつかれば魔道具は壊れるかもしれない。


「ほっ! 危なかったですね。どうぞ」


 俺はさっと魔道具を掴むと水晶に手を触れてから受付嬢に手渡した。


「……はっ! あ、ありがとうございます! これを壊したらめちゃくちゃ叱られるので助かりました〜」


 叱られる事を知っているってことはつまり……天然のドジっ娘か!?


「いえいえ、それで登録のほうは?」


「は、はい! もう完了です。あとはここをこうして……はい、冒険者カードはこちらです」


 黒い板に何やら銅らしき板をセットして魔力を通したようだ。よく見ると黒い板には魔法陣らしきものが刻まれている。


「そちらの冒険者証は魔道具になっていまして、魔力を通せばステータスが表示されます」


「ほぉー」


 1000年前は自己申告制で手書きだったんだよな。現在の方法はUX(ユーザー体験)が素晴らしい! 魔道具の進歩のおかげだろうね。


「ありがとうございます。ところで手数料とかは取らないんですか?」


「はい、取らないですよ。手数料は依頼の達成報酬から自動で引かれますので」


「そうですか。それと冒険者ギルドについての初心者向けの説明もお願いします」


 一応今のシステムも聞いておく。


「説明を忘れてました! 冒険者にはランクというものがありまして……」



「という訳で、金級以上の冒険者になれば手数料なしでの銀行の利用や通信魔道具の使用が認められますので昇級目指して頑張って下さいね!」


 ほとんどは以前の冒険者ギルドと同じだったが、今は銀行のシステムや通信用の魔道具なんかもあるらしい。


「分かりました。説明ありがとうございました」


「ところで、コメット君の後ろに居る方は冒険者に登録なさらないのですか?」


 コメット君て、たしかに冒険者登録した時に名前は知られているのだけど、馴れ馴れしいというか良く言えばフレンドリー過ぎるのでは……って、そんな事よりロスキタスか。


「どうしますか? ロスキタス」


「某は傭兵ギルドには所属していたが、冒険者ギルドには所属していなかった。コメット様が冒険者を始めるというのならば何かお手伝い出来る事もあるかもしれん。登録をお願いするとしよう」


「じゃあ、ロスキタスの登録もお願いします。あとついでに一番インパクトのある宿屋も教えて下さい」


「畏まりました! うわわわ!」


 また備品を落としかけている受付嬢を手伝いつつロスキタスの冒険者登録も行った。宿屋の場所もしっかりと聞いた。


 用を終えて冒険者ギルドを出る際に、先程のオリハルコン級冒険者達がこちらを睨んできたが絡んでくる事は無かった。


「さーて、次こそは宿屋を見つけないと夜になってしまいますね」

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