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222

 死んだ。そう思った。


 不老不死なので正確には勝負に負ける=味方全滅である。


 恐る恐る目を開くと、怒りに顔を歪ませたエンペラーイビルシケイダが居た。


「あれ? 俺生きてる」


 よくよく考えると、魔法無効スキルの存在を思い出した。


「ふぁー! 焦った!」


『何故だ! 何故死なない!』


『お前が弱いからじゃないか?』


 本当はスキルのおかげだけど、わざわざ教えてやる必要もない。


『優等種の王であるオレを愚弄するとは許さんぞおおおおおお!』


 狙い通りにキレてくれたようだ。しかし、エンペラーイビルシケイダは突然静かになる。キレると逆に冷静になるタイプか。


『……ならば、オレの最大奥義を喰らうがいい。次元斬!』


 ボトリ


 急に肩が軽くなったのでそちらを見ると俺の腕が地面に落ちていた。


「えええええ!? 物理無効先生が働かないの!?」


 俺は思わず驚いて叫んでしまった。痛覚無効先生はちゃんと働いているので全く痛みはない。


『フハハハハハ! オレの力を見たか! さぁ、泣いて許しを乞えば両足を切り落とすだけで許してやる。ほら、早くしろ!』


 俺は急いで腕を拾うと肩にくっつけた。不老不死スキルにより簡単に元通りとなる。


『え、何か言った?』


『お前のそのふざけた再生能力は何なのだあああああ! 死ねええええ! 

 次元斬! 次元斬! 次元斬!』


 俺は切り刻まれてバラバラになった。しかし、脳は無事だったので意識はちゃんとある。


 身体よ集まれと念じると少しずつパーツが集まり元通りになっていく。


『ば、馬鹿な……』


『お前の攻撃は全て無意味みたいだな』


 これで、エンペラーイビルシケイダのどんな攻撃も俺には通用しないという事が分かった。ただし、俺の攻撃も相手には全く効かないんだろうけどね。


 試しにこちらから攻撃を仕掛けてみる。


「はぁっ!」


 接近してハルバードで斬りつけるが、エンペラーイビルシケイダは大きく回避し、かすり傷さえ負わせられない。


『ふ、ふはははは! 遅過ぎるわ! 防御力と回復力は大したものだが、スピードはオレの足元にも及ばないようだな!』


 全くその通りで、ついでに言うなら攻撃力も全く足りていない。


『何も言い返さないと言うことは図星のようだな。ならば何も恐れる事はない。オレがコイツの相手をすればよいのだからな! 全軍! 敵の城門を破壊し敵を皆殺しにしろ!』


 ドワーフの城門は頑丈ではあるが、ヒュージイビルシケイダの突進を受け止めることは出来ずに崩壊する。


「くっ!」


 俺は城門に向かおうとするが、それを邪魔するかのようにエンペラーイビルシケイダが行く手を遮る。


『行かせるわけがあるまい。お前はここでオレの相手をするのだ』


 考えろ。考えるんだ。最悪のシナリオを回避する為にはどうすればいいのかを。


 時間を稼ぐ事が出来れば、チャンスが訪れるはずなんだ。


 出来るだけ広範囲の蝉を足止め、いや、こちらに振り向かせるだけでもいい。何か方法があるはずだ。俺は前世の知識までも総動員して考える。


 ――そして思いついた。思いつくと同時に動いた。


 俺は両手を空に向けて挙げる。それを見たエンペラーイビルシケイダが訝しげな視線を俺に向ける。


『なんだそれは? 人族が時折行う服従のポーズか?』


 俺は口角を上げると魔法名を告げた。


「シャイニング」


 俺の周囲が強烈な光で白く染まる。


『ぐああああ!』


 光が収まると全てのイビルシケイダの動きが止まっている。作戦は成功だ。


 地球に居る蝉の幼虫は長い間地中で生活しているが、視力が無いわけではない。明暗くらいは分かる程度の視力を有している。


 そこで思いついたのが強烈な光での目くらましという訳である。


「ふぅ、思いつきの作戦が上手く行って良かったな〜」


 ただの目くらましなので、もう暫くしたら進軍は再開されるだろう。ほんの数分だ。


 だが、俺はその数分が欲しかったのだ。


「来たか」


 俺はそう呟くと、王城からこちらに飛行してくる物体を眺める。


「待たせたのじゃぁ〜〜〜!」


 きっと来るだろうと思っていた人物が現れた。


 俺の予想通りなら、ここから人族の逆転劇が始まるだろう。


「ここからは俺達のターンだ」

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