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俺達が門に着くと、門には大きな亀裂が入っており既に限界を迎えていた。
「うわぁ、これもうすぐ壊れますよね」
「コメット様の予想通りピッタリ1時間といったところだな」
ロスキタスもそう判断したようだ。
「おお! 来てくれましたか! コメット様!」
ドワーフ騎士団長がこちらに気がつき走り寄ってきた。
「アダマンタイトゴーレムを連れて来ましたよ。ところで、状況はどうですか?」
「見ての通りではありますが、ここの門はもう限界です。門の補強を試みましたがあまり効果もなく……今は陣を整え迎撃する準備をしております」
門の前にはドワーフの屈強そうな兵士達が並んでいる。だが、前回の戦いではそのドワーフの兵士達がジャイアントセミーの硬い殻を破れずにいたのも事実だ。
「敵の数はどれくらいですか?」
「正確な数は分かりませんが恐らく……3000以上だと思われます」
ドワーフ騎士団長ヴァリングは絶望を押し隠したような表情で答えた。
「3000!? こちらの兵の数は1000にも満たないですよね。これはさすがに厳しいですね……」
1対1でも勝てないのに数でも負けている。あとはアダマンタイトゴーレムと俺達でどこまで対抗出来るかといったところか。
「ゴーレム! 門から入ってくる魔物を倒して王都を守れ!」
ゴンッ!
アダマンタイトゴーレムは任せろと言うかのように胸を叩き、ドワーフ兵士達の最前列についた。
門は大きくひび割れ今すぐにでも破られそうだ。
「ヴァリングさん、お互いに最善を尽くしましょう!」
「はっ!! コメット様もどうかお気をつけて!!」
「ロスキタス、俺達は遊撃です。中に入ってきた敵をとにかく多く倒しましょう。ここを突破されて魔物が王都に侵入したら不味い事になります」
「御意!」
バキンッ!! メキメキメキ!!
俺がロスキタスに指示を出したタイミングで巨大な音が響き王都の大門が破られた。立ち上る砂煙の向こう側からはのっそりとジャイアントセミーが姿を現した。
「魔砲塔! 撃て!」
ヴァリングが命令を出すと門の両脇に設置されていた2つの塔の魔力が高まり強力な火魔法と水魔法が放たれた。
放たれた魔法は門の中央で衝突し大爆発を引き起こす。
「これは凄いですね……」
火と水という相反する属性がぶつかる事で例えば水蒸気爆発のような事が起こっているのだろう。
「次! 魔石の装填を急げ!」
ヴァリングが怒鳴っているが、慣れていないのか兵士の動きが悪い。
最初の一撃で門周辺のジャイアントセミーは一掃されたが、すぐに後続の群れがやって来る。
「ひいぃっ! 間に合わない!」
「やっぱり無理だ……あんな大群に勝てるわけがねぇよぉ」
次々と出てくるジャイアントセミーを見たドワーフ兵達はトラウマが蘇ったのか弱音を吐き、著しく士気を低下させている。ヴァリング率いるドワーフ騎士団はなんとか耐えているようだ。仕方がない、ここは俺が少し力を貸すとしよう。
「名将の鼓舞!!」
今までほとんど使う場面がなかった【名将の鼓舞】を使用した。このスキルは軍の士気が大幅に上昇する。攻撃力、防御力、恐怖耐性のすべてが大アップするというスキルだ。たしか帝国の将軍から吸収したスキルだったかな。
「力が、力が漲ってくる!?」
「体の震えが止まった……?」
「うおおおおお! なんという万能感!! どんな敵でもかかってこいやー!!」
ちょっとテンション上がり過ぎな兵士も居るようだが、まぁいいか。
「魔砲塔は放棄だ! 全員抜剣せよ!」
接近しすぎた敵に対して魔砲塔を放てば味方にも被害が出ると判断したと思われるヴァリングが指示を出す。
「行け! ゴーレム! ロスキタス! 戦闘開始です!」
「はっ!!」
門から侵入してきた先頭のジャイアントセミーはアダマンタイトゴーレムに任せて俺は後続のジャイアントセミーに突っ込む。
「こいつを喰らえ!」
王城にある工房から拝借した鍛冶用の巨大ハンマーでセミの横っ腹を叩きつける。ジャイアントセミーの硬い殻にヒビが入る。
「もういっちょ!」
ヒビ割れた部分をもう一度叩くと大きく陥没し、ジャイアントセミーは体液を撒き散らしながら絶命した。
「うおおおお! すげえええええ!」
俺の事かと思い、後方を振り返るとアダマンタイトゴーレムがジャイアントセミーを蹴散らしていた。自信過剰だったかちょっと恥ずかしい。
「ちょっと効率悪いけど今の攻撃をとにかく繰り返していくしかないか……?」
俺はより効率的な倒し方を考えながらハンマーを振り続けた。




