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 俺が案内された部屋は一人部屋との事だったが80畳以上はある部屋だった。


 美しい模様の壺やまるでゴッホが描きそうな印象派の絵が飾られている。手先が器用な種族は絵も上手いな。


「鑑定」


【ドワーヴンリザンテラの群生地】

 ドワーヴンリザンテラを描いた油絵。名匠ガザドの代表作。


 そして、広い部屋を進むと壁にはドワーフ王国で鍛えられた武器防具が飾られている。


 ここに宿泊する客に対して、ドワーフ王国の特産品をアピールする場としても活用しているんだろうな。


「鑑定」


【ドワーヴンミスリルソード】

 ドワーフが作ったミスリルソード。名匠ガネグ作。


 なるほど、ミスリル製らしい。これほどの出来ならこの王都で武器屋を探して剣を購入するのも有りかもしれない。


 更に進むとなんだかよく見慣れた物が置いてある気がする。これはもしかしなくてもアレだろう。


「これは暖炉じゃなくて、鍛冶窯だよな?」


 念の為に鑑定してみるか。


「鑑定」


【高級鍛冶窯】

 ドワーフ王国産の鍛冶窯。特殊な製法により炉内を高温に維持することが出来る。


 うん、普通に鍛冶窯だった。いや、普通ではなく高級か。それはどちらでもいい。ドワーフ王国では最高級の客室に鍛冶窯を置いておくのが普通なのか。


「これは助かるなぁ。あ、でも、勝手に使っていいのだろうか?」


 もし許可が出たら街で素材だけ買ってきてここで武器防具を作ることが出来る。そんな事を考えながらなんとなくベッドに腰を下ろす。


「今日は色々ありすぎて疲れたな……」


 疲労感と気が抜けた事でそのままベッドで横になり眠ってしまった。



 ――コンコンというノックの音が鳴る。


「!! しまった、いつの間にか寝てたのか」


「コメット様、夕食の用意が出来ております。ご案内致しますので、準備をお願いします」


「ちょっと待っててください! すぐに行きます!」


 本当は風呂に入りたいところだけど、時間がない。俺は急いで新しい服に着替えて顔を洗って部屋を出た。


 使用人らしきドワーフに案内された先は豪華な料理が所狭しと並べられた食卓のある部屋だった。


 食卓には既に主要なメンバーが座っており、俺の席とおそらくドワーフ王と思われる席だけが空いていた。俺の席はドワーフ王の隣なのか。そして正面には宰相か。


「すみません、もしかして俺が最後でしたか?」


「コメット様は大分疲れが溜まっていたようですな。こんな状況ですが敵の本隊がここに到達するまではゆっくりと休んでください」


 ドワーフ騎士団長のヴァリングが気を使ってこちらを擁護してくれたようだ。


「もう入ってもいいのかなー? ぼくお腹ペコペコなんだけど!」


 俺が席に着くとドワーフ王ドワーザルガⅢ世が部屋に入ってきた。


「王! 呼ばれるまで入ってはいけません! 王は威厳が大事なんですよ!」


 メイドらしき人が大慌てで追っているがもう手遅れだろう。宰相は額に手を当てて首を振っている。


「王だってお腹は減るのだ! さあ、早く食べよう!」


「仕方がありませんな。皆様、申し訳ありませんでした。では、食前の儀式を始めます。土の精霊のご加護を!」


 宰相が酒が入ったグラスを掲げる。


「「土の精霊のご加護を!」」


 他のドワーフ達も同様にグラスを掲げたので、俺達も真似しておく。ちなみにドワーフ王のグラスには酒ではなくオレンジジュースのようなものが入っている。


 土の精霊は存在するのだろうか? 俺が会った事がある精霊は世界樹の精霊くらいしかいないけど、もし土の精霊が居るのなら会ってみたいところだ。


「さあ、ドワーフ王国の自慢の料理を好きなだけ召し上がってください!」


 宰相の言葉で皆が一斉に食べ始めたので俺も食べ始める。独特の味付けで割と美味しい。


 地下のキノコを使っているらしい。キノコを購入して料理10の腕前を見せてやろうかとも思ったが、今はそれどころじゃないと思い直した。


 そろそろ気になっている事を質問してみることにする。


「ゴーレムの素材に使用するアダマンタイトについてはどうなりました?」


 俺が質問をすると、ピタッと宰相の動きが止まった。ヴァリングが申し訳なさそうにこちらを見る。


「コメット様、申し訳ありません。まだ結論が出ていないのです。あの老害達はコメット様の凄さが分かっておらんのです」


 ヴァリングの言うあの老害達とは円卓会議の参加者の事だろうか。


「ヴァリング、不適切な発言は慎むべきでしょう。コメット様、円卓会議のメンバーには本当にゴーレムが作れるのか疑っている者もおるのです」


 宰相が説明してくれた内容からすると、やはり円卓会議の参加者が反対しているようだ。


 だが、疑うのも無理はない。もし俺が他人からゴーレムが作れるので国宝級の金属を寄越せと言われても、すぐに詐欺を疑うだろう。


「じゃあ、証拠を見せましょう。クリエイトゴーレム!」


 部屋の隅に飾られていた金属製の鎧にクリエイトゴーレムをかけるとそのままの形でサイズが小さくなったゴーレムが誕生した。


「そこのドワーフ王を守れ」


 ミニ鎧ゴーレムはコクリと頷くとドワーフ王の横で待機した。


「すごいよ! これぼくが貰ってもいいの!?」


「はい、王に献上致します」


「わーい! お礼にぼくのアダマンタイト全部あげる!」


「王! 全部は流石に……いえ、なんでもありません」


 宰相は何か言いかけたがこちらを見た後、がっくりと項垂れた。俺達が居る前で王の発言を取り消すような事を言えばどうなるか考えたのだろう。


「王様、ありがとうございます」


 俺は断ろうか迷ったが、アダマンタイトは正直欲しいので貰う事にした。


 その後は特に何事もなく夕食は進み、各自部屋に戻って眠りについた。

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