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 俺達がドワーフ王城に逃げ込んだ数分後、奴等は王城の前までやってきた。


「敵襲ーーー!!」


 ドワーフ王城はドワーフ騎士団の敗北と敵襲の知らせでパニック状態となり、避難民からは悲鳴が上がった。


「何をしている! 早く魔砲塔を撃てえええ! 早くしろおおお!」


 撤退戦でボロボロになったドワーフ騎士団長ヴァリングが半狂乱となって叫ぶ。


 兵士達がパニックになりつつもヴァリングの一喝によって魔砲塔の準備を始める。


 魔砲塔に魔力が集まり輝き始める。


『小賢しい!』


 またしてもエンペラーイビルシケイダから不可視の刃が飛び魔砲塔を切り裂いた。


「ば、馬鹿な!」


 ヴァリングは驚きと絶望の表情で膝から崩れ落ちた。


「さすがに今回は不味いですね」


 俺達に残された選択肢は、【たたかう】【ぼうぎょ】【はなす】【アイテム】【にげる】がある。


 しかし、【たたかう】【ぼうぎょ】は既に試したようなものだし、王城まで【にげる】だけでも多大な犠牲を払ったので実質的に選択肢からは消える。【アイテム】も魔導擲弾は使い切ってしまった。


「ここは【はなす】しかないですね。知能は高いようですし」


「某もお供させて頂く」


「くれぐれも死なないようにお願いします」


「御意」


 俺は王城の門を飛び越えるとスタスタと敵軍の中央に居るエンペラーイビルシケイダの所に向かって歩く。


 恐らくエンペラーイビルシケイダの指示でこちらには攻撃してこないようだ。


 俺とロスキタスはエンペラーイビルシケイダまであと10メートルといった所で止まる。


『お初にお目にかかります。コメットと申します』


 言語理解スキルによって自然と蝉の言葉が出た。


『ほお、下等生物の割に言葉が話せるのか。面白い。何用だ?』


 エンペラーイビルシケイダはこちらに興味を持ったようで、いきなり攻撃されるという最悪のシナリオは回避できそうだ。


『交渉、いえ、貴殿の要望を聞きに参りました』


『ふむ、オレの要望か……。オレの望みは唯一つ、下等な種族を滅ぼし我が種族が最強であることを示すことだ!』


 蝉の王は途中からテンションが上がったのか握りこぶしを作って熱弁した。


 これ交渉の余地があるのか? と思うほどに他種族を滅ぼす気満々だ。だが、ここで諦めるわけにはいかない。


『なるほど。しかし、世界は広いですよ。私達は地上という世界を知っています。どうですか? 知りたくはないですか?』


 弱い立場で交渉する際には、まず自分の弱みを見せないことが重要であるが、既に武力で圧倒的に負けているという弱みを握られている。


 次に相手の弱点を見つけることが重要さが、今のところ弱点は見つかっていない。


 となると、独自の価値提案をするしかない。見逃してくれたらこんなにメリットがあるんだよと伝えるわけだ。


『不要だ。地中の下等種族を滅ぼした後、地上に出て直接この目で見ればいいのだ。お前達の知識に価値はない』


 しかし、提案は上手く行かなかった。他に価値を示さないといけない。


『では、一族の最強を示す為に多種族を滅ぼすとして、多種族全てが滅んでしまっては証明する者が居なくなってしまいます。私達を見逃してくれたら貴殿の一族が最強であることを証言することが出来ますよ』


『ふむ、なるほど。それはたしかに一考の余地があるやもしれんな……』


 そう言ってエンペラーイビルシケイダは目を瞑り何かを考えているような素振りを見せた。よし、これが上手くいけば時間を稼ぐことができる。その間に俺がレベル上げをすればなんとかなるかもしれない。


 しばらく考えたエンペラーイビルシケイダは目を開くとこちらに返答する。


『決めたぞ。お前達2人だけは見届ける役目として見逃してやろう。話し合いはこれで終わりだ。進軍開始!!』


『な!? 』


 まるでもう俺とロスキタスが見えていないかのように蝉の魔物が進軍を開始した。

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