023
翌日、魔術師ギルドの試験が楽しみで朝早く起きてしまった。
まずは食堂で朝食を食べる。
「おはようございます。ミミさん」
「おはようございます!コメットさん」
「朝食をお願いします」
「ありがとうございます!朝食1人前ー!」
いつもの席に座って朝食を食べる。
食べ終わると部屋に戻り、時間を潰す。時間を潰すことにかけてはプロですから。
魔術師ギルドが開く時間になったので、走って向かい1分以内に到着だ。
「おはようございます!」
「おはようございます。ああ、昨日の……」
「コメットと申します」
「私はララです。魔術師ギルドの受付をしています」
「では、早速試験を行いたいと思います。試験は単純です。魔術師ギルドの職員3名から推薦証を貰うことです」
「推薦証とは?」
「魔術師ギルドに所属してもよいと認められた証です。どうすれば推薦証が貰えるかは各職員から聞いてください」
「分かりました」
何はともあれ魔術師ギルド内に居る職員を探さなければならない。
一瞬、ララさんも職員だと思ったが、受付の邪魔をしたくないのでやめた。
魔術師ギルド内には多くの個室があり、研究器具や素材が置かれている。
とある個室を覗くと、ハゲたおっさんが居た。
「おはようございます!今日魔術師ギルドの試験を受けに来たコメットです!」
「おはよう。私はオーサ、風魔法が得意なんだ。私の前で風魔法を使うことが出来たら推薦証を渡そう」
風魔法をやりすぎると髪の毛が薄くなるのだろうか?いや、そんなわけないか。
「分かりました。やります!」
魔法は出来ないが、コメットには秘策があった。そう、右ストレートパンチである。
風の衝撃波でそれっぽく見せればいいのである。
「では、そこの的を狙って撃ってみなさい」
頷くと、右手をかざす。
「ウィンド!」
と唱えながら右手を見えない速度で打ち出す。
的の木の板は風魔法(物理)によって木っ端微塵となった。
そして、板の奥にある壁も木っ端微塵となった。
またやってしまった。
「す、すみません!弁償しますから!」
オーサは目を見開きながら口をパクパクしている。
この混乱に乗じてゴリ押すしかない!
「これ、弁償代です。的は木っ端微塵なので合格ですよね!?推薦証頂いていきますね!」
白金貨を1枚渡して推薦証を奪って立ち去る。
出来るだけ離れよう。廊下を一番奥まで進むと地下に行く階段と2階に行く階段がある。
2階に行くことにする。
上がってすぐの場所にベンチがあり、落ち着くために腰掛ける。
するといきなり隣から声を掛けられる。
「もすかして、試験を受けに来た子かい?」
「もす!?は、はい。コメットと申します」
いつの間にか隣には年老いたお婆さんが座っている。
そして黙ったままじーっと見つめてくる。
気まずい空気が流れて数分が経過した。
「コメットちゃんの魔力は底が知れないねぇ!ふぇっふぇっふぇ!」
笑いながらどこかに歩き去っていった。
気付くとベンチの上には推薦証が置いてあった。
あのオババは何者なんだ……。
2枚目の推薦証をゲットした!
2階を回ってみたが、誰も居なかった。寝室のようだ。
次は地下に行ってみる。
すると、トカゲ顔の獣人が歩いてくる。
「見ない顔だな。もしかして試験を受けに来た奴か?」
「はい、コメットと申します」
「丁度良かった!頼みたいことがあるんだ」
「何でしょうか?」
「魔法の実験をしていたんだが、触媒にしていた素材が足りなくなってしまったんだ。ゴブリンマジシャンの手が10個どうしても必要なんだ。取ってきてくれたら推薦証と報酬をくれてやる」
「わかりました。その代わり報酬として魔法を教えてほしい」
「いいだろう。俺はバルギ。魔法は水魔法なら教えてやれる」
「交渉成立だ!」
ガシッと握手を交わす。
早速、ゴブリンマジシャンを倒しに、行く前に冒険者ギルドに立ち寄る。
冒険者ギルドに入ると、騒がしかったギルド内がシーンと静かになる。
俺のせいか?もしかして昨日のギルド長との一件を見られていたのだろうか。
掲示板の依頼をざっと見る。ゴブリン退治の依頼は常時あるようだ。
受付に向かうと、受付は1人でテンパって書類をぶちまけている。
「うわわわわーーー!」
苦笑いしながら、書類を拾ってやる。
「あ、ありがとうございます!」
銅級の冒険者証を見せながら尋ねる。
「ゴブリン討伐依頼を受けたいんですけど」
「あ、はい。ゴブリンは常時依頼ですので、特に依頼を受けなくても大丈夫です。討伐部位、ゴブリンの場合は右耳を持って来ていただければ討伐数としてカウントします」
「なるほど、説明ありがとうございます」
「魔石も忘れずに取ってきてくださいね」
「分かりました」
ギルド内は静まり返ったままだが、気にせず外に出る。
途端にギルド内は騒がしくなる。俺は嫌われているのだろうか。
気を取り直して、門を歩いて出る。身分証があるから壁を飛び越える必要がなくなったのである。
「こんにちはー」
門番の兵士に挨拶をする。
「ああ、この前の!」
「おかげさまで助かりました」
「無事に冒険者になれたようだね。無事に帰って来るんだぞー」
手を振って、街の外に出た。




