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 ドワーフ王国の王城に避難したが、王城の中も外も敷地内は大勢のドワーフ王国民でごった返していた。


 過大なストレスからか男同士の喧嘩をするような怒声や子供の泣き声、女性の悲鳴などが聞こえてくる。


 兵士や騎士、俺達が門を防衛した事でおおよその王都民が避難出来たと思いたいが、実際はどうか分からない。


「コメット様、これからどうなさるつもりで?」


 喧騒から少し遠ざかったタイミングでロスキタスが聞いてきた。


「うーん、そうですね……」


 王城を囲んでいる壁は高く厚いので簡単には突破されないだろう。しかし、篭城したところで食料不足により大勢が餓死するのは目に見えている。


「短期決戦しかない……でしょうね」


「短期決戦とは具体的にどのような?」


「例えば、この城下町ごと焼き払う、とか」


「なるほど」


「どんな方法にせよ、騎士団長と宰相に相談する必要がありそうです。行きましょう」


「はっ」


 俺とロスキタスは王城の中に入り、宰相と騎士団長が作戦会議をしているという場所へ案内してもらった。



 案内された部屋には丸いテーブルが置かれ、それを囲むように10人のドワーフ達が並んでいる。比喩ではなくまさに円卓会議だなと少し面白く思ってしまった。


「コメット様、丁度良かった! 今から呼びに行こうと思っていたのです!」


 騎士団長のヴァリングが少し嬉しそうな表情で言ってきた。他の面々は眉間に皺を寄せて苦々しい顔をしている。そして、一応幼い王様も会議に参加しているようだ。


「俺をですか? もしかして作戦に関する事でしょうか?」


「はい、その通りです。私が立てた作戦を評価していただき、ここに居る者達を説得していただきたいのです!」


「ゴホン! ヴァリング殿、説明の前に先ずはコメット殿に我々を紹介すべきだと思うがね」


 鋭い目つきな初老のドワーフが発言する。そこで宰相が慌てたように間に入る。


「たしかにそうですな! それに私も自己紹介を忘れておりました。宰相のオルヴァエルです」


 宰相が自己紹介をする。他の面々も同様に挨拶をしてくれるようだ。


「財務大臣のガニでございます」


 風船のように肥え太ったドワーフが財務大臣か。


「ナガンだ。軍務大臣をしておる」


 強そうなドワーフだ。


「鍛治大臣のガルフじゃ」


 ガルフの装備しているベルトに様々な工具らしきものが見える。ドワーフならではの役職か。


「内務大臣グロイドです」


 ひょろっとしたドワーフだ。ドワーフなのに珍しい体型だ。


「外務大臣ガロイドです。お察しの通り、グロイドとは双子です」


 ひょろっとした体型と、たしかによく見ると顔が同じだ。だが、顔がヒゲモジャなせいで言われるまで気づかなかった。


「コメットと申します。そしてこちらは従者のロスキタスです」


 ロスキタスは無言で深々と礼をした。


「では、早速ですが。作戦を説明します」


 ヴァリングが机上の地図を指し示す。そこはちょうど破壊され敵の侵入を許してしまった門の位置だ。


「敵は門を突破しました。そして今はコメット様の魔法により氷漬けになっておりますが、直ぐに後続の魔物によって氷の壁も突破され城下町に雪崩れ込むと予想されます」


 たしかにそうだろうな、と俺は大きく頷く。


「また、今までの敵ジャイアントセミーを上回る強さを持つ上位種も確認されております」


 たしかジャイアントイビルシケイダだったな。恐らくスキル吸収で弱体化させても並の兵士では太刀打ち出来ないだろう。


「そこで今回は城下町を盾として利用し、敵の速度が遅くなったところを魔砲塔で一掃する作戦を取ることを提案します!」


 ヴァリングの作戦は大体俺と同じだった。俺の場合は魔砲塔ではなく太陽神の仮面で発動するスキルを利用しようかと思っていたのだけど。


「私は反対だ! 城下町を盾にするなどどれだけの損害が出ると思っているのだ!」


 財務大臣のガニが大きな体を揺らしながら反対の声を上げた。


「私も反対です」


 内務大臣のグロイドだ。たしかに彼らの役職から考えれば当然の考えだとは思う。


「コメット殿はどうお考えで?」


 外務大臣がこちらに話を振ってきたので、答えることにしようか。話の流れ的には恐らく反対派が多数で、俺にも反対派に回って欲しそうではある。しかし、本当に生き残る為には何かを犠牲にするしかない。


「俺は実際に前線で敵と味方の戦力を見てきました。結論としては、生き残りたければ城下町を捨てるしかありません」


「お主に与えたアダマンタイトで作ったゴーレムとやらがなんとかしてくれるのではなかったのか!?」


 軍務大臣が怒りの矛先をこちらに向けてきたか。


「恐らくアダマンタイトゴーレムが倒されることはないでしょう。しかし、ゴーレム1体だけで全ての魔物の進入路をカバーしきれない事くらい少しお考えになれば分かることでしょう?」


「うぐっ……」


「もし作戦の許可をいただけるようでしたら、俺も協力致します。それとも他に良い案があるのですか?」


「「……」」


 代案が出てくることは無かった。


「では……」


 ヴァリングが話をまとめようとした時


 ガタガタガタ


 テーブルや椅子が揺れ始めた。


 ドゴゴゴゴゴゴ


「地震!?」


「これはでかいぞ! 岩盤の崩落に備えろおお!」


 巨大地震が発生した。

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