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 ドワーフ王国の王都は本当にすぐ近くだった。


「この門を超えれば王都である」


 ドワーフ王国騎士団団長ヴァリングが案内してくれた。


「本当にすぐで助かりましたね」


 マリアさんが安堵した様子で話しかけてくる。


「だが、王都からすぐ近くまで敵に攻め込まれている状況とも言えるわけだな」


 ロスキタスが鋭い眼光で王都の門を睨みつけている。門を見ると無数の傷がついている。


「そうですね。地上に帰る為にも、協力するしかないと思います」


 俺はドワーフに協力することに決めた。


 門を通るとそこには門が破られたときの準備が急ピッチで進められているようだった。


 横を通り過ぎる俺達に気づかない程に王都のドワーフ達は疲弊しているようだ。


「大変そうですね」


「ああ、ジャイアントセミーは朝昼晩いつだろうと襲ってくる。体力自慢の我らドワーフといえども不眠不休で戦い続けたせいで限界が近いのだ。認めたくはないがな……」


 ゴーレムを作って門を守らせれば多少は状況が良くなるかもしれないけど、今は魔力もゴーレムの素材も足りない。


「そうなんですね。今は魔力も素材もないので作れませんが、素材を譲っていただけるのなら防衛の戦力としてゴーレムを作りますよ」



「本当か!? 素材は何を用意すればいいのだ? すぐに用意させよう」


「分かりました。しかし、ジャイアントセミーに勝てるほどのゴーレムとなると大量の魔力とアダマンタイト級の鉱石が必要ですよ」


 ドワーフといえば鉱石を掘り加工する種族だと思うけど、実際はどうなんだろう? アダマンタイトも持っているのだろうか。


「アダマンタイト……たしかに希少な金属ではあるがこの状況を打開する事が出来るかもしれないのであれば……よし、私の責任でなんとか用意させる。ゴーレム作成をどうか頼む」


「分かりました。準備が出来たら教えて下さい」


 そんなこんなでゴーレムを作ることが決定し、ドワーフ騎士団長からゴーレムに関して質問されたりしながら進んでいくとあっという間にドワーフ城に着いた。


「こちらがドワーフ王国の王城です。ここで少しお待ちください。おい! グレッグ二等兵! 王子に連絡は済んでいるだろうな!?」


 ドワーフ騎士団長は王城の入口で待機していた兵士に近寄り確認を取っているようだ。


 俺がゴーレムを作れる事が分かってからドワーフ騎士団長は敬語になっていた。ものづくりが得意な種族だからだろうか?


 確認が終わったのかドワーフ騎士団長は俺達のところに戻ってきた。


「王子が待っております。行きましょう」


「はい」


 王城は地下にあるというのに光り輝いて見える。まぁ、街も全体的に明かりが多い。


「眩しいくらいに輝いてますね」


「王城のことでございますか? これはドワーフ王国自慢のドワーヴン輝石です。坑道で採れた輝石を職人が魔力を込めながら三日三晩磨いた物がドワーヴン輝石となります」


「なるほど、これだけの数を王城に配置するのはかなりの時間と労力がかかりそうですね」


「歴史あるドワーフ王国の象徴でもありますから、ジャイアントセミーに踏み荒らされる訳にはいかんのです!」


 第三者の俺でも、たしかにと思ってしまうほど王城は素晴らしい出来だった。もし可能ならドワーヴン輝石を購入してオアシス都市に持って帰って街灯として設置してみようかな。


