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必要なのは近距離用武器と遠距離用武器それと複数の敵を相手にするのに適した武器か。ついでにロスキタスの槍も新しくしてあげても良いかもしれない。
「とりあえず近接武器は片手剣かなぁ。遠距離武器は爆発するナイフとか作れないかな? ロケットランチャー的な物でもいいけど」
ロケットランチャーが戦車の硬い装甲を突破して内部で爆発する仕組みは今回のような殻の硬い魔物には丁度良い。
「たしかロケットランチャーって先端が尖っていて装甲を突き破るとそこから爆薬が侵入して爆発するんだったっけ」
爆薬は素材を探せば作れるかもしれないけど、今は時間がない。
「うーん、こういう時は魔法で代用出来るといいんだけどな……」
爆発する魔法といえばファイアボールとか、もしくはより威力が高いフレイムボールかな。
「ロケットランチャーの外側だけを作って中身を魔法にすればどうなるのかな? 何だか気になって夜も眠れなくなりそうだ。すぐに確認しよう!」
俺は鍛冶窯でアイテムボックスに入っていた魔導アーマーの装甲(鉄)を溶かしていくつかの実物の10分の1程度のロケットランチャーの弾(中身は空)を作成した。
「実物大で検証する訳にもいかないからなぁ。まずはミニチュアで試してみよう」
俺はベランダに出てミニチュアロケットランチャーの弾に魔力を込める。威力を低めにする為に魔力を少なめにしておく。
突然ベランダに出てきた俺に驚いたのかロスキタスはこちらを見ているが、今は集中しているので声はかけてこないし、こちらからかける事もしない。
「極小ファイアボール!」
そしてミニチュアロケットランチャーの弾を空へ放り投げようとした瞬間。
ボンッという音と共にミニチュアロケットランチャーの球が爆発した。
「痛っ……くはないけど、驚いたぁ〜」
失敗だ。恐らくミニチュアロケットランチャーの内壁にファイアボールが当たり爆発したのだと思う。
「失敗か。でも、威力は申し分ないな」
ミニチュアでこの威力であれば原寸大なら相当の殺傷能力が期待できる。
「うーん、内壁に当たらないようにファイアボールを魔力でコーティングしてみるか?」
次のミニチュアロケットランチャー弾を取り出して再度ファイアボールを唱える。
「このタイミングだ」
ここで内側とファイアボールの隙間を埋めるように魔力でコーティングする。
「これでどうだ!」
ベランダから見える誰も居ない空き地に向けて投擲した。ミニチュアロケットランチャーは投擲の瞬間も爆発することなく進み、空き地に突き刺さると爆発した。これだけの威力であれば対魔導アーマーにも使えるかもしれないな。
「土の内部で爆発したから小さなクレーターになってるね。うんうん、これなら魔物にも使えそうだ! すぐに量産しよう!」
部屋に戻り今度は実寸大で作成した。するとベランダに居たロスキタスが部屋に入ってきた。
「先程の見慣れぬ武器はソレか?」
「はい、名前は……」
形はロケットランチャーを参考にしたけど、中身は全くの別物だ。俺が名付けちゃおうかな。名前は……。
「魔導擲弾です。今名付けました」
「魔導擲弾……名付けたということはコメット様が考案した武器か。恐ろしいほどの才能だ」
「いえ、この程度であればいずれ誰かが思いついたでしょう」
緻密な魔力操作が出来ればという条件付きではあるけどね。
「邪魔をした。某はベランダに戻ろう」
ロスキタスはベランダに戻っていったので、作業を続けることにした。
「セミの殻は硬いから鉄だと突き刺さらない可能性があるな。アイテムボックス!」
俺はアイテムボックスからゴーレム作成時に少しだけ拝借していたアダマンタイトを取り出した。無報酬だったのだからこれくらいは許されるだろう。
通常よりも魔力を込めた火魔法によってアダマンタイトを溶かし、魔導擲弾の先端のみをアダマンタイトでコーティングした。これで完璧だ。
次は近接武器と複数相手に有効な武器を作るとしよう。




