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 ドリル型魔導列車の速度を最大にしてから一日が経過した。


「シャーリンちゃん、あとどれくらいでロディニア魔法国に着きそうですか?」


「ロディニア魔法国まであと半分といったところかのう」


「速度を最大にして正解でしたね」


「そうじゃな。しかし、速度が早すぎて前方の安全装置は切ってしまったんじゃ。まぁ、なんとかなるじゃろう! 今は一刻も早く魔法国に行って最上級魔石を手に入れて魔導アーマーを直さなければならないからのぅ」


 前方の安全装置? そんな話聞いたこともないですが? 俺はシャーリンちゃんに確認する事にした。


「シャーリンちゃん、安全装置とは何ですか? すごく嫌な予感がするのですが……」


「ん? 安全装置は前方に危険がないか確認する為の装置に決まっておるじゃろ。速度を最大にした場合、危険を察知しても避けられないんじゃから停止したんじゃ」


 なるほどね。


「そういう事はもっと早く言って下さいよ! 安全第一に決まってるじゃないですか! 今すぐ速度を落としてください!」


 俺が指示を出した瞬間。ガクンと衝撃のようなものを感じた後、浮遊感を感じる。


「うわああああああああああ!」


「きゃああああああああああ!」


 車内から悲鳴が聞こえてくる。


 俺を含めた皆や周囲の物が宙に浮いている。宇宙船の中でよく見るアレだ。


「な、何が起きたんじゃ?」


「無重力? ……まさか! 落ちてる!?」


 もし地中に空間があり、そこに落下した場合このように落下中の列車内は無重力となる。


「シャーリンちゃん! こんな時の為に何か機能があるんですよね!? 今すぐ発動してくださいっ!」


 俺がシャーリンちゃんに慌てて指示を出すと、シャーリンちゃんは笑っていた。


「ふっふっふ!」


「おお! その自信に満ちた笑みはまさに勝者の顔!」


「地中に空間があるなんて予想外じゃ! 機能など何もないわ!」


 それを聞いた者達は俺を含め開いた口が塞がらなかった。


 そんな事をしている内にどんどん落下していく。どんなに深い穴だとしてもいずれ底に着く。その時が最後である。


「こうなったら俺が出ます!」


 俺は列車のドアを蹴り飛ばし外に出る。空間は広く、(暗さのせいもあるが)あるはずの壁は見えない。


 下を見ると小さな明かりが見えることに気がついた。


「こんな地下に明かりが? 心当たりがあるとすれば……」


 心当たりがあるとすれば、マグマ、溶岩、というか一択しかないか。


「これは本格的に不味いな」


 俺が本気で風属性魔法を使えば一瞬くらいは列車を浮かせる事が出来るだろうけど、その後魔力が切れれば落ちるしかない。


 水属性魔法で大量の水を作れば溶岩は固まるかもしれないが、列車は固まった溶岩か水に激突して粉々になるかもしれない。高速で水に激突すると水はコンクリート並の硬さになる。


「うーん、これは困ったな。とりあえずあの明かりが何なのかをちゃんと確認しよう」


 俺は鷹の目が進化した千里眼スキルを発動し下の状況を観察する。


「な!?」


 千里眼スキルで拡大されて見えたのは炎のように明るい岩と多数の人影だった。


「こんな地下に人が居るのか!? でも、様子がおかしいな」


 よく見ると何か魔物のようなモノと大勢の人影は戦っているように見える。


「戦っているのか……? どちらにしてもマグマにダイブするよりはマシだ。着地に備えよう」


 魔力操作によって魔導列車の下に魔力を集中させる。着地の直前に風魔法で衝撃を吸収するつもりだ。


「もう少しで着地します! 衝撃に備えて下さい!」


 俺は列車内の人達に向けて叫ぶとカウントダウンを始める。


 どんどん地面が迫ってきているのが見える。


「……3、2、1、拡大強化ウィンド!」


 俺が範囲を拡大し威力を強化した風魔法で魔導列車の落下速度を軽減させる。


 しかし、思ったよりも落下速度が減速しない。このままでは地面に激突して列車に居る人々は傷を負うか最悪死んでしまうかもしれない。


 何か方法はないかと急速に思考を巡らせる。


 《スキル:思考加速1を取得しました》


 スキル獲得のアナウンスと同時に良い案が思い浮かんだ。


「ブラックホール!」


 列車の真上に闇魔法であるブラックホールを発動し、上から引っ張る。大技を連発したせいで魔力がごっそり減ってしまった。


 だが、まだ減速しきれていない。このまま地面に衝突すれば死人は出ないかもしれないが怪我人は多く出るだろう。


 もうすぐそこまで地面が迫っている。


「蟻地獄!」


 俺は最後に特大の蟻地獄を発生させた。目の前には巨大なすり鉢状の砂地が出来上がる。


 急斜面に着地した俺と列車は砂を巻き上げながら滑り落ちていき、底まで行き着く頃には十分に減速する事が出来た。


「なんとか無事に着地出来たか……はぁ〜さすがに疲れたぁ〜」


 俺は蟻地獄の底で大の字に倒れ込んだのだった。

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