 色々とドワーフ王国について話をしながら王城に入り進んでいくと謁見の間に着いた。


「コメット様一行をお連れしました!」


「入っていいよ! ……じゃなかった。入るがよい!」


 中から子供の声が聞こえてきた。


 扉を開けて中に入ると5、6歳くらいの子供のドワーフが豪奢な椅子にちょこんと座っている。


 俺は膝をついて下を向き王からの言葉を待つ。


「ぼく……余はドワーザルガⅢ世。えーっと、わがぐんへのかせい、かんしゃする」


 ドワーザルガⅢ世はなにやら手の中のカンニングペーパーらしきものを読んでいるようだ。


「いえ、当然の事をしただけですので感謝など恐れ多いことです」


「えーっと、この字読めないよ! あとはサイショーのおじちゃんお願い! じゃあね!」


 ドワーザルガⅢ世は王の玉座から飛び降りると走り去ってしまった。


「王! だからあれほど勉強するように言っておいたのに!」


 宰相は頭を抱えている。お子ちゃまドワーフは微笑ましくもあるが、今の国難においては笑ってもいられないだろうな。


「宰相殿、それで俺達はどうしたらいいんでしょうか?」


「ああ、コメット様。見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」


「いえ、気にしないでください。あれくらいの年齢の子であれば仕方がないことです」


「そう仰っていただけると助かります。それで今後の事ですが、しばらく王都に滞在していただき防衛に協力していただきたいのです」


 王都に滞在するのは問題ないと思う。だが、防衛しているだけでは何も解決していないようにも思う。


「こちらから打って出る事はしないのですか?」


「そうですな……本来であればそうしたいのですが前王でドワーフ最強の戦士でもあったドワーザルガⅡ世が勝てなかったのです。もう我々には打つ手がありません。それにかの魔物達の大群がこちらに向かっているという情報もあるのです」


「宰相殿、あの魔物の名称はジャイアントセミーというらしいぞ」


 ドワーフ王国騎士団団長ヴァリングがいらないアドバイスをしてくれる。あれは俺が適当に呼んでいる呼び名だから恥ずかしい。鑑定してみれば正式名称が分かるとは思うが、今更違ってましたなんて言いにくいので鑑定はしないぞ。


「そうなのですか! さすがはコメット様、博識ですな」


 もうやめて! 俺の精神的なHPはもう0よ!


「魔物の名称などよりも今はもっと大事な事を議論すべきです。この王都に大群が向かっているという情報は確かなんですか?」


「脱線して申し訳ありませんでした。はい、軍の斥候部隊が何度も確認しましたが間違いありません」


 よし! 話を逸らす事に成功したな。しかし、大群が押し寄せて来ているなら早くゴーレムを作らなければならないだろう。


「それなら早く例の防衛手段を用意しないといけませんよね? ヴァリングさん」


 俺がドワーフ王国騎士団長の方を見ると、ヴァリングが一つ頷く。


「宰相殿、実はコメット殿から重要な提案を受けてな。私はその提案を全面的に支援しようと思っているのだ」


「提案とはどのような?」


「防衛用のゴーレムを作ってくれるらしい」


「ゴーレム! ドワーフ王国の長い歴史でも数人しか作ることが出来なかったという伝説の!?」


 ドワーフ王国の宰相がめちゃくちゃ驚いている。そんなに驚くような事かと一瞬思ったが、ゴーレムを創り出す魔法を教えてくれたのはクリスタルドラゴンだった気がする。そう考えるとゴーレムを作れる俺って実は凄く貴重な存在? 帝国でホイホイとゴーレムを作ってしまったのは失敗だったかな?


 俺がそんな事を考えている間にも宰相と騎士団長の会話は続いている。


「だが、材料にアダマンタイトが必要なのだ。なんとかならないか?」


「アダマンタイトは非常に希少な鉱物です。あるとしたら国の宝物庫くらいでしょうな……しかし、宝物庫は代々受け継がれてきた国の宝。私の一存ではどうにも……」


「ドワーフ王国の危機なのだ。迷っている状況ではないのだぞ!」


「ふむ、では円卓会議で決定するというのはどうですかな?」


「良いだろう! すぐにでも緊急招集して決めるぞ!」


「……」


 俺は黙って2人のやり取りを聞いているしかなかった。部外者が口を挟む事でもないしね。


 しかし、俺の様子に気付いた2人は慌てだした。


「あ! 申し訳ありません! 部屋を用意させますのでコメット様はゆっくりとお休みください」


「おい! 最上級の客室を用意しろ! 今すぐだ!」


「え、あ、ありがとうございます」


 俺が怒っているとでも勘違いしたのだろうか。まぁ、休んで魔力も回復したいので何も言わないでおこう。


「こ、こちらへどうぞ」


 緊張した面持ちの使用人が案内してくれた。


 そして案内された部屋は最高級と言われるだけの豪華さと、ドワーフ王国らしさを兼ね備えていた。

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