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「はぁ〜〜〜、やっと自由に行動出来るようになりましたな。ロスキタスさんや。どんな宿が良いか希望はありますかな?」
王宮から解放された俺とロスキタスは今日の宿屋を探しに街にやってきた。なんかシャーリンちゃんが見当たらないけど、放っておいたら何か騒動を起こすような気もするけど、どうしようもないので忘れることにした。
王宮に賓客用の部屋が用意されていると言われたが居心地が悪いので勿論断った。
王宮の最新式魔道具にはかなり興味があったけど、何故か敵視してくる第一王子とかが近くに居るなんてストレスがマッハで禿げてしまうかもしれない。まぁ、それは冗談だけど。
「……コメット様の口調がいつもと違う事について某に何か期待しておられるかもしれぬが、経験不足ゆえ何も言えませぬ。宿については傭兵時代からどこでも寝られるよう訓練しているから問題ない」
ロスキタスは元傭兵王だっただけあってどこでも寝られるらしい。ついでに王だったせいか敬語も苦手らしい。
「いや、なんかすみません。宿は、どうしようかなぁ〜。色んな宿を試してみましょうか!」
最初は安い宿から泊まっていって、段々と高い宿に泊まってみよう。コスパの良い宿を探すのも面白そうだ。
「御意」
「じゃあ、まずは最安の宿を探してみましょう」
ロスキタスの了承を得たので、貧民街を目指す。フライの魔法は使えないがウィンドの魔法で空を飛び位置を確認した。
そして貧民街の宿に着いた。ここは空を飛ぶ人はほとんど居ない。更に言えば魔力もほとんど感知出来ない。
「なるほど、ここに住む人々は魔法が使えないんですね。貧しいから魔道具も買えないって感じですかね」
「このような場所はどの国にもある」
「たしかにそうかもしれませんね」
俺の国も多少の貧富の差はあっただろうけど、出来るだけ差がなくなるようにセバスチャンには指示していた。方法は他人任せだったから何の自慢にもならないけど。
「入りましょう」
ボロボロの宿に入る。料金は壁に書かれておりかなり安い。たったの5銅貨だ。感覚的には500円といったところか。
宿の中を見渡すと、大広間に人々が雑魚寝している。うわぁ、プライバシーとセキュリティがガバガバ過ぎる。
「らっしゃい。何泊するんだ?」
俺がドン引きしていると小汚い店主がこちらに話しかけてきた。
「い、いや、すみません。間違えました!」
俺は回れ右をしてすぐに店を出た。しかし、言い訳が間違えましたってどういうことだよ俺。
「宿泊せぬのか?」
「あ〜、俺も基本的にはどこでも寝られるんですけどね。雑魚寝はさすがに厳しいと言いますか、多分何か面倒事が起こると思うんですよね」
アイテムボックスに持ち物のほとんどを入れてあるとはいえ、着ている服なんかは貧民街の水準からすればかなり高価な部類に入る。
「盗みとかに合ったら嫌でも対応しないといけないじゃないですか」
「なるほど、納得した」
ロスキタスに納得してもらい、次の宿を探す。貧民街の宿をいくつか巡ってみたが似たような部屋ばかりだ。
「なんか、値段相応の宿ばかりで面白くないですね」
「それが普通だと思うが……」
「こうなったらもっとグレードを上げて料金を問わずとにかく面白い宿を探しましょう!」
「御意」
という訳で貧民街を離れて、活気ある商業区らしき場所までやって来た。
「ここは多分商業区だと思うんですけど、活気があっていいですねぇ」
「魔術師も多いが、傭兵や冒険者も見受けられるな」
「そうなんですか。どうやって見分けているんですか?」
「経験と勘だ」
「な、なるほど」
俺は何十億年と生きてきたが、まだまだ経験不足なようだ。っていうか、1000年も冬眠してたら時代に追いつけないわ!
「冒険者って事はこの時代にも冒険者ギルドがあるんですねぇ」
砂漠の都市では狩猟ギルドがあったが冒険者ギルドはなかった。
「この時代? 冒険者ギルドならばあそこにあるのがそうだ」
「おぉ、あの2階建ての!」
目の前にはそれっぽい2階建の建物があった。
「どうせ経験値稼ぎするためにダンジョンに籠もる予定だし、冒険者に登録しましょう!」
俺とロスキタスは冒険者ギルドに入っていった。
「この扉は魔法で自動開閉しているんですねぇ。帝国の時は機械式だったけど」
なんてことを言いながら冒険者ギルドに入ると
「帝国だぁ? あんた見ない顔だねぇ!」
しまった。お約束があることを忘れていた。




