022
「ふう、1つ目の目標はクリアだな。次の目標は、魔術師ギルドに入ることだ!」
コメットには1つ考えがあった。魔法が使えなくても魔術師ギルドに入る方法を思いついたのだ。
早速、急いで魔術師ギルドに向かう。道中出会った人に魔術師ギルドの場所を聞いた。
魔術師ギルドの扉を開けて挨拶する。
「こんにちはー」
「こんにちは、どのようなご用件ですか?」
受付に魔術師ローブを着た女性が居た。
「魔術師ギルドに入りたいのですが、どうすればいいですか?」
まずはストレートに聞いてみた。
「通常は魔術学園の生徒が卒業後の就職先として魔術師ギルドに所属します。その際には教師の推薦も必要になります」
やはり簡単には魔術師ギルドに入ることは出来なさそうだ。
「なるほど、では、通常ではない方法はあるのですか?」
「はい、魔術師ギルドからの試験に合格した場合に限り魔術師ギルドに入ることが許されます」
「俺は魔術師ギルドに入りたいのです。試験を受けてもよろしいですか?」
「承知しました。では、試験の準備をしておきますので、明日また来てください」
「わかりました。よろしくお願いします」
宿屋に戻ることにした。部屋に戻り考える。
うーん、身分証は魔術師ギルドに入れば貰えるんだよなぁ。
先に冒険者ギルドに入ってみてもいいか。
複数のギルドに入ることは可能らしい。宿屋の食堂でお昼を食べてから冒険者ギルドに向かうことにする。
「こんにちは、ミミさん」
「こんにちは、コメットさん」
「昼食を1食分お願いします」
言いながらお金を渡す。
「ありがとうございます!昼食1人前ー!」
適当なテーブルに座り、料理が出てくるのを待っていると会話が聞こえてくる。
「おい、聞いたか?北の森林でジャイアントビーやバーサークバードやオークジェネラルが何故か死体で転がってたらしいぞ!」
「マジかよ!つまり、死体を見つけて素材を売れば一攫千金も夢じゃないな!」
冒険者AとBが興奮気味に会話している。もしかして、さっき道中で倒した魔物のことだろうか?
というか、冒険者のくせに大声で話しすぎだ。他の冒険者達は話を聞いた直後、走って外に出て行ったぞ。
「お待たせしました。ランチAセットです」
昼食をゆっくり食べてから、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに入ると、なかなか騒がしかった。魔物の解体場も併設されているらしく、そちらに人が集まっているようだ。
多分、蜂やら鳥やら豚なんだろう。
気にせず、受付に行く。
「こんにちは」
「こんにちは、どのようなご用件でしょうか?」
「冒険者登録をしようと思いまして」
「なるほど、ではこちらの羊皮紙にお名前と職業と得意な武器やスキルなどを書いてください」
な!?職業……だと……!?
たしか今の俺の職業は無職。何故か恥ずかしいし、認めたくないが、真実を書くしかないだろう。
「わかりました」
名前:コメット
職業:無職
得意武器/スキル:格闘、剣、短剣、槍、弓、斧
「書きました」
「ありがとうございます。ふむふむ、色々な武器を扱えるんですね」
「はい」
「では、登録に少々時間がかかりますのでお待ちください」
しばらく待っていると、奥から身長2.5メートルはありそうな虎の獣人が出てきた。
「お前さんがコメットか?」
「はい、そうですけど?」
「お前を試験してやる。ついて来い」
ほとんど説明もなしにギルドの奥に戻っていく獣人。仕方がないのでついて行くことにする。
冒険者ギルドの裏手には訓練用の施設というか、ただの広い場所があった。
「さあ、かかってこい!」
「ちょっと待ってください!説明を求めます!」
「あー、面倒だが、仕方がねえか。冒険者にはランクがある。お前がどのランクなのか試してやろうっていう訳だよ」
なるほど、それでここで戦うのか。
「武器は何を使えばいいですか?」
「お前が持っている武器を好きに使え。俺は素手で十分だ」
相手が素手なら、こっちも素手で行こうかな。
「じゃあ、行きますよ」
「おう!」
一足で獣人の懐まで飛び込む。ステータスを下げるアイテムのおかげでなんとか視認出来る速度のはずだ。
左のボディブローを打ってみる。
「あ……」
クリーンヒットして獣人は吹き飛んだ。訓練場の場外まで吹き飛び停止する。
まさか死んだりしてないよな……。
万が一のことを考えて逃げるためのクラウチングスタートの構えをする。
だが杞憂に終わったようだ。獣人がフラフラと立ち上がる。良かった。
「お……お前さん……強すぎるだろう……オ」
「お?」
「オロロロロロ」
盛大に吐いた。キラキラのエフェクトとモザイクを掛けなければいけないレベルだ。
30分後、なんとか獣人が落ち着いたようなので話を再開する。
話を要約すると、獣人は冒険者ギルド長のガルググさんで元ミスリル級の冒険者であり、試験官もしているとのことだった。
「こんなに強い新人は初めてだ。しかし、ランクはどう付けるべきか……」
「一番下からでいいですよ」
身分証が目的なので、特にこだわりはない。むしろ下のランクにはどんな仕事があるのか見てみたい気もする。
「そんなわけにはいかん!これだけの能力があるのに遊ばせておくのは勿体ないというものだ!」
却下されたようだ。
「他のギルド職員と相談し決めたいので、後日連絡する。連絡先を教えてくれ」
「兎と猪亭です」
「分かった。それまでは仮として銅級の登録証を持っていてくれ」
「わかりました」
冒険者ギルドの受付で登録証を受け取ると、宿屋に帰った。
ふー、濃い1日だった。
冒険者ギルドから貰った登録証は銅の板で、表には冒険者ギルドの意匠、裏には名前と登録番号が彫られている。
なかなか良いデザインだな。紐を通す穴も開いているので、通常はネックレスにでもするのだろう。
面倒なので、とりあえずポケットに突っ込んでおく。
井戸水で体を洗って、寝ることにする。




