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――遺跡探検から戻って数日。
「どうかお願いしますじゃ!!」
俺は今、ドワーフ王国円卓会議場に居てドワーフの大臣達に土下座されている。
どうしてこうなったのか今でも混乱しているので冷静になる為にも経緯を思い出してみる。
ドワーフ達の戦後処理はまだ難航していた。なにしろ城下町の大部分が全壊してしまったのだ。生き残った者達の衣食住をどうするのか、次に同じような事態になった時の備えはどうするのかといったような事をずっと話し合っていたらしいが、未だに答えは出ないようだ。
そして会議が行き詰まっているところに風の噂で救世主コメットの故郷はまるで天国のような理想郷であると聞きつけたドワーフ大臣達がそこに移り住む為に俺を円卓会議に呼んだ、という事らしい。
だから俺はちゃんと答えなければならないだろう。
「根も葉もないただの噂です!」
俺の答えを聞いた大臣達だが、全く信用してくれない。実際に今オアシスがどうなっているのか知らないし、責任も取れない。
「砂漠にあるとは聞いたがオアシスで水はあるんじゃろ?」
「はい、そうですね」
「おお! 広大な砂漠で水がある奇跡の場所じゃ!」
どうしてそうなる!?
「世界樹があるというのは本当じゃろうか?」
「はい、そうですね」
「本当に世界樹が存在するとは! 世界樹の地下には伝説の鉱物が存在するとワシの曽祖父から聞いたことがあるぞい!」
マジで? それが本当なら俺も欲しいんだけど!
「帝国の東の土地は未開拓でどの国にも属しておらんのじゃろう?」
「まぁ、はい、そうですね」
事実なので、イエスとしか言いようがない。
「決まりじゃな」
「全会一致で英雄コメット殿の故郷に移り住む事に決定じゃ!!」
「それは(主に町長が)困りますよ。今あの場所がどんな状況なのか分からないんです」
「そこをなんとか!」
ドワーフ達が土下座をし始める。
「どうかお願いしますじゃ!!」
そして今に至るという訳だ。
「ここからかなり遠いですよ。移動手段はどうするんですか?」
「「……」」
ドワーフ達が黙り込んでしまった。申し訳ないとは思うが現実問題としてどうしようもない。
「それは大丈夫じゃ! わしのドリル型魔導列車があるからのう!」
突然扉から現れたシャーリンちゃん。ここに居なかったのにどうして話の流れを知ってるんだ? まさか盗聴……?
「ドワーフ共にはアレをくれてやれば良かろう! お主がどうしてもドリル型魔導列車で行きたいのであれば話は別だがのう」
「いえ! もう二度とドリル型魔導列車には乗りませんよ!」
あんな退屈で危険な乗り物はさすがにもう御免だ。聞いた話によるとドワーフ王国から魔法国までの道が存在するらしい。既に俺は魔法国までの残りの道は地上を行く事に決めた。
「そうじゃろうそうじゃろう。であれば、ドワーフ達の移動手段は解決じゃな」
「皆の者! 全会一致で決定じゃあああ! 国民全員に伝えてただちに準備をするのじゃああああ!」
「「おおおおおおおお!!」」
「これでやっと酒が飲めるぞおおおおお!」
「ひゃっほおおおお!!」
「わしもドリル型魔導列車の整備をせねばな!」
ドワーフ達はテンション爆上がりで会議室から出ていった。ついでにシャーリンちゃんも部屋を出ていった。
「うわ……、もうどうなっても知りませんよ」
会議室に一人取り残された俺はドン引きしながら独り言を呟くしかなかった。
そして今世界樹のオアシスはどうなっているのか結構気になってきた。魔法国にマリアさんとルート君を送り届けたら一度世界樹のオアシスに行ってみてもいいかもしれないな、と思うのであった。




